番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ4〜
2ページ/6ページ



杜王町の殺人鬼である吉良吉影に捕まった次の日の朝。会社勤めの吉良吉影を見送ったあと、脱走計画を立てることに。

居間へ行くと、幽霊のオヤジさんがニュースを見ていた。幽霊がいることに慣れたので、幽霊の存在を気にすることなく腰掛けて、テーブルに御猫様のメモ帳を出した。

何かいい案ないかなぁってニュースを見てると、幽霊のオヤジさんが「恋の駆け引きするんか?」と話し掛けてきた。


『誰に?』

「吉影に決まっておろう」

『何で?』

「何でって……夢中にさせて落とすんじゃあないのか?」

『何で?』

「うーん、ちょっとお借りするよ」


幽霊のオヤジさんは御猫様の万年筆を使ってノートに何かを書き始めた。どーでもいいのでニュースを見てると、「出来た」と言ってノートを見せてきた。そこにはこう書いてあった。

【御猫様の恋の駆け引き大作戦】
恋の駆け引きで吉影を夢中にさせる。

吉影夢中になる。

信頼を勝ち取る。

束縛が緩む。

自由。


『な、なんだと……!?』


あまりにも完璧な大作戦に目を見開いてしまった。なんて素晴らしすぎる案だ。ただの幽霊のオヤジさんだと思ってたのに、これほどの策士だったとは思いもしなかったぜ。よし、考えるのメンドーだし、これを採用することにしよう!


「わしも協力するぞ」

『ホント!?手伝ってくれるの!?』

「もちろんじゃ!(あとは吉影に報告せんとな。このネタを上手いこと使うじゃろ。二人の恋のサポートはバッチリ!お父さんに任せなさい!)」


ってことで、幽霊のオヤジさんの思惑に気づくことなく、吉良吉影を相手に恋の駆け引き大作戦を実行することにしました。

もちろん駆け引きのネタは、100年以上前から続いてる【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】だ。

このネタを実戦するのはディオ様以来。あとはイメトレ(シリーズ2)と、会話のネタ(シリーズ3)で終わった。そう考えると100年近くブランクがあるし、少し不安だが、でも大丈夫!

ただえさえ恋愛マスターなのに、策士を味方につけてしまったんだもの。向かうところ敵ナシ。恋愛マスターから恋愛の神様に昇格したに違いないぜ。


「どんな作戦で吉影を落とすんじゃ?」

『はい、まずは、【ステップ1、接する機会を増やす】です!』


昔を参考にしようと御猫様のメモ帳を捲っていく。ディオ様で実戦した時の教訓にはこう書いてあった。

【ステップ1、接する機会を増やす】
→夫婦〉恋人〉友達〉知り合い〉他人
→会うと仲良し度も上がる、的な?なんかそんなの。


『うーん(´ε`;)』


何かよく分かんなかったから、イメトレした時の教訓を探してみた。イメトレの内容の一部にはこう書いてあった。

【ステップ1、接する機会を増やす】ですね。これは毎日一緒に過ごしてれば勝手にクリアするので飛ばしましょう。


『んじゃ、飛ばそう♪ヽ(´▽`)/』


自動的に【ステップ1、接する機会を増やす】クリア。昔の私は、今はまだ他人のような関係でも、毎日を楽しく一緒に過ごせば夫婦のような関係になる。ってことを伝えたかったんだと思う。

承太郎さん以外の男性と夫婦のような関係になりたくないけど、脱走のためだ、恋の駆け引きを頑張るぞ(O゚皿゚O)!ってことで、次のステップの教訓を振り返ろう。

☆シリーズ1☆
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす】
→コツは眼球運動
→目の疲れもほぐれて恋も進展!一石二鳥!うえーい。

☆シリーズ2☆
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線をそらす】が眼球運動であることは確からしいが、まさか斜め上&斜め下戦法があるだなんて思ってもみなかった。

ほうほう、眼球運動に斜め上&斜め下戦法をドッキングさせればいいワケか。はは、恋の駆け引きってやつは今も昔も簡単すぎて参っちまうぜ。

おっといけねえ、作戦が無事終わるまで気を抜いたらダメだった。遠足は家に帰るまでが遠足、という言葉があるように、作戦は無事終わるまで作戦なのだ。よく意味が分からんがそーいうことなのだ。


『というわけで、今回の作戦は、眼球運動+斜め上&斜め下戦法です!』

「ほう、可愛い作戦じゃのう。すぐに吉影が落ちてしまうわい」

『ホント!?メロメロになっちゃう!?』

「なっちゃうなっちゃう」

『「いえーい(*゚∀゚人゚∀゚*)♪」』


それから、吉影さんが帰ってくるまで、ほんの少しだけ仲良くなった幽霊のオヤジさんと二人で遊んだ。外に出られないので部屋の中でバトミントンしたり、キャッチボールしたり。羽根やボールが壁に当たって食い込んだり、貫通したり、襖が破けたりちゃったりしたけど、自分の家じゃ出来ないことが出来てとても楽しかった!でも、壊れたモノが直るわけもなく。

家の惨状に幽霊のオヤジさんが顔を真っ青にして「吉影のゴキゲンをとらんと爆破される!」と嘆き始めた。嘆くくらいなら一緒に遊ばなければいいのに。

そんなこんなで恋の駆け引きでゴキゲンを直そう作戦を企ててると、「ただいま」と声が聞こえてきた。待ちに待った吉良吉影のご帰宅である。

時は満ちた!恋の駆け引き&ゴキゲン取りは任せろ!特にゴキゲン取りは得意分野だぜ!なんせどこぞのロリ系ネコ耳っ子マニアのヤンデレストーカー変態エロオヤジもゴキゲンナナメになりやすいからね!慣れてるの、そーいうの。


「作戦内容は?」

『バッチリ!』

「『恋の駆け引き大作戦、始動ゥッ!』」


ってことで、玄関までダッシュ。靴を脱いでる吉良吉影に抱きついた。不本意だが仕方ない。自由を手に入れる為なのだ。だから許してね、承太郎さん。浮気にカウントしないでね。


『おかえりなさい!』

「……」

『吉良吉影?』

「……」


御猫様がせっかく抱きついて出迎えてやってんのに、肝心の吉良吉影は無反応。ボケーとした表情で見てくるから、持ち得るすべての演技力を総動員させて、吉良吉影に微笑んだ。


『おかえりなさい』

「……ああ……」


完璧過ぎてブラボーな御猫様の演技力にやられた吉良吉影は、赤く染まった顔を手で隠すように覆った。ハンッ、チョロすぎだぜ、吉良吉影!ってドヤりたいのをグッと我慢して、完璧でブラボー過ぎる演技&眼球運動+斜め上&斜め下戦法を続けた。

先に言っておこう。我、勝者ナリィィ!


『ずっと待ってたの』
↑視線を斜め下へ。

「……そ、そうなのかい?」

『うん、一人じゃ寂しい……っていうか、……吉良吉影が居なくて……寂しかった……』
↑視線を右へ。

「……さ、寂しかっ、ボクが居なくて寂しかった!?寂しかった!?」

『……だって、……その、……寂しくなっちゃ……ダメ?』
↑視線を左へ。

「い、いい、いや!全然!その、……朝と態度が違うから驚いてるというか、……でも嬉しいよ。ボクの帰りを待っていてくれてありがとう」

『もう待ってあげない!今日限定なの!』
↑視線を斜め下へ。

「今日限定!?明日はもう出迎えてくれないのかい!?」


さっきから吃りまくりで指さして笑ってやりたいが、トドメの1発ってことで、上目遣い&照れ笑いを送った。


『なーんちゃって!えへへ(*´∀`)♪』
↑視線を上へ。

「……ああああ!!」


御猫様の本気の駆け引きにやられてしまったらしく、ガバッと抱きしめてきた吉良吉影。それは嫌なので『イーーヤーー!!』と絶叫して突き飛ばしてしまった。


「……ああああ……」


吉良吉影は地に伏せた。床に這いつくばって「でも、それでも、わたしは!」と、意味の分からないことを叫びながらバンバンと床を叩いている。それを見てニヤッと口元を歪ませてしまった。

突き飛ばされたにも関わらず悶えてる、つまり吉良吉影は御猫様に何をされても絶対に怒らないってことを示している、と思われる。眼球運動+斜め上&斜め下戦法の完全なる勝利だ。

これぞ恋愛の神様である御猫様の本気。我の本気の駆け引きで地に伏せない男はこの世に居ないだろう(承太郎さん&スタプラ様を除く)。


『さぁ立ち上がって、マイダーリン。一緒に居間を片付けましょう』


地に伏せた吉良吉影にそう言いながら手を差し伸べる。照れながらも手を重ねてきたので、またニッコリと微笑んでやった。より一層顔が赤くなってた。

もう大丈夫、完璧落とせた。吉良吉影のハートを鷲掴みに出来た。これで何が起きても吉良吉影は御猫様に対して裏切らないし怒らないだろう。この家の天下、獲ったどーー!!


「ああああ!!居間が!この壁から居間が見える!よく見たら……家中の壁が穴だらけじゃあないか!何でこんなことに!?一体何があったんだい!?」

『……ごめんなさい、あなたが居ないから……寂しくて……つい……』

「わたしの忍耐力が試されてる気がしないでもないが……、キミが楽しかったのなら何よりだと思うことにするよ」

『うん、とっても楽しかった!セックスした時みたいにスッキリ爽快!』

「……………セックス……だと?セッ、セッ、セックスだと!!?」


やれやれ、吉良吉影を手のひらで転がすなんぞ朝めし前だぜ┐(´∀`)┌



☆今回の教訓☆
【ステップ1、接する機会を増やす】
→今はまだ他人のような関係でも、毎日を楽しく一緒に過ごせば夫婦のような関係になる。
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす】
→眼球運動+斜め上&斜め下戦法は最強過ぎてもはや敵ナシ。我、勝者ナリィィ!!



▼▼▼▼▼


「ほう、ほーうほう、なるほど」

「次がステップ3とステップ4か。ステップ10まで長くないっスか?温厚が売りの俺だけど耐えれるっスかね〜もうブチギレ寸前なんスけど」

「まてまて早まるなジョースケ君、俺らだって鬼じゃないのだ。慈悲深い心でこいつの言い分を聞いてやろうじゃあねーか。なぁ、マイハニー」

『……ヽ(;゚;Д;゚;; )……』


今回のオラドラまで、あと8ステップ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ