番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ5〜
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ブチャラティ様に誘拐されたあと、イタリアのアジトへ。御猫様お世話係&護衛チーム(ブチャラティ様、ナランチャ君、アバッキオさん)とジョナサンと、逃亡という名の旅行中だ。

まぁ【御猫様の奇妙な誘拐事件】はさておき、今日はミスタお兄ちゃんが遠路はるばるイギリスのとあるホテルまで遊びに来てくれた。


「例のアイツがイギリスに向かってるみてーだぜ」

「よし、みんな聞いてくれ!次の目的地はフランスだ!アバッキオ、飛行機の手配を頼む。いつでも飛べるように各々荷物の準備をしておくように!」


次の旅行の準備ってことで、お土産でも整理しようと荷物を漁ってると、1冊のメモ帳が出てきた。昔懐かしい【これで貴女も報われる!片想いの男を落とす10の方法!】が書かれた御猫様のメモ帳だ。

元々はジョナサンにしようって思っていた恋の駆け引き。実験としてディオ様相手にしちゃったけど、なんやかんやで駆け引きが受け継がれていき、最後は吉良吉影で締め括られた。

あの時の教訓が未だにあるから二度としたくないけど、ジョナサンと駆け引きをして、今よりもメロメロにさせちゃうのもアリだ。

よし!今度ことジョナサンで恋の駆け引きをするぞ!ってことで【御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ5〜】が始まった。

まずは【ステップ1、接する機会を増やす】はクリアしてるから、【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす】からだ。

今までは会話のネタが〜とか何とか言ってたけど、今回は大丈夫。ジョナサンとの話はネタに困ることがない。基本ジョナサンが一人でベラベラ喋ってるのだ。私はそれに合わせて眼球運動をすれば問題ナシ!メロメロの夢中にさせちゃうぜ!


『ジョナサン、お話しよう!』

「うん、もちろん。さてさて、今日は誰とラッキースケベがあったんだい?すぐに下ネタ発展するから見張るのも大変だよ。昨日はブチャラティ君とお風呂でバッタリしたんだろ?どうだった?どうせ僕以外の雄を見て興奮したんだろうけど。本当にキミはイヤラシイ子だ。ってかさっきから何してるの?めっちゃ眼球動いてるけど……あ、疲れ目!?最近ゲームばかりしてるから疲れるんだよ。でもそんなことだろうと思って、ほら!目薬あるよ。さぁ、眼球運動はおしまい。目薬で治療しようね!」

『この分からず屋!ジョナサンなんて大っ嫌い!!』

「何で!?」


眼球運動が失敗した。悔し涙を流しながらブチャラティ様のいる書斎へダッシュ。扉を乱暴に開けるとミスタお兄ちゃんが腕を広げてきたのでそれを避け、ブチャラティ様が座ってる椅子をグルリと回転させて腰に抱きついた。

おかげでブチャラティ様のブチャラティなところに近づけた。それはとてもラッキースケベだ。はぁはぁ、ブチャラティ様のジッパーを下げれば、はぁはぁ。


「どうした?」

『ジョナサンがひどいこと言ったの!』

「ジョナサンが?」

『実はカクカクシカジカ』


恋の駆け引きをしていたこと、恋の駆け引きの方法、それをジョナサンでやってみたけどマジもんの眼球運動と勘違いされて目薬をされたことを説明した。


「ぎゃーははは!!恋の駆け引きが眼球運動ってバカだ!このネコ超が付くほどのバカだ!」


説明を聞いていたミスタお兄ちゃんが大爆笑。『ふざけんじゃあねえ!こっちは真剣なんだよ!』と、キッと睨んでも、「プークスクス」と眼球運動しながら笑ってやがる!バカにしやがって!


『うわーーん、ブチャラティ様!ロリコンミスタお兄ちゃんがバカにするーー!』

「いやいや、ミスタの言う通りだ。眼球運動はナシだろ。何がどうなって1秒見つめて目をそらすが眼球運動になるんだ」


ブチャラティ様は呆れたように言って、お仕事用であろう資料に目を落とした。モヤっとしたので資料を奪い取ってキッと睨んだ。


『仕事と御猫様、どっちが大切なの!?』


承太郎さんにも言ったことないセリフをぶつけると、ブチャラティ様は「はぁ」とため息を吐いてワシャワシャと頭を撫で回してきた。


「どっちも大切に決まってるだろ。でも今は仕事が優先。もう少しで終わるからミスタと遊んでろ」

『ぬぅ』

「終わったら遊んでやるから、な?」

『ほんと!?んじゃ、待ってる!』

「よしよし、イイコだ」


ブチャラティ様はおでこにチュッとキスをしてきた。これ以上お仕事の邪魔して遊ぶ時間が減るのもなんだし、リビングへ行こうと立ち上がろうとしたら、「いいや!眼球運動は間違ってないね!」と叫びながらナランチャ君が登場。「ああこれ終わらないパターン」とブチャラティ様が眉間を押さえた。


「はあ?間違ってんだろ。何をどうしたら【一秒だけ見つめて視線を逸らす】が眼球運動になんだよ。それで恋が芽生える方がおかしいぜ」

「そもそもだよ、ミスタオニイチャン」

「テメーがお兄ちゃん呼び使うんじゃあねえ!気持ち悪り!ほら見ろ!鳥肌立ったじゃねーかよォオオ!!」


ミスタお兄ちゃんの絶叫が部屋に響いた。ブチャラティ様が疲れた顔で遠い目をしてたので、立ち上がってヨシヨシしたらギュッと抱きしめられた。本当にお疲れのようだ。


「ネコに眼球運動されて可愛くないって思う方がおかしいと思うんだよね!」

「なんだと?」

「よく考えてみて。ネコが1秒おきに目をそらしてるワケでしょ?どう想像しても可愛いとしか言いようがないもん。特に上目遣いとか。ほら、ミスタも想像してみて」

「……確かに、悪くねーな」

「ほらね?ってわけで眼球運動は正解!ジョナサンが鈍感なだけ!」

「「それは一理あるな」」


ミスタお兄ちゃんの声に合わせて別の声が聞こえた。アバッキオさんの登場だ。「どうして仕事の邪魔をするんだ」とブチャラティ様の小さな嘆きが聞こえた。この嘆きは私にしか聞こえない嘆きだ。裏チームのリーダー頑張れよの意味を込めてギュッと抱きしめ返した。


「そもそもこのネコに何の間違いがあるってんだ。このネコが導きだした答えが全人類の答えだろうが」

「だよね、そうだよね!さすがアバッキオ!分かってるぅ!」

「全人類はいい過ぎだけどよぉ、まぁでも眼球運動しようが、こいつが可愛くないわけねーよなぁ」

「問題はジョナサンだぜ。あの野郎、一緒にいるってだけでネコの彼氏気取りだ。ただの幽体のくせしてよぉ」

「幽体っていうか、ストーカーだよね。犯罪だよ、あれ。見逃していいの?」

「いやお前ら単にジョナサンに妬いてるだけじゃねーか。余計なことすんの止めとけよ。たかが幽体されど幽体、生身の人間が勝てる相手じゃねーよ」

「「どうにかして成仏させなければ」」

「何でそうなるんだよ!ジョナサンはイイヤツだぜ!この前は小さい頃の御猫様の話を聞かせてくれた。んで、ファンタジーであの頃のネコを見せてくれたんだけどよ、ヤベーの、可愛いの、マジで。ダニーにケーキ食われて泣いてるところなんてもう勃起もんよ」

「「その話、詳しく」」


勝手に極秘情報流してんじゃねえ!って怒りたいところだけど、ブチャラティ様が耳元で「ステップ2のアドバイスだ」と言ってきたのでこっちに集中。

『そんなもんなの?』って言いたくなるほど簡単なアドバイスで、申し訳ないけどブチャラティ様を疑ってしまった。


「早く行ってきてやれ。今ごろショック受けて成仏しかかってるぞ」

『……本当にうまくいくの?』

「俺を信じろ」

『そこまで言うなら……行ってくる』


半信半疑だけどやってみて損はない。輪になって「あの頃の御猫様は〜」と話してるネコ好きトリオを横切って自室へ。扉を開けると、今にも消えそうなほど薄くなったジョナサンが絶望した面持ちで天井を見上げてた。


「ああ、父さん。とうとう御猫様に嫌われてしまったよ。……あはは、そんなわけないじゃないか。……うるさいな!父さんなんかに僕の気持ちが分かるわけないだろ!」


一人でブツブツ言ってるけど、誰かと交信しているように見えなくもない。会話から察するにジョージだ。あんたも成仏してないの?何なの。ジョースター家って成仏出来ない系なの?呪われてんの?

いやそれよりも!今はブチャラティ様に教えてもらった【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす〜改〜】に集中しよう!


『ジョナサン!』


いつもみたいにジョナサンに抱きついたけど、バッ!と引き離された。


「僕のことが嫌いならもう放っておいてくれ!僕はこのまま成仏するんだ!キミとはおさらばなんだ!ストーカーから解放されてよかったね!僕なんか消えた方がキミのためなんだ!」


若干うざいことになったジョナサンに笑顔で返して、もう一度優しく抱きしめた。嫌いの一言でここまでなるなんて、そんだけ想ってくれてるってことだ。多分。ストーカーになってまで私を想ってくれてる。多分。


『ごめんね、言い過ぎたね。嫌いなんてウソだよ。ごめんね』

「…………本当かい?」

『うん!あのね!』


ブチャラティ様に教えてもらった【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす〜改〜】を実行しようと、顔をあげてジョナサンを見た。緑色の綺麗な瞳とバチッと目があった。

何か今さらなのに急に恥ずかしくなってきてスゥッと目をそらしたけど、恥ずかしさは消えない。むしろ心臓までバクバクしてきたじゃあないか!でも実行しなきゃだから、ギュッと目を瞑って自分の想いを改めて伝えた。


『ジョナサンのこと大好き!』


けっこう大きい声で言ってしまって、思わず手で口を押さえたけど、その手を掴んできたジョナサンが一言。


「僕も大好きだよ」


そう言ってキスをしてきた。


☆今回の教訓☆
【ステップ1、接する機会を増やす】
→変更点特になし
【ステップ2、一秒だけ見つめて視線を逸らす】
→自分の想いに正直になる。
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