番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ5〜
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チュッとキスをしたあと、ジョナサンは私を抱えてベッドへ。お昼寝でもするの?って聞こうとする前に、もう一度キスをされた。

今度も触れ合うだけのキスなんだけど何だかヤラシー感じ。これはマズイので、ジョナサンの肩を掴んで押し返してみた。

気持ちを読んでくれたらしく、キスするのをやめてくれた。でも、顔を離したジョナサンが何だかとても官能的で、その表情に目が釘付けになった。


「……限界、なんだけど」


限界という言葉にハッと我に返ったけど遅かった。ジョナサンの顔がまた近くにあって、今度は緩んでた口に舌を入れてきたのだ。


『んっ!?んん!!(やめろ!おい、マジでやめろって!調子に乗んなよゴルァ!!テメーなにセクハラしやがるだアアン!?)』


口を塞がれてるから言葉は出ないのでテレパシーでNO!を伝えてみたけど、ジョナサンの舌は止まらない。んじゃ次は1発殴る!と右腕を振り上げてみたけど、パシッと掴まれてベッドに押し付けられた。

これは参った。別にジョナサンとキスするのは嫌いじゃないし、いつもの軽いキスなら大丈夫なんだけど、ヤラシーと感じたら話は別。ヤラシーのは絶対に無理。

だから、キスに夢中になってるジョナサンにバレないように、左手をポケットに突っ込んでとある物を出した。

ピンチ用にと渡されたネコ型の防犯ブザーだ。これはネコ大好きスーパーニャンスキーであるナランチャ君とアバッキオさんがプレゼントしてくれたのだ。

ネコ型の防犯ブザーのスイッチを押すと、耳を押さえたくなる程のけたたましい音が部屋に響いた。でも大魔神様に音爆弾は通じず。音が鳴り響いてるのにも関わらずキスに夢中だ。

ある意味すげぇな!大魔神様は発情期かよ!って心の中でツッコミをいれると、今度はバンッ!という音と人の声が聞こえた。


「そこまでだ!御猫様から離れろ!」

「幽体でもやっていいこととやっちゃいけねーことぐらい分かるだろ!」

「ほらな、こいつは調子に乗ってるって言っただろ」


ナランチャ君とミスタお兄ちゃんとアバッキオさんの登場だ。さすがにこの状況でキスを続けるのは難しいらしく、やっとジョナサンが離れてくれた。

でも耳元で、「チッ、……邪魔だな」とジョナサンの一人言が聞こえた。でも一人言なので聞かなかったことにして、ジョナサンをキッと睨んだ。


『ジョナサンのうそつき!やめてって言ったのに何でやめてくれないの!?ジョナサンなんて大ッ嫌い!!』

「本日2回目!!?」


ネコ大好きニャンスキー3人衆を横切って部屋から出ていく。そしてブチャラティ様のいる書斎へ。

バンッ!と扉を開けて、先程と同じく椅子に座ってるブチャラティ様の腰に抱きついて泣きついた。


『助けてブチャラティ様!!』

「……どいつもこいつもどうして仕事をさせてくれないんだ……」


ブチャラティ様も泣きついてきた。でも今は仕事よりも犯罪を犯したジョナサンが優先だ。

グスグス泣きながら、駆け引きは上手くいったけどジョナサンが発情してヤバかったと先程の事件を説明。すると、「は?」とすっとんきょんな声を発した。


「ジョナサンとお前は愛人関係みたいなものだろ?」

『うん』

「てっきり俺は身体の関係もあるもんかと思ってたんだが」

『あるわけないじゃん。昔、イケナイ関係になる時に約束したの。ジョナサンとはキスまでって』

「……まさかジョナサンは100年以上それを忠実に守ってたり……?」

『それなのに約束破ったんだ!ジョナサンはうそつきなんだ!信じてたのに!』

「…………はぁぁ〜〜〜……………」


ブチャラティ様は、何かのイヤミ?って言いたくなるほど深くて長〜いため息をはいた。そして私を感情の無い目で見てきたではないか!何だその目は!


「お前それはダメだろ。約束を100年以上守ってきたんだ。たかが1回の、しかも少し激しいキスをしてきたってだけで、その仕打ちはどうかと思うぞ」

『でも!やめてって言ってもやめてくれなかったもん!』

「じゃあ、そうだな、あー……仕事の邪魔だから俺から離れてくれそして近寄るな抱きつくな」


突然前触れもなしにひどいことを言ったブチャラティ様。あまりにもひどい言葉に自然と涙がたまっていく。

でも、離れてやるもんかとブチャラティ様の腰にムギューと抱きついて首を横に振った。いっぱいいっぱい振った。


『何でそんなこと言うの!?嫌いになったの!?やだ!ブチャラティ様から離れるとか無理だもん!まだまだ引っ付き足りないんだもん!』

「うわーやめてくれーはなれてくれー」

『嫌だ!絶対に離れないの!ブチャラティ様は御猫様専用抱きまくらなの!』

「やめてって言ったのに何でやめてくれないんだ!お前なんか大嫌いだ!」


ブチャラティ様のとどめの言葉が私の心に突き刺さった。たかが1回、やめてっていう命令を聞かなかったばかりに嫌われてしまった。いつもお利口にしてたのに、たかが1回の過ちで私はブチャラティ様に嫌われてしまったのだ。

もう生きていけない、夜も眠れない、今日から私は何に抱きついて眠ればいいのだ!安眠すら得られないじゃあないか!


『うぅ、……うー……グスッ……』


ブチャラティ様から離れて、絶え間なく出てくる涙を服の袖でゴシゴシ拭いた。すると、ブチャラティ様の手がポンッと頭に乗った。


「お前がジョナサンにやったこともこれと同じことだと思うぞ」

『…………』

「俺も男だからな、理性を抑えるのがいかに難しいか知ってる。むしろ今まで過ちを犯してないことに驚いた。しかもお前相手に。俺には無理だ」

『…………』

「ジョナサンはお前をとても大切にしているし、ちゃんと約束を守ってる。もっと誠実に向き合って大事にしてやれ」


ブチャラティ様のおかげで、さすがに今回は悪いことをしたと思い知らされた。好きな人に突き放されたら……ジョナサンも私と同じ気持ちだったなんて。


『…………どうしよう、ひどいこと言っちゃった……』


約束をずっと守ってくれてたのに、たかが1回のことであんなにもひどいこと。でも違うんだ、そうじゃなくて!嫌いとか、そんなの嘘なのに!本物のうそつきは私の方だったんだ。


「反省したのなら次は駆け引きネタで仲直りといくか」

『……そんなこと出来るの?』

「次のステップは【ステップ3、会話をするときは見つめながら「うんうん」と相づちをうつ】【ステップ4、彼を真似して同じ言動をしてみる】か。ついでに他の駆け引きの方法もレクチャーしてやるからここに座れ」

『うん!』


ブチャラティ様の足の上に座ってレクチャー開始。でもステップ1と同様、どれもこれも簡単で疑うレベルだった。


「ほら、行ってこい。今度は屍三人衆の上で闇を抱えてるぞ」

『うーん、うん!』


せっかくレクチャーしてもらったってことで部屋へ戻った。扉を開けると仄かに薄暗い部屋の中、三人の屍が床に転がっている。そして肝心の大魔神様は闇を纏ってベッドの上でシクシク泣いていた。

一体ここで何が起きたのか想像するだけでも恐ろしいので、三人の屍を部屋の外に出して、大魔神様がいるベッドに勇気を振り絞ってダイブ。


「知らない」


いつもなら受け止めてくれるのにスウッと避けられた。


『ジョナサン、お話しよう!』


構うことなくジョナサンに詰め寄ってみたけど、コロコロとベッドの隅まで転がってしまった。それを追いかけて私もコロコロ転がって、ジョナサンの背中にピッタリ引っ付いた。


『ごめんね、ジョナサンの気持ち考えてなかったね』

「僕の気持ち?」

『うん、好きな人に大嫌いって言われた時の気持ち。大嫌いなんて嘘ついて本当にごめんなさい』

「……」

『でも、ジョナサンがどういう気持ちでキスをしたのか分からないの。だから教えてほしい。……今さらだけど話し合おうって……ダメかな?』


ジョナサンは何も言わなかった。でも、寝返りを打って向き合ってきたから、話し合う気はあるみたいだ。その事にホッとして笑ったらムスッとした顔で鼻を摘まんできた。


「あーあーそうですよ、どうせ僕はキミの言いなりですよ」

『そうなの?』

「そうだよ。キミが大好きで大好きで大好き過ぎるからキミに嫌われたくなくて必死なんだ。キスだけっていう約束も全てキミに嫌われたくないから。でも、たまにね、嫌われた方が楽なんじゃないかって思う時がある」

『うーん、どうして?』

「キミがあいつと別れてくれないから」


それは初めて聞いたジョナサンの気持ちだった。


「キミを独占したい、キミの全てを手に入れたい、誰にも触らせたくない、……僕だけのキミに……」


それ以上の言葉はなかった。ただ、ジョナサンはそっと頬っぺたを優しく撫でて、それだけ。いつもと同じで、撫でるだけ。

私は何と言えばいいんだろう。答えなんてとっくの昔に決まってるけど、それを口にしたらダメってことを知っている。

だから、答えになってないかもしれないけど、ジョナサンの手に自分の手を重ねて、私の正直な気持ちを伝えることにした。


『あのね、キスだけっていうのはね、嫌とかじゃなくてね、あれなの』

「……ん?何?」

『あのままキスしてると……本当にもうどうでもよくなって……、最後までしちゃいそうで……だって!気持ちいいの!ふわふわするっていうか……その……もっとしたいって思って』


余計なことまでボロッと言った口をギュッと閉じてもすでに遅し。初めての私の本音を聞いたジョナサンは驚いた様子でこちらを伺ってきた。

何かフォローしなきゃいけないけど、恥ずかしくて何も思い浮かばない。だって100年以上一緒にいるのに、一度も言ったことないんだもん。


「…………」

『……うー……』


1秒1秒進むにつれてジワジワと顔が熱くなっていく。思い切ってプイッと顔をそらしたら「はは」とジョナサンに笑われた。


『笑っちゃダメなの!』


笑われたことにムッとしてジョナサンの胸板をポコポコ叩いたけど、ジョナサンはずっと笑いっぱなし。しかも終いにはギュッと抱きしめてきた。


「そうか、そうかそうか。キミはキミなりに僕のことを想ってくれてたんだね」

『そうだよ!それが何!?幽霊のくせに何か文句でもあんの!?』

「あははは!ないよ、ナイナイ、あるわけない!可愛い!すっごく可愛いね!もう本当に、可愛すぎて言葉にならないや!」

『うるせえ!』


照れ隠しの暴言、ってことはもう見抜かれてるらしい。今度はハートマークを飛ばす勢いで、オデコやら瞼、頬っぺたにキスをしてきた。

このハートマークを飛ばす勢いってのは不思議なものだで、これをされると相手の幸せが伝わってきて、私の心も幸せいっぱいになって、その幸せいっぱいの気持ちを伝えたくなってしまう。まるで一種の感染病だ。

だからそれに感染した私は、幸せで緩みまくった口元をそのままに、ジョナサンのオデコにチュッとキスをした。


『えへへ、お返し!』

「じゃあ僕もお返し!」


そう言って、チュッと唇にキスをしてきたジョナサン。『お返し!』って言って私もジョナサンの唇にキス。二人でお返しのキスをして、久しぶりに想いを伝えあった。


☆今回の教訓☆
【ステップ3、会話をするときは見つめながら「うんうん」と相づちをうつ】
→相手の気持ちに真剣に耳を傾ける。

【ステップ4、彼を真似して同じ言動をしてみる】
→キスをされたら、キスされた場所にお返しのキスを。この時笑顔だったら尚良し。
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