番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜シリーズ6〜
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てっきり今から1発やるもんだと思ってたのに、キスしたあと、ゴロンと隣に寝転んで後ろから抱きついてきました。どうやら尋問が先みたいです。それ以外にあり得ません。


「……その……、……どうしてここに?」


どう言ってファンタジーを誤魔化そうかと考えてると、耳を疑う言葉が飛んできました。


「いくら待っても現れなかったお前が今になって現れた。その理由が知りたい」


このエロオヤジ、いつもの尋問のやり方を変えてきました。いつもならネチネチ言うのに、今回はサッパリというか優しく促してきます。

まぁ、でも、エロエロ作戦が塞がれた今、ここで誤魔化してもバレそう。もう洗いざらい話して謝ろう。そっちの方が後々楽だ。って感じなのだ。だから真実を伝えよう!……あれ?本末転倒?


『ジョナサンが、パラレルワールドとか嘘までついて承太郎さんの仕事場まで飛ばしたの』

「……おい……、何を言ってやがる」

『あーハイハイ分かってます。ファンタジー禁止なのに約束破っちゃいました。すみません。でもこうやって会えたんだから水に流そうよ〜』

「……だから、お前はさっきから何を言ってるんだ」


どうやら1から説明しろってことみたいです。メンドーだけど、ファンタジーを起こした理由を説明しました。


『まっ、結果的にパラレルワールドなんて無かったんだけどね!』

「……パラレルワールド……」


無言無表情を張り付けて心底驚いてる承太郎さんに私も驚きました。てっきり、

「ツマンネーことやってんなぁ。まっ、理由がどうであれ俺に会えたのはラッキーだったな。違う世界の俺を探すほど俺に飢えてたんだろ?いいぜ、もう要らねえって思う一歩手前まで食わしてやる、この浮気者。そもそもな、相手が俺でも許さねーよ」

ってな具合でいつものごとくグイグイネチネチくると思ってたのに。驚いて終わりとかアリエナイ。


『……どしたの?風邪でも引いた?お疲れモード?』

「いや、本当に驚いてるだけだ。……そうか、パラレルワールドか。……会話が噛み合ってないが、成立してるのはそこにあったのか」


承太郎さんは素っ気ない態度で寝返りを打ちました。ジジョナサンとファンタジーで遊んだから怒ってるって感じでもありません。本当に素っ気ないのです。

ワザとなのか、天然なのか、どちらにしろ珍しい対応が面白くて、イタズラ心に火がついちゃいました。なので承太郎さんの背中に抱きついて、アレをお誘いすることに。


『せっかくだからイチャイチャニャンキャンしようよ〜、2年振りなんだよ〜、まだまだ承太郎さんの温もり不足にゃ〜』


アレのお誘い+ネコ語のダブルコンボで釣れなかったエロオヤジはいません。ニコニコ笑顔で承太郎さんに引っ付いてると、寝返りを打ってコチラに向き合ってくれました。

何故か無表情を張り付けて、でもとても悲しそうに笑ってます。その理由が知りたくて頬っぺたをヨシヨシと撫でてると、理由を教えてくれました。


「……お前の知ってる俺と、お前の目の前に居る俺は、同じだけど違う。……パラレルワールド、成功してるぜ」

『……ん?』


パラレルワールドファンタジーのノリに合わせた演技……でもなさそうな承太郎さんをジィッと見つめて、やっとビビビッときました。

私の知ってる承太郎さんと、この世界の承太郎さん、どっちも承太郎さんだけど、コッチとアッチで雰囲気が微妙に違う……ってことは、つまり、そーいうことです。パラレってるのです。

よりにもよって今ごろ!違う世界の承太郎さんとキスしたあとに気づくなんて!浮気だ、これは立派な浮気だ!でもアッチとコッチまったく同じなんだもの!間違いに気づける方がスゴいよ!つまりこれはジョナサンのファンタジー原因でこうなったワケで、全部ジョナサンのせいだ。ってことは、私は無実なり。


『……これ、浮気じゃないよね?ノーカンだよね?だって承太郎さんは承太郎さんだもの。人類史上最強の空条承太郎はパラレル共通なんだよ』

「っぽいことを言って誤魔化してんじゃあねーよ」

『私がノーカンって決めたからノーカンなの!例え承太郎さんでも取り消せないからね!』

「まぁ、俺が止めなきゃあのままセックスしてた淫乱女に違いねぇがな」

『……何か言い方にトゲがある』

「それよりもアッチとコッチ、世界の違いについて検証しようぜ。やっぱり航時機みてーな乗り物で来たのか?」

『ううん、ジョナサンは幽霊だよ。あとそれ違う世界観の乗り物だから。出来れば触れたくないネタの乗り物だから』


違いについて検証するってことで、私の居た世界の話をしました。アッチの承太郎さんと結婚してると教えた時、本当に悲しそうにしてたのが印象的でした。

コッチの世界の御猫様の存在はジョセフ以降現れてないみたいです。今日やっと現れたみたいなことを言ってました。今回こうやって御猫様が現れた、これがこの世界での【御猫様の運命】ってヤツかも。

あと、コッチの承太郎さんも別の女性と結婚して一人娘がいるらしいです。これには心底驚きました。


『あの承太郎さんが御猫様以外の人と真面目に恋愛して結婚!?仕事に集中するとその他がダメダメになるのに!?そっか、何だかちょっぴり複雑だけど、理解してくれる奥さんに出会えて本当に良かったね!』

「離婚した」

『……何か……すみません』

「仕事に集中してその他がダメダメになる俺に耐えれなかったんだろうな」

『本当に申し訳ありません』


コッチの承太郎さんを知ってるワケじゃないので何とも言えませんが、アッチのエロオヤジもそーいう所があるので妙に納得してしまいました。

コッチの承太郎さんも放浪癖でもあるんでしょう。アッチのエロオヤジも只今記録更新中。寂しいけど電話はあるので心配無用。元気で何より。でも、コッチの承太郎さんは……いえ、これ以上このネタを掘り下げるのはやめましょう。

それよりも!今の大問題といえばジョナサンです。パラレルワールドファンタジーを起こした帳本人のくせに、いくら呼んでも現れません。

別のワールドの承太郎さんの存在を確認しちゃったので、さっさと家に帰りたいのですが、ジョナサンが居ないと帰れません。

でも、せっかくのパラレルワールドファンタジーだから、承太郎さんと親睦を深めるのもイイのかも。どの世界の承太郎でも出会える運命に変わりなかったほど、運命とやらで結ばれてるのだ。


「ジョナサンってヤツは迎えに来ないのか?」

『どうせエネルギー切れってヤツだよ。よくある展開だよね。数日もすれば現れるんじゃん?』

「その間、どうするつもりだ」

『……え?』


その質問に驚いてしまいました。どうするも何も『承太郎さんが世話してくれるんじゃないの?』って感じですもの。それ以外の流れなんてあり得ないんだけど。


「それは別に構わないが、お前は俺に何を支払うつもりだ?タダで世話になろうなんて思ってないよな?」

『こんな幼気な幼女から金銭を搾り取ろうってつもり!?見損なったわよ、承太郎さん!』

「金すら無いだろ。自分の身体以外、何も持ってないぜ。つーか、それがモノを頼む態度かよ、ふざけた女だぜ」


承太郎さんの言う通り、着替える最中にコッチに来たから裸一貫。それ以外のモノは持ち合わせてません。何も持ってないのに何かを要求されても困ります。だって身一つしか持ってないのですもの。

うーん、と考えてみましたが、これといって良い案があるわけもなく。世話をしてもらって当たり前と思ってた甘えたな自分に少し反省してると、承太郎さんがこんな提案をしてきました。


「お前を買ってやる。報酬として衣食住は保証するが、俺の命令は絶対。……まっ、簡単にいうとお前の仕事は俺の奴隷ってところかな」


アッチとコッチをあまり比べたくありませんが、アッチとコッチどっちもエロオヤジで間違いありません。いや、初対面の御猫様を奴隷として買おうとするコッチの方がエロエロオヤジだと思いました。

それと、せっかくの良い案ですけどお断りです。アッチとコッチ、どっちもエロオヤジなら、要求してくるそれもまたエロオヤジさながらの命令と思うのです。エロオヤジを御主人様にするとろくなことにならないって知ってます。ですので、『御猫様は浮気しない主義なの』とテキトーにお断りを入れました。

すると、「わかった」と言って立ち上がった承太郎さんはバスローブを着て、ベッドで寝転んでた私を抱えました。そしてホテルの部屋の扉を開けて……って所で、今からしようとしてる事に気づいて、ガッチリとしがみつきました。


「おい、離せ。ここでグダグダしてる場合じゃねーだろ。お前は今から無償で世話してくれるヤツを裸一貫で探さなきゃあならないんだぜ」

『嫌だ!絶対に離さない!』

「離さないだと?おかしな話もあったもんだぜ。俺とお前は契約不成立。お前を世話する義理は無い。ほら、さっさと無償で世話してくれるヤツを探せ。そうそう、この辺りの治安は相当悪い。でも大丈夫だろ。何せお前は裸だ。それに釣られたその辺りの無職のオッサンが拾ってくれるんじゃあないか?その場合の身の安全の保証は出来ないが頑張ってクダサイネ」

『うわーん!ごめんなさい!奴隷でも何でもやるから全裸の状態で捨てないで!せめて洋服着せてから捨てて!』

「もう一度聞くぜ。契約に異論は?」

『奴隷として貴方に尽くします!』

「契約成立だ」


承太郎さんがバタンッと扉を閉めた。承太郎さんから飛び退いて、すぐにベッドの中へ潜り込みました。

奴隷を承諾させる為に全裸の状態で捨てようとするなんて!全裸状態で廊下に出るなんて!やることがエロオヤジよりもえげつない!


「手間取らせやがって。ほら、初めての仕事をくれてやる。茶を淹れろ」

『御猫様を捨てようとしたヤツに淹れてやる茶なんぞ無いの!酷いよ!こんな仕打ち初めてだよ!』

「仕事を放棄するつもりか。別にいいぜ。俺は報酬を払わない。今日の夜に腹が減ってるお前の目の前で美味そうな肉でも食ってやるか」

『何なの!承太郎さんの陰湿ドS加減もワールド共通なの!?うわーん、ショタな承太郎さんと出会いたかっただけなのにこんな仕打ちされるなんて!コッチもアッチもバツイチ子持ちってナニコレ!!こんな運命滅べばいいのに!!』

「……おいおい、傷を抉るようなことを言ってんじゃあねーよ。つーか…………そーいう話は止めようぜ……」


こうして、【御猫様の恋の駆け引き〜シリーズ6〜】の、物語の幕が開きました。
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