番外編/短編/過去拍手文/

□御猫様の恋の駆け引き事件簿〜特別編〜
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〜プロローグ〜

ハルが誘拐されたってことで、アイツを捕まえるための旅に出た。海外旅行なんてやったことない学生の俺。全てのことが初めての経験だった。理由はネコ探しでも、良い経験をしたと思う。

アイツの抜け毛を使い、クレDの能力で追尾させて、ようやく滞在中の宿を見つけたと思えば、何故かジョナサンとエロオヤジがバトル中。

なんで仕事中のテメェがいるんだ。昨日の夜、連絡した時、「仕事抜けれん」って言ってたじゃあねーか。もしや仕事って嘘?我先にゴールしてオイシイところ横取り?また俺で遊んだ?つーか、どんだけ俺の恋心を弄べば気が済むんだ、コイツら。ってか何でこんな性格ひん曲がったやつらがメインで動いてんの?何で主役はってんの?人間やめた大魔神と人間やめかけてる大魔王だから?何でアイツはこんなにも男らしくもないやつらに惚れてんの?人間やめた大魔神と人間やめかけてる大魔王だから?そうか、人間やめたor人間やめかけてたら土俵入り出来るんだな。そんなシステムなんだな。そうか、そうか。


「もう遠慮なんてしねぇ。絶対にクソみてぇな男になってやる」


新たなどす黒い決意を胸に俺は日本へ帰った。そのあとは簡単だった。あの手この手でエロオヤジを脅し、元々の報酬だったアイランドツアーを獲得。1週間限定でアイツと過ごせることになった。

1番の邪魔者であるジョナサンも、「何が起きようと今回だけは邪魔しないよ、絶対に」と約束してくれた。裏ボス級の邪魔者であるエロオヤジは、

「自分からトラウマ抉りにいくとは、さてはお前ドMだな。その根性だけは認めてやらんこともないが、……まぁ、どうにもならん恋心とやらを諦めるにはいい機会か」

「すっげえ余裕っスね〜。あんたの可愛い奥さん、今から俺にNTR!もっと危機感持った方がいいと思うっスけどねえ〜。ジョースケくんの恋の駆け引きってもはやプロ級だから即オチっスよ」

「ハハハハ何だその笑い話はハハハハ。あーあ、思わず棒読みで笑っちまった。ハハハハハプロ級で即オチとかハハハハ」

「そのバカにした笑いは何なんスか!?マジでヤりますよ!?恋の駆け引き&NTRコースですよ!?いいんスね!?」

「ハイハイ、ドウゾドウゾ。アイツとの恋の駆け引きガンバッテガンバッテ」


と、またも偉そうに、またも俺をバカにして、またも要らない応援の言葉を俺に投げつけた。それら全ては俺の闘争心に火をつけるだけなのに。

そんなことがあって、晴れてあの時のアイツと一緒に過ごせるようになったワケだが、俺はアイツに会って一日目で自分の選択を後悔した。

承太郎さんの言う通り、自分からトラウマ抉りにいったドMだったんだ。

俺は俺の恋心を甘くみていた。好きだと思う気持ちは嘘じゃないのに、全てが嘘っぱち。この恋に真実なんてありゃしねえ。

嘘つき同士の、嘘つき同士による、嘘つき同士のための、虚しい恋ゴコロ。あの時の変わりゃしない、嘘で固めた恋ゴコロがここにあった。


▼▼▼▼▼




何があって承太郎さんが許可したのか全く分からないけど、今日からジョースケ君がアイランドに遊びに来る。

ジョースケ君と御猫様を寛大な心で遊ばせるくらいなら、とりあえずお前帰ってこいよって思った。

前回の誘拐事件から3ヶ月経ったけど1回も帰ってきてないし。「悪い。時間が取れん」って言ったっきり。こっちから電話しても全く通じないし、メールの返事なんて、

「v( ̄Д ̄)v」
「ヽ(`Д´)ノプンプン」
「(´;ω;`)」
「(*゚∀゚人゚∀゚*)♪」

のうちのランダムでどれか、それだけ。顔文字じゃなくて文字を打ち込め!愛が伝わらない!って何度言っても顔文字で返ってくる。

「(´∀`*)ε` )」とか。

それはどちらかといえばジョナサンっぽいやつ。背後に居る感じがまさしくそれ。しかし、あの人が色々な顔文字を知ってることがホラーな気もしなくもない。きっと職場にいる若い女の子に手取り足取りご指導してもらってるんだ。

私だって120歳越えたババアだけどブチャラティ様と毎日ラブラブメールしてるんだぞ!浮気しちゃうぞコノヤロー!

ってメールを送ったら、

ジッパーマン殺す

って。ようやく愛が伝わる文字が送られてきたので、それからメールしていない。なので承太郎さんからもメールがない。

でもそれも今さらというか、あの人が仕事の虫っていう病気なのは昔からだし、難病だし、つける薬なんて何もないんだから、帰るって言ってくれるまで放置しよう。

メールの話とかどうでもよくて!

今日からジョースケくんがアイランドに来訪。久しぶりのお客さんだから楽しみっちゃ楽しみだ。

でもジョナサンは朝から応答ナシ。何度呼んでもシカト。いつもなら引っ付いて離れないのに。きっとジョースケ君が来るから気まずいんだと思う。色々やっちゃった仲だし。ジョースケ君が帰るまで出て来ないつもりだと思う。

だから、朝から一人寂しく適当にゲストルームの掃除を済ませて、財団のヘリ使って来るとか言ってたから、外に出て、ビーチチェアに寝転んで海を眺めながら待つことにした。


「……」

「……」


トリ吉くんとトリ子ちゃんが仲良く浜辺で散歩してた。邪魔するのもなんだし2匹の恋の行方を観察することに。


「お前はこの海の、いや、お前の存在をこんなちっぽけな海で表すなんて、どうかしてたぜ、俺ってやつはよぉ」


おう、そうだぜ、お前どうかしてるぜ。って言って邪魔したくなったけど、我、自重した。仲が良くてナニヨリ。

ちなみにトリ子ちゃんは、誘拐されてた時にイタリアで出会ったスズメだ。怪我をしていたところをトリ吉君が見つけて、色々と看病してた。同じ鳥でも種が違うからなかなか進展しなかったけど、結局カップル成立。トリ吉君とスズメちゃん、仲良くアイランドで生活している。


「うるさいわよ、軽口叩く暇があるなら夜ご飯とってきなさいよ!」

「照れるんじゃあねーよ、トリ子」

「て、照れてないわよ!」

「好きだって言ってるだけだぜ」

「そ、そんなの知ってるわ!」

「お前は?」

「……え!?」

「お前の気持ち」

「…………す、……き」

「聞こえねえ、さざ波の音にかき消されて、何一つお前の気持ちが伝わってこねーぜ」

「好きって言ってるじゃない!もう!……いじわるぅ……」


こんな茶番劇見せられるこっちの身にもなりなさいよ!とか、好きな女の子を頭のアホ毛に乗せて何してんの?とかマジで色々と言いたかったけど、我、自重した。

こんなくそみたいな浜辺に居たって良いことなんて何一つなさそうだから、移動しようと回れ右。私の存在に気づいたトリ君と目が合った。


「……あ、あー……」


羽で顔を隠すほど恥ずかしいなら人様の敷地内で女を口説くんじゃあねえ!って、承太郎さんが言いそうなお怒りの言葉が浮かんだけど、何か言うのも忍びなくて、ペコリとお辞儀をしてくそみたいな浜辺を去ろうとした。

ちょうどその時、遠くの方からヘリコプターの音が。何か救われたと思った。トリ吉君も同じ気持ちみたいで、「あいつか?」と質問しながら近づいてきた。


「承太郎様のご帰還なの!?きゃー、どうしよう!リボン変じゃない!?大丈夫!?似合ってる!?」


承太郎さん一筋のトリ子ちゃんが、頭に付けてるピンク色の水玉のリボンを気にしながら肩に乗ってきた。くそっ、生意気だけど可愛い女だぜ、トリ子め。


「フン、あんな野郎の何処がいいんだかサッパリ分からねーぜ」


あんな野郎と似たの貫禄も持つトリ吉君はブツブツ言いながらも、トリ子ちゃんとお揃いのピンク色の水玉の蝶ネクタイを羽で器用に整え始めた。


「ああ、承太郎様の肩の上で囀ずったら頭を撫でてくれるかしら……」


雌スズメも夢中にさせる承太郎さんのフェロモンってやっぱりすげえ。でもハーフだけどネコも夢中になる美味しさだもの。何だか納得。


『オシャレして出迎えようとしてくれてるのにごめんね。承太郎さんじゃなくて、承太郎さんのおじさんが遊びに来るの』

「「おっさん?」」

『承太郎さんのお母さんの弟にあたる人?』

「「ううん?」」

『スッゲー分かりやすくいうと、承太郎さんの親族で、個性のある髪型をしたヤンキーっぽい兄ちゃんが来るの』

「きゃー、雄よ雄!承太郎様の親族ならきっとイケメンに決まってるわ!」

「俺はあんな野郎に負けねえ!」


ギャーギャーと騒ぎだした2匹を連れてヘリポートまで移動。歩く速度が合わないから2匹は私の後ろをついてくる。その2匹を見てほんわか気分になった。

アホ毛にスズメを乗せたハシビロコウとか何かもう癒される。そしてピンク色のリボンつけたスズメにも癒される。ああ、アイランドは癒しのリゾート。まるで夢の国。


『今度ライオンをああああああ!!?』


ガゴッと何かを踏んだ。そして落ちた。そういえば三日前、ジョナサンがこんなことを言ってた気がする。


「ここに落し穴を作ったんだ」

『何で?』

「ごく自然な形で悪魔見習いたちを落とそうかなぁって」

『悪魔見習い?』

「アイツとアイツ」

『承太郎さんとジョースケ君?まっ、怒られない程度に頑張って』

「キミがハマってくれてもいいんだよ」

『やーん、もうジョナサンの愛という落し穴にハマってるの〜、これ以上ハマれないの〜、脱出不可能なの〜』

「うわ」

『引くんじゃないわよ!落し穴に突き落とすよ!』


そうだった、落し穴があったんだったってコンマ単位のスピードで会話を思い出しても時すでに遅し。身体は下へとぐんぐん落ちていく。


『どんだけ落ちるの!?誰か助けてぇぇええええ!!!』


悪魔見習いを落とす穴は、ジョナサンの執念や邪念を感じるほど、とても深いものでした。
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