番外編/短編/過去拍手文/
□暗殺者チームとの思い出
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愛しのミスタと入籍して半年。まだまだ安定しないパッショーネのせいで毎日バタバタしている。
そんな状況でも一緒に居れる時間を作ってくれるミスタは、本当に、最高に、素晴らしい旦那様だと思う。
今日も大好き過ぎる旦那様と夜な夜な1発ぶちかまして、大好き過ぎる旦那様の腕枕でデレデレ。するとミスタが今さらな話を振ってきた。
「そういや〜よぉ、お前って元暗殺者チームと仲良かったんだろ?」
『仲がいいっていうか、元ボスからの任務で知り合っただけだよ』
「知り合っただけの仲なのに、キスマーク付けられるとか怖くな〜い?」
『今さらなネタを思い出してヤキモチ妬くのヤバくな〜い?』
「ボスからの任務ってどんな〜?どんな程度の知り合いだったのか教えて〜?やましいことがないのなら全部正直に言えるよな〜?」
『あれこれって言うまで離してくれないパターンかなぁ〜?』
「わかってんなら言えよ」
『……えっとね〜、あれは確か……』
ボスから直々の任務が届いた。【暗殺者チームの監視&記録をしろ】というのだ。
一刻も早く出世して、ミスタの所属するブチャラティチームに配属されたい一心の私は、二つ返事で任務を了承。まぁそもそも拒否権すらないんだけど。
任務期間は1ヶ月、暗殺者チームに所属することになった。毎日暗殺者チームの動向をまとめた報告書をPCからメールで提出するだけ。何も難しくない任務だ。
そして任務を受けた次の日、暗殺者チームのアジトへ向かった。最初に出迎えてくれたのは、暗殺者チームのリーダー、リゾット・ネエロさんだった。本棚とテーブルとソファーしかない殺風景な部屋にポツンと座ってた。
『えっと、はじめまして……』
「お前のことは知ってる。ミスタという男をストーカーしてる女だろ」
期間限定とはいえ暗殺者チームに配属されるんだもの、調べられてもおかしくないんだけど、そうじゃないっていうか。いや、そうなんだけど、そうじゃないの。ストーカーじゃなくて、ミスタに夢中な普通の女の子なの。
訂正したい所ではあるけど、どうせ期間限定の仲間だ。『あはは、バレバレ〜』と愛想笑いしながら、リゾットさんの向かいのソファーに座った。
「……」
『……』
沈黙が痛いけど特にやることもない。手持無沙汰な状況をどうしたらいいの?何かやることないの?と考えてると、リゾットさんがテーブルの下から大きい段ボールを出してきた。グリコと書いてある。グリコは私も知っている。日本の有名なお菓子メーカーだ。でも何でグリコ?
『どうしたんですか、それ』
「オレの趣味だ」
リゾットさんは段ボールから小さな赤い箱を取り出した。グリコと書いてある服を着たオジサンが載っている箱だ。それと別に何かよく分からんイラストの入った箱も入ってた。なんだこれ、何で二個も箱があるの?と首を傾げてると、「キャラメルとおまけ」と中身を教えてくれた。
キャラメルの入った箱はグリコのオジサンのやつで、よく分からんイラストの箱がおまけの箱。何でキャラメルにおまけが付いてるの?しかも別箱で。日本のこーいうの意味分かんない。おまけとキャラメル、一緒に入れればいいじゃん。
『これの何にハマってるんですか?』
「おまけが凄いんだ」
リゾットさんはおまけの箱を開けて渡してきた。中身を取り出すと、プラスチック製のミニカーが出てきたではないか!しかも完成度が高い!
「しかも、動く」
『な、に?』
ミニカーをテーブルに置いて、少しバックさせたあと手を離すと前へ動いた。まさかこんなことが出来ようとは!
「これが日本の子供の菓子だ。しかも子供のお小遣いで買える値段だ。1ユーロもしないんじゃないか?」
『これで!?に、日本凄すぎるッ!』
「このおまけを集めるのが趣味で……」
まだ話の途中だと思うんだけど、リゾットさんがスゥと消えた。どういった原理のスタンド能力か分からんけど、それよりもグリコのおまけが凄すぎてリゾットさんとかどうでもいい。
おまけでこれだからキャラメルの味は微妙なんだろと疑った私は、キャラメルの入った箱も開けた。そこにも日本のこだわりが詰まってた。一つ一つ丁寧に包装してる。それだけでも素晴らしいのに、包み紙を開けるとハートの形の可愛いキャラメルが出てきた。もう、日本のそーいうところが憎い!好きすぎて憎い!
『ああん、しかもおいし〜!こっちのより断然うま〜〜い』
これハマるの分かる。共感できる。私もグリコ集めよう。でも輸入品だからめっちゃ高いんだろうな。やっぱりただの下っぱマフィアには過ぎた品物だ。もっともっと出世して、いつかミスタと結婚したら定期的に買ってもらおう。
一度食べると止まらないキャラメルをモゴモゴしてると、バンッ!と部屋の扉が開いた。私も調べたから知ってる。イルーゾォさんだ。
「クソッ!また勝手に!」
イルーゾォさんはテーブルに置いてある段ボールを睨み付けた。そして私を見つけるなり、「リゾットはどこに行った!?」と怒鳴り付けてきた。
『えっ、いや、……消えました』
「オレがここに来るのを察知して逃げやがったな!もうこれは没収だ!謝っても許さんからな!」
イルーゾォさんは鏡を取り出してグリコの箱をその中に入れた。それもスタンド能力だろうけど、やっぱり原理がイマイチ分からないので見て見ぬフリをした。
「ったく、……で、キミが今日からチームに入るストーカー女か」
『……まぁ、……ですね』
ストーカー女が定着してることがすごく気になるけども、そこもスルーした。
「貧乏暗殺者チームへようこそ」
『貧乏?』
「リーダーのグリコ収集癖のせいでうちは火の車だ。報酬が入れば勝手に注文、いくら怒っても止めやしない。ただえさえ少ない報酬の中でやりくりしてるっつーのに」
リーダーのグリコ収集癖よりもイルーゾォさんが家計簿担当なことの方が驚きだ。っていうか会計もリーダーの仕事かと思ってたんだけど違うんだね。……あ、リーダーに任せると全てグリコに消えるから仕事を取り上げたのかも。人殺して報酬がグリコって……やだ絶対にやる気なくなるやつだ。
「ホルマジオと何とか節約する方法を探してるんだが、やっぱりどう考えてもグリコを買うのを止めてもらうのが一番てっとり早い。そもそもだな、自分の給料で買えばいいのに、「このおまけはインテリアだ」とかわけの分からん理由をこじつけて経費で落とそうとするんだぜ。そうすると給料として分配する金が少なくなり、みんなから給料上げろと文句を言われ……このグリコのせいで!」
いいえ、グリコは悪くありません。無計画な収集をしているリーダーの責任です。喉まで出てきた言葉を飲み込んで、『あははは、どこも大変ですね』と愛想笑いで誤魔化したら、「まったくもう!」とブツブツ言いながら家計簿をテーブルに広げた。
テーブルの端にはいつの間にか一つのキャラメルがあった。きっとその辺に消えたリゾットさんが置いたものだと思う。キャラメル置いてゴキゲンとる前に買うの止めたれよ。
しかし、暗殺者チームってもっと殺伐としてるって思ってたんだけど、意外とアットホームなんだね。まだ二人にしか会ってないけど、この空気なら大丈夫そうだ。
『今日からよろしくお願いします』
「ん、よろしく」
さて次はどんな人が来るんだろう。仲良くなれたらいいなって思った心は、簡単にくだけ散った。
「新入り来たか……あああああ!!」
次に来たのはギアッチョさん。挨拶の途中だけど、テーブルにあるグリコのキャラメルを見つけるなり、大絶叫した。
「またか!またかよぉおお!!これがあるっつーことはよぉ、あいつまたグリコを買ったってことだろおおお!!何でだよ、何でグリコを買っちまうんだよ!オレは明治チョコレート派だって言ったじゃあねーか!クソッ!クソクソクソクソッ!クソッタレ!無駄遣いしてんじゃあねーぜええええ!!!オレにも無駄遣いさせろよ、チクショー!」
「落ち着けよ、お前。外まで声が聞こえてたぜ。みっともねーな」
知らない声が響いた。そちらに目をやれば、プロシュートさんとペッシって人が袋を持って立っていた。目が合ったので軽くお辞儀をすると、「新入りか。みっともねーところを見せちまったな」と。
「いつもこうなんだ。そのうち慣れるだろうが、あまりにもやかましい時はオレに言え。どうにかしてやっからよぉ」
プロシュートさんは何とも兄貴っぽいことを言いながら隣に座ってきた。そして手に持ってた袋から中身を取り出した。
リゾットさんがあれだったから、今度はビックリマンチョコ辺りかと思ったけど、出てきた物は全然違う物。プラスチックのケースやピンセット、カラースプレーや緑の苔や木などの雑貨だ。俗にいうジオラマを作るときに使う物ばかり。
『何ですかこれ、ジオラマでも作るんですか?』
「ん?ああ、リゾットが玩具にハマってんの知ってっか?」
『はい、本人に聞きました』
「こーいう玩具がインテリアだなんだってアホみたいなことを言ってたのは?」
『さっきイルーゾォさんに聞きました』
「ってことでジオラマにしちまえばインテリアっぽくなんだろ。せっかく好きで集めてんだ、有効活用しねーとな」
そう言ってニヤリと笑うプロシュートさんにドクンと胸が高鳴った。収集癖に文句を言うわけでも、あーだこーだ言うわけでもなく、否定するわけでもなく!それを受け止めた上で美しく有効活用しようとする、その心意気に、私は感服した!
『あ、あに、兄貴ーー!!大好きです、プロシュート兄貴ッ!』
「オレも可愛い女は好きだぜ」
『是非、妹分にして下さい!』
「カノジョでいいだろ」
『ああん、兄貴サイコー!!』
【暗殺者チーム、今日の報告書】
リゾット・ネイロ
→グリコ収集癖
イルーゾォ
→会計担当
ギアッチョ
→大絶叫担当
プロシュート兄貴
→サイコーな兄貴
兄貴がサイコー過ぎて大好きなミスタの存在が霞んじゃいそうなので、2日に1回ブチャラティチームに会いに行きたいです。【ブチャラティチームの監視&記録】的なそういう任務はないですか?あったらさっさと寄越して下さい。
ってな感じで報告書を送ったんだけど、その数日後にボスから連絡がきた。
「もういい、任務は終了だ。ドッピオと組んでろ。お前に任せたオレがバカだった。……このオレを、オレ自身にバカだと言わせるお前は一体何なのだ……」
結局、【暗殺者チームの監視&記録】の任務は数日で終わった。暗殺者チームとは連絡先を交換してたから、たまに食事に行ったり、グリコもらったりしていた。
以上が、私と暗殺者チームの話である。
『ね?そんなに仲良しじゃないでしょ?でもミスタのヤキモチうれしい〜』
ミスタにムギュゥと抱きつくと、ミスタは何故かブルブル震えだした。
『どうしたの?』
「どっからツッコミするべきかよぉ、考えてんだけどよぉ、例えば、あのときリーダーさんのポッケにグリコ入ってたと思うと、何かこう思うところがあっけど……笑っていいの?」
『笑う要素が1つもないけど』
「ん〜〜まぁ〜〜そうねぇ、とりあえずよぉ、……もう1発いっとく〜〜?」
『1発いっとく要素もないけど!?』
「オレ以外の男に好きだって言ったバツだぜ〜〜、片想い中でも許せねーのよ、オレは、そーゆーのをよぉ」
今さらな話で今さら墓穴掘ってしまって逃げ場はないけども、今さらなヤキモチが嬉しい私は、やっぱりいつまで経ってもミスタに甘いみたいです。