裏書庫

□繋がる気持ち(続編)
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「おいで」


そう言うと、嬉しそうな顔をして、走って飛びついてきた名無し。

その勢いで一瞬傾きそうになってしまったが、グッと踏みとどまり名無しの体を抱きとめた。

その勢いの良さに思わずクスクスと笑ってしまう。呼んだらすぐに走ってきたその姿がまるで犬みたいで、尻尾をパタパタと振っているのが見えるようだ。


「ん〜もうっ…名無しったら、可愛いんだからっ♡」


堪らずにぎゅう〜とその体を抱き締める。
すると胸の中でぐぇっ…と苦しげな声が聞こえて、力を入れすぎてしまったことに気付き慌ててパッと手を離した。

ゲホッゲホッと胸を抑えて咳をする名無し。


「も〜柳宿…力、入れすぎ……」


「ごめんごめん、つい、ね」


眉を寄せている名無しの頭をぐりぐりと撫で回す。内心まだ犬扱いだ。
どうにも可愛くて仕方ないのは、一線を超えてしまったから余計なんだろうか。

撫で回し過ぎて名無しの髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまったが、それでも俯いて無言で立ちすくんでいる名無し。

照れているのか、単に頭を撫でられるのが好きなのか、固まっているけれどその顔は満更でもない様子だ。


「今夜も一緒に、寝ましょうか?」


顔を覗き込んでそう尋ねてみると、少し照れたように、うん、と頷く名無し。


「あ、ほら、今日は………な、な……なん…」


「?」


「なん……でも、ないわ」


今日は何にもしないから、だなんて、下手にカッコつけて言ったりしたら後々後悔しそうだ。
そんなつもりで誘ったわけじゃないけれど。


(自信ないわね)


おほん、と軽く咳払いをして誤魔化した。

きょとんとしている名無しの腰に手を回し、部屋の中へと入る。
パタンと閉まった扉に、昨夜と同様、後ろ手でコッソリと鍵をかけた。一応…と、心の中で言い訳をしながら。

そりゃまあ、したくないと言えば、嘘になるわけで。


(でも…昨日の今日は、やめておいた方がいいのかしら?)


男の自分にはその辺はよく分からないが、もし体が辛いのなら無理はさせたくない。
が、でも、一緒に寝るということは、OKという事なんだろうか?
無理はさせたくない。させたくない…けど…


「…」


(でも案外名無しもソノ気なんじゃないかしら?恋人同士一緒に寝るって、普通そうなるわけだし?それだったら手を出さないのは逆に男として失礼と言うか…それにほら、据え膳食わぬは何とやらって言うし…)


寝台に座り自問自答していると、名無しが隣に座り、不思議そうに覗き込んできた。


「柳宿?どしたの、黙り込んじゃって」


「あ、ああ…何でもないのよ」


ハタと気付く。
なんだかんだと言い訳しながら、ひたすらヤル理由を探している自分に。
こりゃダメだわ、と頬に手を当て苦笑する。
これはもう間違いなく手を出してしまうだろう。


「…ねぇ名無し?体どう?辛くない?」


先に聞いておくけど、とは言わず尋ねてみる。


「あ、うん、別に…さっきまでちょっぴりジンジンしてたけどね」


へへ、と照れたように笑う名無し。


「そう。なら…大丈夫かしら?」


「ん?うん、大丈夫だよ?」


おそらく意味を理解していない名無しの腰にもう一度手を回し、ぐぐっと顔を近づけてみる。


「!」


頬にチュッとキスをすると、少し固まった様子の名無し。
そのまま首筋に唇を下げていくと、その思惑に気付いたからかそれとも急過ぎたからか、名無しが戸惑った声を出す。


「あ、あの…」


「……別にね、そんなつもりじゃなかったのよ?
って言っても、これじゃ説得力ないでしょうけど」


部屋に連れ込んで早々に手を出そうとしているくせに、説得力も何もあったもんじゃない。


「抱いても、いいかしら?」


至近距離で見つめながらそう囁けば、みるみる赤くなっていく名無しの顔。


「……したいわ…」


素直に欲望を口にする。
ますます赤くなる名無しの唇に、返事を急かすようにトン、と軽くキスをした。


「あ……えっと……」


「ダメ?」


「…………ダメ、じゃ……ない………」


真っ赤な顔でボソボソと言う名無し。
その可愛さからか、はたまた許可が出たからか、その両方か、抑え切れずについニヤニヤとしてしまった。


「や、やだもう、柳宿…顔、ニヤけすぎっ」


「うふふっ♪だってほら、あたし、オトコノコだもの。仕方ないでしょ?」


ん〜♡とニヤケた顔のまま唇を合わせ、チュッチュッと何度か繰り返す。

次第にスイッチが入り、長い口づけへと、変わっていった。






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