NARUT〇

□断絶 二
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ベッドの上、青い顔をしてうずくまる飛段の口許にガーグルベースをあてると、ごぼ、と重い水音をたてて消化液が吐き戻される。続けて何度か戻し、そのたびに波打つ背中をさする。飛段は自傷をもろともしないが、その体には確実にツケが回っていた。今のように失血と睡眠不足から激しく吐くことさえあった。暫くすると落ち着いてきたが、脱水を起こしかけていたため看護師を呼んで点滴を入れる。手首に細いホースが伸びる間も、飛段は微動だにしなかった。隔離されたこの部屋も、皺のよったシーツも、彼自身も、何もかもが白い。このまま死んでしまうのではないだろうか、そう思うほど、軽薄そうに笑う普段の彼の姿とはあまりにもかけ離れていた。
かさついた飛段の唇が、俺の名前を形作る。
俺は耳を寄せて、蚊の鳴くようなその掠れた声を拾った。
ーーさむい。
くるまっている布団の上から毛布をかけ、冷たい腕をさすっても、指の先はかたかたと震えている。銀の睫毛が弱々しく揺れる。
ああ、と自嘲の声が漏れる。きっと俺にはその凍てつくような寒さをどうにかしてやることは出来ない。お前はどこかで死を望んでいるのかもしれない。けれど俺は、お前を救ってやりたいのだ。だからどうか、どうかその鍵を外してくれまいか。



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