NARUT〇

□曇りない強者/甘口
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曇りない強者

革張りのソファに腰を下ろしたところで、商談の相手から、どうぞ、とグラスが手渡される。硝子の三角錐に紅玉色の洋酒が注がれている。飛段は素っ気ない表情でそれに口を付ける、酒は好きだがその善し悪しには拘らないからだ。一方角都は表情を変えてしまわないよう取り繕いながら、なるたけ急いで喉奥へと流し込む。取引相手は勿論だが隣に座る相棒には決して、洋酒が飲めないことなど知られてはならないので。







甘口(モブ女と角都)

山の麓にぽつんと建ったその呑屋は、女の主人が一人で切り盛りしており決して繁盛しているとは言えなかったが、角都はその静かな雰囲気が気に入っており、暁に入る前から密かに贔屓していた。この日も単独任務を終え中途半端に余った時間に、ふらりと立ち寄ったのである。
暖簾を上げると奥に座っていた女主人が角都を見やり、久しぶりね、と素朴な笑みを浮かべ、四合瓶からとくとくと酒を注ぐ。客の入りがどうとか稼ぎがきどうとか、たわいない話題を振ったあと、何気なく今日はお連れさんは一緒じゃないのね、と言った時、一言二言返すだけだった角都がぴくりと反応する。
あいつは頭も悪いし動きもとろい、その上悪趣味な祈りに何時間も費やされるこちらの身にもなってみろ。俺が無駄な事がどれだけ嫌いか知っているだろう。
随分棘のある言い方だったが、その口調には毒気が全く無くて、思わず女主人は、ふふ、と笑った。
だったら上司さんに言うなりして、相方さんを取っ替えてもらえばいいじゃない。
アレを放っておいたら何をしでかすか分からんのだ。ああまったく、俺に世話係をやらせるとは。
花枝の漬かった酒をあおりながら珍しく饒舌に、角都にとっては愚痴を、女主人にとっては甘ったるい惚気話をとうとうと語った。女主人は結髪を揺らして、そうねえと相槌を打ちながら緩んだ口元を眺める。きっと、自覚してないんでしょうね。



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