NARUT〇

□虫の知らせ
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地べたに蝉の死骸が転がっている。赤銅色の薄羽を生やしてジワジワと鳴くような奴じゃない、体の未熟な柔い幼虫である。今しがた土の中から這い出てきたところを運悪く踏み潰されたのだろう。飛段は羽虫の群がるそれを何の気なしに見ていたが、ふと、五年も待ったのにな、と考え、途端に喉の奥がざらつくような不安を覚えた。思わず履物の裏ですり潰すと、ぺちゃんこだった死骸はばらばらになった。嫌な汗が首筋を伝う。どうしてこんなに落ち着かないのだろうか。



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