夜が帷を降ろすまで
□2度目まして
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点滅し続けるビルの障害灯を見ながら、ヨルマの気持ちは晴れなかった。
あのオークションの日から、今日が久しぶりな仕事の日なのだけど。
あの日に味わった挫折感のような虚無感のような感情は、今日のヨルマの感情にじわり滲んで、何度蓋をしてみても作用して、溜め息を吐かせに来るとヨルマは思った。
"ヨルマ"のコードネームを持つ ため息の主の仕事は、政府直属の調査機関のもとで不正が行われていると芳しくない噂の企業から、その証拠を秘密裏に盗ってくること。
盗ってくるものは、パソコン上のデータだったり、証拠写真だったり、薬品に溶かした現物だったりする。
今日は、マフィアと癒着のあるらしい企業がホテルの一室で密会をするらしいと情報があり、その会話を録画して持ち帰るのがヨルマの仕事だった。