DREAM

□03.Repeatedly
1ページ/1ページ






03.MGS:TPP VENOM (BIG BOOS)

「そんな所で、何をしているんだい?」

ヒューイは柔らかい声色でそう声を掛けなが
ら、自分に背を向けて黄昏ている彼女の華奢
な身体に目を向けた。

医療班のチーム長をしている彼女は滅多に医
療プラットフォームから出てこないのだと言
うのに、態々中央甲板まで散歩に来ているだ
なんてよっぽど何か気を紛らわせなくてはや
っていられない様な事があったのだろう。

と、ヒューイは頭の中で彼女についての考察
を考えながらゆっくりと歩みを進めた。

「ボスの事を考えていたの」

ぽつりと呟かれた言葉と同時に向けられた、
柔らかい様でいて何処か寂しそうな彼女の表
情にヒューイの胸が熱くなった事が分かった。

手摺をぎゅっと握る彼女は、幾分身体を前の
めりにさせて心地の良い海風に綺麗な黒髪を
靡かせて見せた。

ヒューイはそんな彼女の隣で歩みを止めると
やはり何故か目が離せなくなってしまう彼女
の寂しそうな表情をちらりと盗み見た。

「スネークが戦地へ赴く事を良く思っていな
  い様に見えるけど...」

「良いも悪いも、私はボスが決めた事を否定
  出来る様な人間ではないから...むしろ、一
  人のメディックとしてボスを支えなくちゃ」

「でも、支えなくちゃいけないって言う気持
  ちだけじゃ無い事も確かだろう?」

「誰だって傷付く姿なんて見たくないもの」

傷付く姿、だなんて安易に纏められてしまっ
ているけれどそんな話を聞いていたヒューイ
でさえ、単純な言葉の裏に何が隠され意とさ
れているのかと言う事など分かっていた。

「スネークの事は君が一番分かっているじゃ
  ないか」

「更けたい時もあるの、私だって人間よ?」

「らしくないなぁ...」

何時もとは違う雰囲気を纏っている彼女に対
して、戸惑いを感じている事も確かだと言う
のにも関わらず。

ヒューイはそれ以上深い所に触れない様にと
何時もならば口に出してしまう余計な事も今
は半ば無理矢理に飲み込んだ。

「今を生きている人の方が少ないの、歩みを
  進めている様に見えて皆んな過去に縛られ
  て生きてるんだから...」

「僕も、なのかな?」

「自分の心に聞いてみて、きっと分かるから」

彼女の言葉に心当たりばかりが思い当たるヒ
ューイは、幾分苦しい様に感じ始めた胸をそ
っと片手で押さえて見せた。

「案外答えは簡単に出るもんだね」

そんなヒューイの仕草を横目に苦笑を洩らす
彼女は、何かを考える様に空を仰ぎ見ると掴
んでいた手摺から手を離した。

「ジョンが恋しくなるの、あの日に縛られて
  いるだなんてどうかしてるわ...なんてね?」

冗談めかしく言いながら、甲板を降りて行く
彼女の姿を見送っては余計な事まで考えてし
まう。

ヒューイは、彼女の口にした言葉の意味に何
となく気が付いてしまっているけれど、それ
以上言及など出来る筈も無かった。

遠くから聞こえる大きなローター音が、ボス
ことスネークが帰還した事を知らせる。

彼女はスネークを見て何を思い、何を感じて
いるのだろうかとヒューイは頬を撫でて消え
ていく生温い風に目を細める。

久しぶりに他人の口から聞いた"ジョン" と言
う名前に寂しさと虚しさを覚えながら、降り
立つスネークの姿にあの人を重ねて見せた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「スネーク、僕からお願いがあるんだけど...」

「何だ、お前からの願いだと?」

「一日だけでも医療班を休ませられないかな」

「どうして?」

「いや...最近、忙しいみたいだしね」

「桃か」

「ち、違うよ...そんなんじゃ無いって!」

「ヒューイの好意だと伝えておこう」

「スネーク、待ってよ!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]