DREAM

□10.Haunted with jealousy
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10.MGS:TPP KAZUHIRA

真夜中に、何処か遠くから聞こえる話し声
がやけに鮮明に聞こえて目を覚ます。

ちらりと確認した時計は、未だ日付を変え
て少し経った頃を示していた。

夜間交代で各プラットフォームに出ている
スタッフが居るとしても、此処まで話し声
が気になった事など無いのではないかとカ
ズヒラは眉間に皺を寄せながらベッドから
起き上がった。

ドアまでの距離は平気だろうと、肩で壁を
擦りバランスを保ちながら声の聞こえる方
へと歩みを向けた。

と、段々と近付く声との距離にカズヒラは
思わず歩みを止めた。

ドアに設置された小さな小窓から、医療班
である彼女とボスことスネークの姿が見え
たからだった。

会話の内容はイマイチ分からない、けれど
気に入らないと思うのは確かだろう。

カズヒラは幾分、二人の会話が途切れるタ
イミングをドアの向こう側で待っていた。

少しすると話が終わったのか、軽い挨拶を
交わして去って行くスネークの後ろ姿が目
に入った。

一人取り残されているのであろう彼女を回
収すべく、此処ぞとばかりに勢い良くドア
を開けて見せれば驚いた様にカズヒラの様
子を伺っている彼女の姿があった。

「来い」

力強く言われた言葉にドギマギしながらも
彼女はゆっくりとカズヒラの待つ部屋へと
向かう。

入り口に差し掛かると同時に腕を掴まれて
しまえば、そのままバランスを崩して二人
同時にベッドへと倒れ込んだ。

専ら、片腕だけでバランスなど取れる筈も
無いカズヒラは彼女に覆い被さられている
状態だった。

そんなカズヒラの身体に四つん這いになり
側から見れば、彼女から襲ったのだと誤解
されても可笑しくは無い状況下に置かれて
いたが、何せこの体勢ならば主導力は彼女
に有るも同然だ。

「なぁに...もしかして、聞いてたの?」

「聞いては無いさ、盗み聞きの趣味は無い」

「割には怒ってるみたいだけど」

意地悪に微笑む彼女にしてやられるばかり
のカズヒラは舌打ちを鳴らしながら、伸ば
した左手で彼女の頬に触れた。

「怒らせてる理由が分からないとでも?」

「ボスに嫉妬だなんて、貴方らしくないわ
  MSFでは私ばかり嫉妬してたのに...」

「おい...その話はしないって事で終わった
  んじゃなかったのか」

誤魔化す様に口にするカズヒラの言葉に苦
笑を洩らす彼女だったが、少しすると降参
したかの様にしてカズヒラの身体にその身
を預けて見せた。

胸元に頬を寄せる彼女の後頭部を優しく撫
でて見せながら、カズヒラは相変わらず深
い吐息を洩らす。

何せ彼女を見ていると自分が可笑しいので
はないかと思うくらいに必死なのだ。

彼女には悪いが、昔からボスことスネーク
に注意を受ける程に女癖は悪かった。

が、彼女に出逢ってから此処まで落ち着い
たのだから申し分など無い筈だとカズヒラ
は既に開き直ってしまっている。

「心配なの、ボスが」

ぽつりと呟いた彼女の表情は、カズヒラの
位置から確認は出来たりしなかったが何処
か、声色だけで心情が読み取れる様だった。

彼女の後頭部に置いていた手で長く整えら
れた綺麗な髪を手櫛してみせる。

「幾らお前が心配したって、ボスはあの頃
  のボスとは違うんだ」

「ボスとしてじゃなくて、エイハブってい
  う一人の男として心配してるのよ」

「フ...全く、妬けるよ」

カズヒラの言葉に嬉しそうな笑みを浮かべ
る彼女は、ゆっくりと身体をずらしてカズ
ヒラの隣で身を寄せた。

自分の身体に身を寄せる彼女の腰に腕を回
したカズヒラは、逃がさない様にとしっか
り掴んで離さない。

勿論、そんなカズヒラの動作の意味にすら
気付いてしまっている勘の良い彼女は浮か
べた笑みを未だ消してはいなかった。

「ヤキモチ焼きの貴方の為に、今晩は一緒
  に過ごしてあげるわ」

「そりゃあ、喜ばしいよ」

カズヒラの香りに包まれながら、ゆっくり
と目を伏せ眠りに意識を任せていく彼女を
見つめてはカズヒラも同じ様に口元を緩め
て見せる。

次の機会にスネークと顔を合わせた時、彼
女には気を付けた方が良いと悪い噂を流し
ておこう。

などと悪い事を考えながら、カズヒラは自
分の嫉妬深さに思わず吐息を吐き出しては
愛しい彼女に身を寄せ、もう一度眠りにつ
いた。



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「ボス、桃には気を付けるんだ」

「気を付けろとは唐突だな...何か理由があ
  るのか?」

「理由...いや、理由?」

「彼女はカズ、お前の話しかしないさ」

「俺の?」

「あぁ、殆ど文句だがな」

「あいつ...態とか!」

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