短編

□守ってあげる
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轟くんがやばい
なんでも許せる人向け
轟目線多








携帯のアラームを使ってるけど、全く起きる気配がなくてやっと3回目でいつも目を覚ます。本当に寝るのが好きで、確かどこでも寝れるのが特技って話してたよな。
いつも寝る時に着ている少し大きめの服で、萌袖って言うのか?それになってて、目を擦っているのはあざといと思う。
寝癖を直して、制服に着替えて家を出るなまえは毎朝飯食わねぇからいつも腹減らねぇのか?と気になる。
なまえは一人暮らしで雄英高校の最寄り駅から2駅のところに住んでいて、今日もイヤホンで音楽を聴きながら登校している。俺は最近の曲とかよくわからねぇけど、なまえの好きな歌手だけは覚えた。
学校に着けば俺はヒーロー科でなまえは普通科だからクラスは別。なまえはヒーローを目指しているわけじゃないからヒーロー科に転入することは無い。それが少し残念だ。一緒のクラスで学校生活を送ってみたいと思った俺は、少し女々しいのかも知れない。
だけど授業中以外で会えるのは昼休みだ。俺もなまえも、毎日昼食は食堂だから会える。今日はなまえも俺の好きなザルそばの気分だったらしくて嬉しかった。やっぱり好きな奴が自分の好きなもの食ってると嬉しい。
ヒーロー科は7限まであるから普通科のなまえの方が先に終わってしまう。それになまえはバイトをしているので、学校が終わったらすぐ帰るんだ。
今日はどうするか、なまえがバイト行ってる間にうちにいって掃除でもしてやろうか。
俺はなまえのうちに行って、合鍵でドアを開ける。




「ただいま」




そう言っても家の主は今バイト中でいないからな、返事が来るはずもない。
なまえは男にしては綺麗な顔立ちをしてる。はっきり言えば女子よりも綺麗だと思う、けど顔には似合わず結構不器用で掃除が下手なので俺は散らかっている服をタンスに閉まったり、シンクに溜まってる皿を洗ってやったりする。そう言えば、ここに来る前にコンビニに寄ったらなまえの好きなデザートがあったので買ってきた。バイト終わりにそれ食べるの毎回嬉しそうだからな。
それを冷蔵庫に入れた。
あとはテーブルの上にある手紙だ。なまえはモテる。そりゃああんなに顔綺麗だしな。だからラブレターってやつを貰うことがある、でもこうやって出しっぱなしってことは俺に何も隠してないってことで少し嬉しかったりするけど女子に貰うのを見る度に少し怖くなる。俺より女子の方に行ってしまったらって。だからなまえ宛のラブレターは俺が処分している。それに対してなまえは1度も怒ったことないので、俺が少し不安に思ってるってことを気づいてるんだと思う。
片付けもしたら少し疲れてなまえのベッドで横になる。ふわりとなまえの匂いがする、俺の好きな匂いだ。好きな匂いに包まれてると安心して眠くなってきたが、携帯が鳴り見てみると姉さんからだった。
そう言えば今日は遅くなるってことを伝えてなかった。夕飯が出来るらしく、仕方なく俺はそのまま合鍵で鍵を閉めて家を出た。でも1つ今日はなまえに内緒で1枚服を借りた。それは今朝着ていた少し大きめの服。なかなか会えなくて寂しくなるからたまに服を借りていってる。なまえの匂いするし、そう言えば家になまえの服が溜まってきたかも。そのまま駅に向かっていると沢山の人の中でなまえを見つけた。俺は気づいたけどなまえは今日のバイトでだいぶ疲れているらしく、ふらふらしながら帰っていった。





疲れた体に鞭打ってやっと家まで帰りついて、鍵を開けて部屋の電気を付ければ今朝と違う。脱ぎっぱなしだった服もシンクに置いてあったままの皿やマグカップは綺麗に洗われている。



『なんで…』








次の日の昼休み、雄英高校に入学してからすぐ仲良くなった同じ普通科の友人と一緒に昼食を食べながら昨日のことを話してみた。





『自分で片付けた記憶、ないんだよね』

「えー、なにそれ。ストーカー…とか?」

『俺男だけど…』

「男でもストーカーはされんじゃね?そのストーカー女がお前がバイト行ってる間に家に入り込んで…綺麗にしてる?」





なんだか綺麗にしてもらってるだけじゃストーカーとも言えないかも。ずっと誰かに見られてる気配もしない、自分が鈍いだけかもしれないけど。





「何かさ取られたりしてんの?最近少ないなって思うものとかさ」

『あ──下着と服が少ない、かも』

「それ盗まれてるんじゃね?」

『でも俺すぐ物無くすし』





友人にきちんと綺麗にしとけ、と言われた。確かにいつも綺麗にしとけば無くしたものも、もしかしたら盗まれてるのかも知れないことが分かるのかも。ちんたら喋りながら昼食を食べていたら、友人はとっくに食べあげて午後の授業の宿題を終わらせてないから先に戻ると行ってしまった。1人で食べながら昨日のことを考える、後は何がおかしかったっけ。ああ、手紙だ。たまに自分の下駄箱に手紙が入ってることがある、ありがたい事にラブレターと呼ばれるもので。だけどああやって部屋が綺麗になった後はそのラブレターが無くなっているのだ。だけど、自分が自意識過剰で妄想でもしてたのかも知れない。それは凄い痛いヤツだし、なんだか凄く恥ずかしい。でも、もし本当にストーカーをされてるなら、そのストーカーの人がラブレターを捨ててる…?




「なあ」

『え…』




いつの間にテーブルを挟んだ目の前に髪の色が赤と白という、なかなかおめでたい色の男子がいた。誰だっけ?



「ここ、席いいか?」



周りを見ればポツポツ席は空いているけど、たしかにまだ人は多い。ここで断るのも嫌な奴みたいだから俺は頷いた。まだ半分残っているオムライスを口に入れながら目の前の奴の視線を感じていた。なんかガン見されてる?でも何でガン見されてるのかわからなかった。もしかして先輩…だったのかな。挨拶しろってこと?え、都会怖い…。だけどここできちんとしてなきゃ、この後目を付けられるのも嫌だし。







『俺、みょうじなまえ…普通科の1年…っす』

「知ってる」

『え?』

「ああ、いや俺も1年だから」

『あ、そうなんだ』




なんだ良かった同い年じゃん。じゃあなんで俺のことガン見…?悩んだけど、悩むのも基本苦手だ。なるようにしかならないでしょ。俺は最後の一口を口に入れて、両手を合わせて席を立った。あの紅白くんに軽く『じゃあね』と声をかけて。


今日も昼休みには食堂にいた。なまえとよく一緒にいる奴と一緒に。少し聞こえた2人の会話から「ストーカー」って言葉が聞こえた。え、いつの間になまえがストーカーをされたんだ?俺全然気づかなかった。2人で話している内容を聞けば、なまえと一緒にいる奴がなまえを心配しているみたいだ。今日初めてお前のことを少し良い奴だと思った。だけど本人はあまり気にしてないみたいだ。そういう隙だらけな所心配でしょうがない。そんな2人の会話が気になればいつの間にかなまえの前の席で飯食っていいかと聞いていた。
目の前でオムライスを食べているなまえはすげぇ可愛かった。オムライス似合うし、スプーン持ってるの可愛い。これはストーカーにあっても可笑しくない。
オムライスを食べているなまえは一時の間おかずだ。目に焼き付けようとしたらなまえが少しビクビクしながら何故か俺に自己紹介を始めた。もちろん知ってるけどな、いきなりどうしたんだ?
だけど俺も1年だと伝えると、少し安心した顔になった。もしかして俺のこと先輩だと勘違いしてたのか?可愛いな。
最後の一口を食べ終えて、ごちそうさまの手を合わせてなまえは席を立った。最期に声をかけてくれて、もう今日の俺は腹がいっぱいだ。
自分のスマホの画像には沢山のなまえの写真が入ってる、あと昨日借りた服の写真も。昨日の夜着てみたら俺に丁度いいサイズだった。その画像欄からなまえの今月のシフトを見ると今日もバイトだ。よし、ストーカーが後を付けないか俺がきちんと見よう。


あれからなまえがきちんと家に帰るまで見送っているが、ストーカーらしき人物は見当たらない。だけど最近なまえはバイトから帰る際、少しビクビクしている。たまに走り出したりするから俺は目を離せない。辺りを見回しながらなまえは家へと入っていった。大丈夫だ、今は俺しかいない。怖がることはねぇ。
だけどなまえが言うにはストーカーがいるらしい、確信したと。バイトから帰る際誰かが後を追ってると言うんだ。だけど俺は見つけることもできてない。そういう”個性”なのか?
今日も今日とてストーカーを見つけられず、これ以上遅くなったら姉さんに心配されるから俺は電車に乗ってスマホからなまえを見守ることにした。イヤホンを付けて、画面ではなまえが部屋で誰かに電話をしている。多分なまえとよく一緒にいる奴に電話してるんだ。今のところの被害は後を付けられていること部屋に入られている、そして物を盗られている。この3つらしい。可哀想に、すげぇ怖がっている。大丈夫だからななまえ、俺が守ってやる。だって愛してるからな。



画面の向こうでベッドに座りながら電話をするなまえがこっちを向いた。なまえの目と、俺の目がいま合った。



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