咲けよ花!
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放課後─────.
授業が終わったあと考える。
さて夜ご飯は何しようか。
豆腐はあったな、今日は動いたし何かガッツリしたものが食べたい…。あ、明日の朝ごはんのパン買いにいかなきゃ。
ふむ、と頭を悩ませていると梅雨ちゃんが来た。
「めぐちゃん、何を悩んでいるの?」
『夜のごはんのことだね!悩むよねぇ』
「今日は動いたし、ガッツリしたもの食べたいわね」
『ふふ、私もそれ思ってた』
二人で晩御飯のことについて話していると、切島くんが話しかけてきた。
切島くんってなんだか犬みたいだ。
「なぁなぁ!久我と蛙吹も参加しねぇ?」
「梅雨ちゃんと呼んで。何をするの?」
「今日の戦闘訓練の反省会!」
『反省会か!』
"反省会"という言葉に皆が参加する!と声を上げる。
そんな中、爆豪くんはバックを持ち教室を出ていこうとするのに皆「爆豪も参加しよう!」と声をかけ引き止めたが無視して帰ってしまった。
何か爆豪くんはあの戦闘訓練のあとから少し様子がおかしい。なにかあの子は、考えているのだろう。でも私には何も出来ることはない。
すると、教室のドアが開き緑谷くんが入ってきた。
おばあちゃんにはきちんと治して貰えなかったのだろうか、まだボロボロの姿だった。怪我が気になり切島くんや三奈ちゃん、砂糖くんに囲まれている緑谷くんの傍に梅雨ちゃんと向かう。
『緑谷くん大丈夫?右手は大変だね、なにか困ったことあったら言ってね』
「あ、ありがとう久我。また明日の朝にはリカバリーして貰えるみたいだから大丈夫!」
『そっか、良かった!』
緑谷くんは爆豪くんが居ないことに気づき、さっき皆止めたけど帰ってしまったことを言うと爆豪くんを追いかけていってしまった。
緑谷くんはまた戻ってくるだろうと皆は反省会を始めた。が。
『やっばい!!時間が!!!!保育園!!!!』
時計を見ると16時半を過ぎている。まさか、今日反省会すると思っていなく17時にお迎えに行くと朝なつめ#と約束をしてしまった。
『ご、ごめんね!!用事あるので帰ります!』
「めぐちゃん、慌てすぎて事故しないようにね」
『ありがとう梅雨ちゃん!ではお疲れ様です!』
鞄を持ち慌てて学校を出れば昇降口外に緑谷くんがおり、オールマイトさんは立ち尽くしていた。
『どうしたんです?オールマイトさん』
「いや…教師って難しいと思って…」
『な、なるほど。奥が深いですね』
とりあえず元気づけに背中を叩いて私は校門を出た。
***
『お迎え来ましたー!』
「あ、なつめくん!お迎え来たよー」
「お姉ちゃん時間ぴったりー」
『お姉ちゃん頑張った…っ!』
先生に挨拶をし、手を繋ぎながらスーパーを目指すと見慣れた顔の男子がいた。
「久我と…弟、か?」
『あれ轟くん、今帰り?そう弟のなつめです。ほら、挨拶は?』
「久我…なつめです…」
私の後ろに隠れてしまったなつめが可愛すぎてニヤけそうになる顔を必死に抑えた。
「俺は轟焦凍だ」
「とろろきー?」
「轟…いや焦凍でいい」
「しょうと、お兄ちゃん?」
「んぐ…っ」
『可愛いじゃろ轟くん、私の弟』
弟の可愛さが轟くんに伝わったことで、反省会はもう終わったのかと聞けば家族の人にお使いを頼まれたので、先に帰ったらしい。
私も買い物があったので一緒にスーパーに向かうことにした。
「何買うのー?俺、持ってくる!」
『それじゃあ食パン持ってきてくれる?』
「わかった!」
『ありがとうね、夜ご飯何にしようかな。轟くんのお家は夜ご飯何?』
「わりぃ、わかんねぇ。夜ご飯も作ってんのか?」
『そうそう、うち両親がいないから』
さらりと言った言葉に轟くんは「わりぃ」と俯いたしまった。隠しているわけでもないから言ってしまったのだが、普通は聞いちゃいけなかったとそういう表情をすることを思い出した。
なのでもう大丈夫だということを伝えた。
「…もしかして久我の両親ってヒーローか?」
『うん、そうだよ』
「似てるとずっと思ってた」
両親のどちらだろうか。確かによく似てると言われていた、メディアにも少し出てたからもしかしたらクラスでも気づいている人は多いのかもしれない。
「お姉ちゃーん!しょくぱん!」
『お、ありがとうね助かった!』
「今日の夜ごはん誰かくるかなぁ?イレイザーさん?マイクさんとオールマイトも」
『うーん、イレイザーさんは仕事で遅くなるんじゃないかな…あ。』
「先生達と仲いいのか?」
ついつい轟くんの前で話してしまった。全員両親の友人で、子供だけで住んでるからよく家に来てくれる!ということで納得してもらった。
『これは秘密ね轟くん。ヒーローと仲良い…ましてや雄英の教師ってなるとちょっとね。』
「事情があるもんな。わかった、言わねぇ」
『く、口止め料をなにか支払おう』
「それじゃあ口止めとして、今度何か頼むわ」
『今度でいいの?』
「ああ」
そのあとは轟くんも普通で、ましてやアパート前まで食料品の入ったビニール袋を運んでくれた。
『ごめんね轟くん!重いのに!』
「いや、大丈夫だ」
「しょうとお兄ちゃんは一緒にご飯食べないの?」
『いきなりは無理だよ、焦凍お兄ちゃんのお家の人がご飯作ってくれてるよ』
「えーしょうとお兄ちゃん、今度ごはんたべにきて?」
珍しくなつめは一目見て轟くんを気に入ったらしく、制服のズボンを握っていた。
「わかった、今度来るな。いいか?」
『もちろんだよ!』
***
温かいお風呂に浸かり、ゆっくりと疲れを取る。極楽、極楽ってなんだかおじさんくさいか。
「ねえ、お姉ちゃん」
『なーに』
「しょうとお兄ちゃんって」
家に帰ってからずっとしょうとお兄ちゃん、と言っている。何か気になることでもあるのだろうか。
どちらかと言えば人見知りで、出会ってすぐ懐く…ってことはあまり無いのだけれど。
『焦凍お兄ちゃんがどうしたの?』
「しょうとお兄ちゃん、なんか寂しそう」
なつめの言葉にドキリとした。
ふと見せる轟くんの表情が子供とは違う顔をする。なにか必死に抑えているような、そんな顔。
ヒーリングが"個性"のなつめは人1倍感じ取りやすいのだろうか。
『これは早めに夜ご飯呼ばなきゃね』
「美味しいものみんなで食べたら元気になるよ!」
『そうだね、焦凍お兄ちゃんの好きな物聞かなきゃ!よし!なつめお風呂から上がるよー今日はエビフライでーす!』
「エビフライー!」
いつか、轟くんが悲しい顔をしなくなる日が来てくれるだろうか。
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