咲けよ花!
□18
1ページ/1ページ
PM0:50
ヒーロー基礎学の授業が午後からある。
だがその前の相澤先生の話があった。
「今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
”なった”の言葉がどうにも引っかかっていたが、どんどんと話が進んでいく。
今日のヒ基学は人命救助訓練らしい。戦闘より、救助のほうが私の”個性”が使える場面が多いと思う。
まずは授業を頑張らねばと、意識を授業の方へ向けた。
今回コスチュームの着用は各自の判断でいいらしいが、皆着るようだったので着ることにした。
コスチュームに着替えると、飯田くんが笛を吹きながら皆を誘導していた。
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう」
「飯田くんフルスロットル…」
委員長になり大いに張り切っている飯田くんの誘導に、素直応じ出席番号が最後の私から乗り込んだが
『あれ?』
一番後ろの席は五人掛け、そして通路を挟み二列ずつの席はあったがそれは後ろ半分のみで、前半分は横向きに椅子が並ぶ4人掛けの席だった。
どうするか考えたが、一番先に乗り込んだので後ろの方の席に座る。
「ここ、いいか?」
『どうぞどうぞ』
轟くんが隣いいかと聞いてきたので了承した。このタイプのバスじゃ、出席番号順に座るのは難しいだろう。
「こういうタイプだったくそう!!」
「イミなかったなー」
委員長として初めての仕事は失敗に終わり、飯田くんは撃沈していた。
前の席は響香と爆豪くんでなかなか珍しい組み合わせだ。
前の席の子たちは会話を始めたので、そういえばあの放課後会った日からあまり話せてないことを思い出した。
『轟くん。なつめ、轟くん気に入ったみたいで帰ってからずっと"焦凍お兄ちゃんはいつ来る?"って言ってるの』
「そうか、嬉しいな。俺弟とかいねぇからどう関わればいいかわかんなくてな」
『もし良かったら近々食べに来て』
「ああ。わりぃ久我、ちょっと寝る」
『うん、おやすみ轟くん』
そういうと轟くんはすぐ眠ってしまった。眠かったのに話しかけて悪いことをしたな…。
「派手で強ぇっつったらやっぱ轟と爆轟だな、希少なのは久我だし」
「ケッ」
『ありがとう?』
希少っと言われるとなんて答えていいかわからなくなる。そうでしょ?も違うし、ありがとうとしか返せない。
こんな時なんて返すのが正解なのだろうか。
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」
「んだとコラ出すわ!!」
「ほら」
『子供が泣くね、これは』
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!テレポート女もふざけんな!泣かねぇよ!!」
『いや号泣でしかないと思うよ、それに殺すなんて言わないの』
「うるせぇ!!!」
「もう着くぞいい加減にしとけよ…」
「「ハイ!」」
『御意』
「「(なんで武士口調なんだ…?)」」
***
バスが止まったので轟くんの肩を軽く叩いた。
『轟くん起きてーついたよー』
「んぁ…?」
『ごめん、隣で騒いじゃった』
「いや、爆睡してたから大丈夫だ」
轟くんとバスを降りれば、そこはUSJだった。そして誰かもUSJと叫んだ。
「水難事故、土砂災害、火事…etc.あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も…嘘の災害や事故ルーム!!」
『本当にUSJだった!!』
いいのこれ?USJに許可とってるのかな!?許可とってるよね13号さん!
お茶子ちゃんは13号さんのファンのようでとても興奮している。
相澤先生と13号さんはいるがオールマイトさんがいない。3人体制のはずだっけど、もしかして昼休みにみたニュースで事件を三つ解決していたから、活動時間の限界が来てしまったのかもしれない。だけど、オールマイトさんがいないが授業は始めるようだ。
「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」
『「(増える…)」』
「皆さんご存知だと思いますが、僕の”個性”は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その”個性”でどんな災害からも人を救いあげるんですよね」
緑谷くんの言葉にお茶子ちゃんは首が取れそうな勢いで頷いている。
「ええ…しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう”個性”がいるでしょう。超人社会は”個性”の使用を資格制にし、厳しく規則することで一見成り立っているようには見えます。
しかし一歩間違えれば、容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないでください。
相澤さんの体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り
オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験したかと思います」
私の”個性”も相手に触ることができれば、簡単にテレポートできる。私の”個性”だっていくらでも人を殺せることはできる。
「この授業では心機一転!人命の為に”個性”をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。
以上!ご清聴ありがとうございました」
私の”個性”で人を助けられるのなら、父のように人を助けられるのならば私の目に届く範囲は、必ず守りたい。そう父と同じ”個性”を使おうと決めた。
とても13号さんの話に感動した、だけど私は急な胸騒ぎに襲われた。
『…っっ!』
なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに、なに?
この胸騒ぎは、気持ち悪さは、頭の痛さは。
これはまるで両親が亡くなった日のような。
息が苦しい。
なにか、うしろ、のほうが、ひろばから、なにか。
「そんじゃあまずは…」
『イレイザーさん!!!!!!』
広場の方がなにか気持ちが悪くて、私はイレイザーさんの名前を叫んだ。
「どうした久我…?」
いつもと様子の違う私を見て、私が見つめる広場の方をイレイザーさんもみる。
すると黒いモヤのようなものが現れ、そこから手が、人が現れた。
「一かたまりになって動くな!!!」
『あれは敵…』
その時私の脳内は、早く皆を連れて逃げろと警報を出していた。
.