咲けよ花!
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その日は事情徴収を終えてから帰宅できるようになり慌ててなつめを迎えに行った。
なつめにはイレイザーさんのことを伝えていない。
夜遅くに顔を見せてくれたマイクさんとオールマイトさんはついさっき帰って来たらしい。
色々と対応に追われていると言う。
帰りにマイクさんはイレイザーさんに会ってきたらしく、意識は戻っているみたいだ。
オールマイトさんもリカバリーガールにきちんとケガを治してもらったようで、家に帰った時にはケガはもう無かった。
「それとめぐ、髪揃えねぇ?」
『切ってくれるのマイクさん』
「いいぜ!」
手先が器用なマイクさんに髪を揃えて貰った。
何だかんだ、バタバタしていたらすっかり忘れいていた。
鏡の前で見てみると確かに短くなった。
「髪を狙うとか何考えてんだろうなぁ、あいつらは」
『髪なんてまた伸びるし、よかったよ髪でー』
「髪短いの似合ってるよめぐちゃん」
『オールマイトさんありがとう!』
「うわっオールマイトさん抜け駆けかよ!」
***
翌日、学校は臨時休校となったので私は病院に向かった。
ニュースでは昨日の事件のことばかり言っている。
病院はどこも同じ独特な感じがある、受付のお姉さんにイレイザーさんの部屋の番号を教えて貰った。
軽くノックし、『失礼します』と声をかける。昨日の夜、意識を取り戻したようだが今はまだ眠っているかもしれない。
静かに中に入りベッドに近づけば、全身包帯のイレイザーさんがいた。
命に別条はない、と知っていっても両親と重ねてしまう。
目は閉じているのできっと眠っているのだろう、そこまで長いもできないので少し顔を見たら帰ろう。
『イレイザーさん』
「来たのか」
『うわっビックリした!』
閉じていた目がパチっと開いた。
いや怖かった、ホラーだった。
『お、起こしちゃいました?』
「いやお前がノックする前に起きてた」
『それなら返事してくださいよ・・・』
とりあえず、近くにあった椅子に座らせて貰った。
イレイザーさんは私の顔をガン見している。
「髪、切ったのか」
『え?ああ…そのイメチェンですよ』
「昨日マイクから聞いた、敵にやられたんだろ」
『何で知っているのに聞いたの…』
合理的主義者のイレイザーさんが無駄な話をしている。どうしたのだろうか。
「…すまなかった」
『は…』
「守れなかったな、お前も気にしてたのにこのざまだ」
落胆したか?なんて聞いてくる
『そんな訳ないじゃないですか、イレイザーさんは私たちを…生徒を安心させようとして飛び出していったのわかってるんですからね。落胆なんてする訳ないじゃないですかっ』
両目から流れていく涙はどうしても止められなかった。
「おい、泣くな」
『私ずっと胸騒ぎしてて…なのにイレイザーさん助けられなかった…っ目の前にいたのに助けられなかったっ』
「お前は蛙吹を助けてくれただろう…ありがとうな」
『うぅ…おぇっ』
「吐くなよ」
『あ゛いっ』
「…感謝はするが、本当は叱らなきゃいけねぇんだからな。敵の前に飛び出しやがって、俺の寿命縮んだぞ。手治ったら覚えてろよ」
その言葉に肝が冷える。手が治ったら何をされるのだろうか、拳骨か。それとも十字固めか。
どう回避しようかと悩んでいると「めぐ」と呼ばれた。
『なんですか』
「お前はヒーローになりたいか?」
昨日の敵の襲撃でヒーローが戦うものが、ヒーローの恐怖がわかった。それでもお前はヒーローになるのかと聞いているんだろう。
『なりたいです。私はただお金稼ぎのためにヒーローになりたいって思ってた、けど昨日の敵の襲撃でイレイザーさんを、友達を助けたいって思いました。まだ私には知らない人まで助ける勇気ははっきり言って無い…けど私の大事な人は必ず助けたいって強くなりたいって思いました』
「…そうか」
『除籍にする…?』
「あ?今は相澤先生じゃねぇ、"イレイザーさん"だから除籍にはしねぇよ」
『よ、よかった!!除籍にされるのかと思った!イレイザーさん好き!愛してる!』
「除籍にするか」
『なんでぇぇぇえええええ!!!?』
この後近くを通った看護師さんにお静かにっと怒られたので、私は帰ることにした。
『それじゃあイレイザーさん、またね』
「ああ」
きっとイレイザーさんが帰ってくるのは、少し先になると思っていた。