咲けよ花!

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イレイザーさんは退院しているが、両腕が骨折している為、日常生活を送るのに大分困難している。
それでも退院したのは"プロ根性"なのだろうか。学校では職員室で隣の席で同期のマイクさんが面倒を見ているみたい。
夜は皆イレイザーさんの家に集まって色々と世話をされている。
なつめに「ミイラマン」と呼ばれてから、マイクさんも面白がって呼ぶようになったり、一人でご飯が食べれないイレイザーさんになつめが食べさせたりとちょっとなつめのオモチャにされている感があるがまあ、基本なつめには甘いしいいかと思っている。ついでに言うと、きちんと動画に撮っている。
あとは体育祭に向けて”個性”の練習をしている。
もう少しで体育祭ということで、楽しみ半分緊張半分っといった感じでクラスの中の雰囲気が若干変わってきた。その中で、一つだけ気になることがある。
轟くんだ。
なにか話したいことがあるのか、ソワソワしているが特に進展がない。
あと1週間で体育祭が始まるから、それまでにはこの"轟くん問題"を解決しておきたいのでとりあえず、一緒に帰ろうと誘った。




「いいぞ」

「なんだよお前らリア充かよ!!」

『いやいや違うから、用事あるんだって。』



男女の絡みには鋭い峰田くんを追い払い(テレポートで逃げた)、近くの公園に行った。
公園で小さい子が遊んでいるのを眺めつつ、ベンチに座った。





『轟くん、何か私に話したいことあるんじゃない?ずっとソワソワしてる』

「バレてたのか」

『まあね。で、どうしたの?今話しておく方が体育祭にも集中出来ていいと思うけどな』

「…そうだな。なあ、緑谷ってオールマイトの息子なのか?」

『は?』




多分私の今の顔は凄く間抜けな顔をしていると思う。

え?オールマイトさんの息子が緑谷くん?でもオールマイトさんは結婚してない…もしかして隠し子??え、そんなドロドロ…?平和の象徴が平和じゃない??




「…その顔はハズレみたいだな」

『あ、うん。結婚してないよ』



轟くんにはオールマイトさん達とは"両親達が友人で、私達を気にかけてくれている"間柄っと説明したはず。同じアパートに住んでいるとか、常に夕飯を食べに来たりしている仲 までとは言ってない。あくまで"両親の友人達"だ。



『そのオールマイト…先生と緑谷くんがどうかしたの?』

「この前食堂で、飯田と麗日が"緑谷はオールマイトに気に入られている"って話しててな」

『ほうほう』




確かに初めての戦闘訓練で、モニター越しに緑谷くんを見ている目は少し違ったかもしれない。けれど、私もクラスメイトの中では特別な立ち位置にいるからそんな詮索できないしなぁ。




「その久我に話したいことは、いい話じゃねぇ。聞いてて、胸糞悪くなる話だ。でも何か久我に話せばスッキリするんじゃねぇかって…自分勝手なんだが。それに俺ばっかりお前の家の事情聞いて、こっちは話さねぇのも悪い気がして…」

『轟くんは私に話したらスッキリする?』

「…うん」

『よし、それじゃあ聞こう。でも待ってその前に』



近くにあった自販機に向かう、何がいいんだろ?もうここはあれかな、青春のポカ〇スエットかな!
小銭を入れてポ〇リを2本買って、轟くんの元に戻る。




『さあ、一杯飲もうじゃないか』




***



「俺の親父はNo.2ヒーローのエンデヴァーだ」

『そうだったんだ…』



両親の葬式であったのが初めてだったが、No.2ヒーローのエンデヴァーは知っていた。轟くんはエンデヴァーさんの子だったのか。



「…"個性婚"って知ってるか?」

『うん、知ってるよ』



嗚呼、なんてことだろう。その言葉でなんとなく察してしまった。
"個性婚"、確か第二世代・第三世代で問題になっていたはず。強い”個性”を子に継がせるため人権や倫理など無く、より強力な”個性”を受け継がせるために優れた配偶者を選ぶ、政略結婚と近いもの。そんな話、昔の時代だけだと思っていた。こんな未来にもそんな結婚があるんだと知って、とても驚いた。


轟くんのお父さんであるNo.2ヒーローエンデヴァーさんは、自分の意志を受け継ぎオールマイトさんを超える子を作るためだけに轟くんは生まれたという。
両親の”個性”どちらとも持った轟くんは、兄姉と遊ぶことを許されず幼い子には酷すぎる修行をさせれていた。
そんな我が子の姿を見て、そんな環境できっと轟くんのお母さんは不安定で心が病んでしまったのだろう。




「記憶の中の母はいつも泣いてる…母は俺の、左側が醜いって煮え湯を浴びせた」





そっと、轟くんは自身の火傷跡のある左側を触る。
どれだけ痛くて、悲しかっただろう。
唯一の味方である母親が居なくなった時、どれだけ辛かっただろう。会えるはずなのに、父親に引き剥がされた轟くんはどれだけ悲しかっただろう。




「悪ぃ…こんな話し聞かせて」

『うんうん、話してくれてありがとう。』

「俺、体育祭ではアイツの”個性”を使わないで優勝するつもりだ。使わず一番になることで奴を完全否定するんだ…」







思わず抱きしめてしまった。轟くんの声には憎悪が含まれていたから。




「久我…?」

『轟くんは、轟くんだからね』





私にはそれしか言えなかった。






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