咲けよ花!
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第二種目終了────
《早速上位4チーム見てみよか!!!》
マイクさんが1位からチームを発表していく。1位は轟チーム、2位は爆豪チームのようだ。
《3位 鉄て…アレェ!?オイ!!心操チーム!?》
『よっしゃ!!ありがとう心操くん!』
「うん…ご苦労様」
私と心操くんはちからづよくハイタッチを決めた。
《4位緑谷チーム!以上4組が最終種目へ…進出だああーーーーーーーー!!!!!》
ドクドクと胸の鼓動が早くなる。これで沢山のプロヒーロー達の目に入るし、なつめにもカッコイイ姿を見せられる。
《一時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!…オイ イレイザーヘッド飯行こうぜ…!》
《寝る》
いや、食べようよイレイザーさん。
心の中で突っ込みながら皆食堂に行こうと移動しているのでついて行く。心操くんは普通科の友達がいるのか、ヒーロー科の子達とは違う所に向かっている。
『ありがとうね、心操くん!』
そう声を掛けると、振り向いて手を振ってくれた。朝の開会式では振ってくれたなかったのに、なかなか恥ずかしがり屋の子だ。
さて私も食堂に向かおうと足を進めれば声をかけられた。
「久我さん、聞きたいことあるんだけどいい?」
『尾白くん…いいよ。』
今日は体育祭ということで、お弁当は持ってこなかった。なので初めての食堂のご飯で尾白くんと一緒にご飯を食べることにした。
ちなみにオムライスだ。
尾白くんも食堂のご飯に箸を進めていたが、ピタリと止まった。
「俺、競技中の記憶無くって…気がついたら終わりのカウントダウン始まってて、終わった。あの心操に話しかけられたあとから記憶ないんだけど…やっぱり心操の"個性"だよな?」
『そうだよ』
隠すことでも無いから本当のことを言った。すると尾白くんは「やっぱりなぁ」っと声を出した。
「久我さんはさ、アイツに”個性”使われた?」
『私は使われてないの、自分から心操くんのチームに入れてって言ったし心操くんの計画に賛成したから』
「そっか」
『尾白くんが心操くんの”個性”にかかっている事はわかってた。だけど何にもしなかった』
私は心操くんの計画に賛成したし、尾白くんが”個性”にかかってる事を知ってて何もしなかった。これに対して嘘はつけない。尾白くんに軽蔑されても、嫌われても。
今頃謝るのもずるいと思う。謝るくらいなら最初に、尾白くん達にかけた”個性”を心操くんに解除して欲しいと、頼むこともできたのに私はしなかったのだから。
そうは考えていても、今頃同じクラスの子を助けなかったことに罪悪感を感じ出しためぐの顔は、少し暗くなった。それをみて尾白は口を開いた
「俺久我さんを、責めてるわけじゃないからね。アイツの”個性”にかかったのは俺の落ち度。久我さんには、そういう”個性”の対策があったのかと思って声かけたんだ」
そう言って尾白はいつも通りの笑顔を見せてくれた。
『尾白くん、すごいねカッコイイ。それで優しい』
「そう?」
『そうやって数々の女子をおとして…』
「モテないよ」
『っていう無自覚ね?怖いね!天然タラシ!』
「久我さんって落ち着いててお姉さん的なイメージあったけど、喋ってみると妹っぽいね?」
『うん?私、弟いるからお姉ちゃんだよ?』
「そうだねお姉ちゃんだね」
緊張していた空気は無くなって、尾白くんとのお喋りを楽しみながらオムライスを食べていたら急に後ろから衝撃が来た。なんだ!?
「めぐ!!大変なの!!」
『三奈ちゃん衝撃凄かった!!なにが大変なの!?』
「めぐさん!女性陣集合ですわ!」
『百ちゃんまで慌ててどうしたん!?』
「ほらめぐちゃん立ってー!って尾白くんと2人でご飯食べてたの!?何!?詳しく聞かせて!!」
『透ちゃん待って押さないで!!』
右手には百ちゃん、左手には三奈ちゃん、後ろから透ちゃんが押してくるのでずりずりと連れていかれた。
尾白くんは苦笑いしながら見送ってくれた。
***
昼休憩終了後
《最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…》
1-Aの女子は体操服を脱ぎ、両手にはポンポンを持って
《ん?アリャ?》
《なーにやってんだ…?》
チアガールの格好をしていた。
《どーしたA組!!?》
1-A以外の女子達は誰もチアガールの格好をしていないことで、八百万が叫ぶ。
事の発端は峰田と上鳴がアメリカから来たチアガール達を見て、女子に着せたかったらしく騙したらしい。ただ、峰田と上鳴が言っただけでは信じてもらえないと本人達もわかっていたらしく"相澤先生からの言伝"ということで言ってきたのだ。
『いやー相澤先生がそんなこと言うはずないよね』
「めぐ!分かってたなら教えてよ!」
『女の子達のチア姿みたかったし、いいかなーって』
「良くないし!」
『響香かわいいよ?』
響香はポンポンを地面に叩きつけた。透ちゃんは吹っ切れてやりきるつもりらしい。
「ひょーーーー!!久我!いい体してんな!!」
峰田は目は大きく開きながら叫ぶ。その目は充血していた。
『私初めて直接いい体してるなって言われた』
「怒っていいのよめぐちゃん」
梅雨ちゃんに言われ今度なにか言われたら怒ろうと決めた。
《さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!》
それからトーナメントの組み合わせのくじ引きが始まった。だがそのくじ引きの前に尾白くんとB組の男子が、辞退すると言った。
尾白くんは競技中の記憶がなく自分が何も出来なかったと、力を出し合い争ってきた座にわけもわからないまま並びたくはないと語った。
辞退することは、ミッドナイトさんの好みだったらしく認められた。そして2名が辞退したことで、鉄哲チームから2人繰り上がってきた。
くじ引きの結果、第1回戦目で当たるのは
『三奈ちゃんだ!』
「めぐ!女子対決だね!負けないからね!」
『うん!私も負けないよ!』
それからレクリエーションが始まったが、私は参加せず体操服に着替え直し静かな場所に移動した。
マイクさんの実況する声と、観客たちの声。
壁に背中を預けて、少しひんやりとした場所でポケットからスマートフォンを取り出し1つの動画の再生ボタンをタッチする。
それは入学式の日の夜。正確には入学式に参加してないのだけれど、お祝いということでその日は豪華な夕飯を食べた。
マイクさんは何かしらあるとすぐ動画取り出すし、オールマイトさんはケーキ買ってくる。そんなに食べれないのに大きいケーキを。イレイザーは、いつも通り。
「ほらイレイザー!めぐに一言!」
そう言ってイレイザーさんに近づき、画面いっぱいイレイザーさんの顔になる。それに対して"近ぇ"と怒る。
「あー、除籍になるなよ」
「おまっ!家でもそれかよ!!!」
「相澤くんらしいね」
「俺もお姉ちゃんにひとこという!」
ひょこっと顔を出してきたなつめにマイクさんがカメラでとらえる。
「んっとね、お姉ちゃんカッコイイからヒーローなれるよっ」
そのなつめの言葉に動画の中の私は"ありがとう"と返している。
動画の中のなつめは恥ずかしくなったのか、イレイザーさんの背中に隠れ、みんなの笑い声で動画で終了している。
『お姉ちゃん、頑張るね』
なつめがなれると言ってくれたからお姉ちゃんは絶対ヒーローになってみせるよ。
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