咲けよ花!

□33
1ページ/1ページ








三回戦に進出しためぐの控え室に麗日もいた。




「へ?私の許可!?」

『お願いします!』

「そんなめぐちゃん頭下げらんといて!」




自分に頭を下げるめぐに慌てた。めぐは次の試合相手が爆豪で色々と作戦を考えていたが、その作戦がどうしても自分が爆豪と戦った時の試合と同じ類似してしまうから、許可が欲しいと言ってきたのだった。





『私の”個性”も相手に触られないと発動しないから、間合いを詰めなきゃなんだけど爆豪くんのあの反応速度と攻撃力は…強くて』

「だよねえ」





爆豪との試合を思い出し、呟く。本当に強かった、スピードも攻撃力の強さも。






「でもそんな気にしなくていいんよ!?”個性”は色々あるんやし、発動条件が一緒の人おるの当たり前やし!それにめぐちゃんと一緒のこと多くて嬉しいし!」

『一緒?』

「あ」




思わず言ってしまった"一緒のこと"にハッとしたが既に遅かった。でも今更話題を変えても怪しまれる、と思い口を開いた。






「…女子皆と飯田くんに爆豪くん達とお昼食べたことあったやろ?」

『あったねー』






体育祭の前に大人数で食べたお昼の時、たしかその時芦戸にヒーローを目指した理由を聞かれ答えたはずだ。







「その時めぐちゃんの理由聞いてな、一緒やなって思ったんよ。その…うちの実家建設会社なんやけど仕事なくってスカンピんで…それで父ちゃんと母ちゃん楽させてあげたくてヒーロー目指すこと決めて…」

『うん』







爆豪との試合あとの父との電話のことを思い出し、また少し視界が歪み話すのゆっくりになるがめぐは耳を傾けてくれている。





「極端に言えばお金を稼ぐためにヒーローを目指したから…他の子達の理由聞いたら立派やなって思ってて…でもめぐちゃんも家族のためにお金を稼ぐって言ってたから。そん時のめぐちゃんカッコよくて、私の理由も恥ずかしくないのかもって思えたんよ」






へへっと笑う麗日に、めぐは何度も頷いた。




『今私がこれ言ったらおかしいけど!!』

「?おかしくないよ?」

『お茶子ちゃんカッコイイよ!ちょっと自分のこともカッコイイって言ってるみたいになるけど!でもお茶子ちゃんカッコイイ!』





めぐは麗日の手を取り、上下に振る。





『家族大事やもん!家族のためにって思う気持ちもわかるし、それに私は背負うものがあるからこそ頑張れるし強くなれるって思ってる』







背負うものがある方が、その為に、その人のために、頑張らなきゃ。やらなければっという気持ちになれるのはとてもわかる。






『多分私一人だったら、ヒーローは目指してなかったと思う。普通科の高校に行ってバイトして生活してたと思う。だけど弟がいるから、ヒーローを目指そうと思えた』

「うんっ」





最初は自分が家の仕事を手伝うと両親に伝えたが、自分がしたいことを目指してくれた方が嬉しいと言ってくれた。そう言ってくれたから、自分もヒーローに絶対なって楽させてあげようと思ったんだ。





『お茶子ちゃん、ありがとう。私もお茶子ちゃんと一緒なところあって嬉しい。あ、髪型も今似てるかも?』




そう言いながらめぐは自身の髪を触る。USJで敵に髪をやられ、今はボブになっている。



「そうかもしれんっ」

『お茶子ちゃん、頑張るね。許可貰ったからには打倒爆豪くんだ!』

「応援してる!」

『ね、お茶子ちゃん。指切りしよ!それで絶対ヒーローになろ!』

「うん!」





指切りなんて何年ぶりだろうか、でも今は童心に戻ってみよう。小指と小指を絡めさせ、指切りの歌を歌う。




「『指切った!』」








ステージに上がり大きく深呼吸をする。そして右ポケットに入ってある"お守り"に触れる。
爆豪くんは強敵だ、でもだからこそ負けたくない。






《さあ!この試合で勝った方が決勝進出だぁあ──!!》






「俺は一瞬で終わらせねぇぞテレポート女!!」

『強いってわかってるよ、だからこそ』





最初から飛ばしていくしかない








《START!!!》








爆豪に触れる為に背後に"飛ぶ"がすぐ爆豪は反応し爆破した。自身の顔を隠すために使った腕がヒリヒリと痛む。
その場から離れるように再度"飛び"距離をとる。自分の”個性”には攻撃力が無い、その為に爆豪にステージを壊してもらい壊れた瓦礫を"飛ばす"しか方法がない。
その為には麗日の時と一緒で体制を低く取り、下向きに爆破をするよう誘導する。
その際も”個性”を交えながら避け、瓦礫が貯まるのを待つ。今使ってしまったら、作戦が気づかれてしまう。







「てめぇ!!舐めてんじゃねぇ!!」

『なめて、ない!!!』






でも爆豪は”個性”を使えば使い続ける程に上がっていくスロースタータータイプだ。
長期戦には持っていきたくない。




常に爆豪くんを見て隙を狙う。左右の手で大瓦礫を触り、爆豪に向けて"飛ばす"
その隙に自身も"飛んで"近づき、爆豪に触ろうとした






「甘ぇ!!!」

『っ!!』







触る前に爆豪に腕を捕まれ、めぐの腕を掴んで無い方の手で掌を爆破を起こし勢いを付けめぐをステージ外に投げ飛ばす。
だがめぐもギリギリの所でステージ上に"飛んだ"。








《落ちる寸前にテレポートし場外を回避した────!!!》







「チッ」

『はあっはあっ』







続けて使った”個性”で頭痛が起きる。だけどまだ体は動く。
次は全ての瓦礫に触り、爆豪に"飛ばす"







「同じこと何回もしてんじゃねぇよ!!」







先程よりも数の多い瓦礫を壊すため、大きい爆破が起きる。その隙に近づいてきためぐに、爆豪はイラついた。次は顔に向けて爆破してやる、と思いながらめぐに手を伸ばすが視界より下にめぐの姿はあった。
それに気づいた時には足に衝撃がきて、自分の体が傾く。めぐが爆豪に触れたのと、めぐに閃光弾を浴びせたのは同じだった。
閃光弾をもろに受け、目の前がチカチカと光り、煙幕が上がった。
視界にはステージ外が見えず、空に放り出すように"飛ばした"







『飛べぇぇええ』





きっとあの遠さならば落ちた先はステージ外だ。そのまま落ちてくれと願ったが、爆豪は瞬時に両手を爆破させ飛びステージ内に戻ってきた。






『嘘…』

「くそが!!」






何度か自身を守るために前に出した腕がジクジクと痛み、右腕は血だらけだった。その右腕を左腕を抑えながら立ち上がった。
頭痛も先程より激しくなり、体が燃えるように熱い。視界もボヤけている。






***





立ち上がっためぐの顔は顔は火照っており、息遣いも荒い。微かに震えている気もする。






『負けられない…絶対にっ』







血だらけの右腕で右ポケットを強く握った。







『勝つ!!!』






そう言って笑っためぐに釣られるように爆豪も笑った。
めぐは"飛び"爆豪に間合いを詰めた。
だがめぐが前に現れた瞬間に、爆豪の腕の中に倒れ込んできた。
それも作戦かと思い、警戒したが倒れ込んできた身体は熱すぎるくらいに熱く呼吸もおかしかった。








「おい!!」

『…なつめ…ごめん…』





自分の体操服を弱々しく握っていた左手もダラりと落ちた。




「久我!」

「久我さんっ」




心配のミッドナイトが来て腕の中で倒れ込んでいる久我の様子を見ると、すぐに叫んだ。






「意識がない…早く担架を!!!リカバリーガールの元へ!!!!」





リカバリーガールの元へ運ぶ救護のロボットが現れ、めぐを運んで行った。






「久我さん行動不能、決勝進出爆豪くん!」





***




目を覚ますとリカバリーガールの保健所にいた。先程までクラスメイトが来てくれていたらしいが、決勝戦が始まったことで戻って言ったらしい。私の熱も37度代だったので観客席に戻ることにした。右腕の怪我は包帯を巻かれていたが熱を出したことでリカバリーできなかったらしい。





「これ、ポケットから落ちそうだったから預かってたんだよ」





リカバリーガールに渡されたのは右ポケットに入れていたお守りだった。





『ありがとう、ございます…』




お守りを持ったまま保健所から出れば、今みんな決勝戦を見ているのだろう。誰も人は居ない、そう思っていたが





「めぐ」

『オールマイト、さん…』

「熱はどうだい?腕は痛む?気分は!?」







私の顔や腕を見ては体調は大丈夫かと心配し、おろおろしている。







「リカバリーできなかったのかな!?腕血だらけだったし、まだ保健所にいた方が…」

『オールマイトさん』

「ん!?どっか痛い!?」

『こ、心が痛いかも…』

「心!そ、そっか!えっとじゃあ…」






オールマイトさんは両手を広げたので、その腕の中に飛び込んだ。




「せ、セクハラになるのかなぁ…?」

『大丈夫です、オールマイトさんはお母さんポジなんで…それにオールマイトさんは家族です』

「そうだね」



HAHAHAと笑うオールマイトさんの背中に腕を回す。




『オールマイトさん』

「なんだい」

『負けました』

「うん」

『…なつめが見てたのに、応援してくれてたのに負けました』

「うん」

『……悔しい』

「うん」






頭に乗った重みはオールマイトさんの手だ、トゥルーフォーム姿でも大きい手は私の頭を簡単に包み込んだ。その温かさに涙が溢れ出す





『強く、なりたい…』

「めぐならなれる、私が保証する」

『…うんっ』

「それに一生懸命やっただろう?その姿、かっこよかったよ。なつめもそう思ってるよ」

『うぅ…』

「ああ、目擦っちゃダメでしょう」

『お、オールマイトさんっ』

「ん?」

『鼻水ついちゃった…』

「いいよ、いいよ」




そう言いながらオールマイトさんは時間まで頭を撫で続けてくれていた。






『…なにがあったの、爆豪くん』





表彰式で1位の場所に立っている爆豪は全身拘束具を付けられ、暴れている。轟の方を血走った目で見ているので決勝戦で何かあったのだろう。
そして同じく3位の飯田は家の事情で帰ったらしい、大丈夫だろうか。






「メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

「私が、メダルを持って、」

「我らがヒーロー、オールマイトォ!!!」





ミッドナイトさんとオールマイトさんの声が被った。さっきまでめそめそ泣いていたのを慰められていたので、少しオールマイトさんに会うのが恥ずかしい。
だけどメダル授与なので、必然的に私の前に現れる。





「久我少女!君の速さには驚かされた、まだまだ成長できるぞ!おめでとう!」

『ありがとうございます』




オールマイトさんが首にメダルをかけてくれ、抱きしめられた。





『私先取りしちゃってたんですね』

「ははっ、だね」





小さい声でこそっと話をした。続いて2位の轟くんの元へオールマイトさんは向かった。





放送席ではメダル授与されているめぐの姿を2人が眺めていた。







「はー!爆豪との試合でめぐの名前叫ばなかった俺偉くね!?何度叫びそうになったか!!」

「それに関してはは良くやったな、だが試合に見入り過ぎて実況少なかっただろ」

「どうしてもめぐの方ばっかりに目が行っちまって、めぐの実況しかしそうにねかったからしょうがねぇだろ!?」

「ちゃんと相手も見ろよ」




爆豪はこんな1位なんて望んでない、メダルなんて要らないと叫んでいたがオールマイトにメダルを口にかけられていた。




「さあ!今回は彼らだった!しかし皆さん 競い!高め合い!更に先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!!皆さん唱和ください!!せーの…!」

「「「『プルス、』」」」

「おつかれさまでした!!!!」






まさかのオールマイトさんの天然がここで発揮され、会場からはブーイングが沸き起こったが「疲れてると思って…」というオールマイトさんの弱気な声で笑いに変わった。

これで雄英体育祭は終了した。




.



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ