咲けよ花!
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ヒーローは国からお給金を頂いているため、公務員に当てはまる。逮捕協力や人命救助等の貢献度を申告し、それを専門機関が調査し給料が振り込まれる。
そして副業も許されている、市民からの人気と需要に後押しされた名残もありモデル等の仕事をしているヒーローもいれば、雄英教師達のように先生や、色んな副業をしているヒーローも多くいる。
ざっと、ヒーローの仕事についての説明をされたあとはトレーニングやパトロールで職場体験一日目の職場体験が終了した。
めぐと轟は仮眠室を借り過ごす、晩御飯等を済ませそれぞれが割り当てられた部屋に戻る。
部屋に戻りLINEのアプリを起動させ、電話をする。まだなつめは起きているだろうか。
電話が繋がるとビデオ通話になった。
《よお!どうだ職場体験は!!なつめ!!めぐから電話だぞ!》
画面にはオフの格好のマイクとなつめが写っている。それにイレイザーとオールマイトの声も聞こえた。
《お姉ちゃんだ!!》
『なつめ、朝ぶりだね。何してたの?』
《お絵描き〜》
『そっかー、今日保育園どうだった?何して遊んだの?』
《うーんっとね、ブランコ!お姉ちゃんは?何したの?》
まだ職場体験がイマイチ分かっていないなつめにヒーローのお仕事の練習をしたよ、と説明した。それからマイクやオールマイトからエンデヴァーの所はどうだとか色々聞かれた。
『思ってた以上の人かな…焦凍くんと結婚すればいい、みたいなことエンデヴァーさんに言われたし』
《《は?》》
『焦凍くんと私の”個性”を持った子なら最強の子供が生まれるとか、なんとか』
《《は??》》
めぐの言葉に大人3人は動きが止まったが、めぐ自信が気にしていないことに少し困惑した。とりあえず"エンデヴァーの言葉は簡単に流しときなさい!!"とオールマイトに言われたので、そうすることに決めた。
『あ、焦凍くんも結婚したいって言ってたんですけど結構似た者親子ですよね』
《エンデヴァー事務所失敗だったか…》
《私からエンデヴァーにきちんと言っておくよ》
《お願いしますよ、オールマイト》
『高校生で結婚考えるって最近の子は凄いですよねぇ』
《めぐはもうちょっと慌てたりしようぜ!!!?》
ケラケラと笑うめぐにマイクは危機感を持てと叫んだ。あまりエンデヴァーと関わりがないが、関わりが無い分イマイチどんな人物かどうかわからない。けれど高校生の男女二人の結婚を、子供を考えているなんてどう考えてもヤバいだろう。
『なつめ、今日誰がお迎え来てくれたの??』
《マイクさん!!》
『マイクさんか!夜ご飯は何食べたの?』
《オムライス!オールマイトさんが作ってくれた!》
子供二人はそんな大人の心情も知らずにおしゃべりを楽しんでいる。そろそろなつめが寝る時間になり、眠たそうにしていたので今日の電話はおしまいにしようとなった。
めぐも電話を切ると急に眠気が襲ってきた。色々と今日は緊張していたらしい。
もう部屋の電気を切り、ベッドに入るといつもあり温かいものが無いことに違和感を感じる。何年ぶりに1人で寝るのだろうか。今さっきの電話ももちろんなつめの事が気になったがもしかしたら一番自分が寂しがっていたのかもしれない。
久我宅ではなつめが皆で寝るんだと言い張ったがベッドにはどう頑張ってもなつめともう一人しか一緒に眠れない。
電話が終わってから少しなつめの機嫌が良くない。いつも一緒にいる姉がおらず、電話をしたら寂しくなったのだろう。皆で寝るのは難しいと言い聞かせても"やだ"の一点張りだった。
今日はマイクが一緒になつめと過ごす。
寝付くまではどこかソワソワとしていたが寝付くまで話してみたり、絵本を読んでみたりすればどうにか眠ってくれた。
「まだめぐが帰ってくるまで長いからな、頑張ろうななつめ」
普段こんな早い時間に眠らないが、子供体温が心地よくて眠気が襲ってきた。たまには早く寝てみよう。そしてまた明日保育園に一緒に行こう、まだ一日目だけど普段めぐがしていることを少し体験して大変さがわかった。あと6日ある職場体験を無事に終えて早く帰って来いと願いながら眠りについた。
***
職場体験二日目───────
「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れるはずだ、しばし保須に出張し活動する!!市に連絡をしろぉ!!」
このエンデヴァーさんの指示で私達は保須市に行き、出張で活動するエンデヴァーさん達に付いていくことになった。
"ヒーロー殺し"ステインは出現した7ヵ所全てで必ず4人以上のヒーローに危害を加えている。それになにか目的があるのか、どうかはわかるないが保須市では飯田の兄であるインゲニウムしか危害を加えられていない。
その為、毎回出現した場所で4人以上のヒーローに危害を加えているのならば再びステインが現れる可能性が高い。
「なあ、飯田が行った事務所って保須市か?」
『うん、マニュアル事務所だって言ってたから確かそうだよ』
「ヒーロー殺しを追ったんだろうな」
『だと思う』
焦凍くんも飯田くんのことは気にしていたらしい。2人が話しているところは見たことは無かったので、まだクラスメイトという仲だとは思っていたけど。
「兄貴がやられてからの飯田が気になってたからな、恨みつらみで動く人間の顔ならよく知っていたし、そういう顔した人間の視野がどれだけ狭まってしまうのかも知っていたからな」
『…大人になったね』
「茶化すな」
『ごめんなさーい』
焦凍くんがムッとしたので軽く謝った。この事は体験したことがある人が言えることで、一番焦凍くんが飯田くんの気持ちが分かっているのかもしれない。そして視野が狭まっている人に対してどんな言葉が響いたのかも、焦凍くんはわかっていると思う。
けれどその言葉を伝えるにしても、タイミングとかズレてしまうと本来その人の心に響くはずだった言葉も響かなかったり、
その人が身体を呈して言ってくれたから響いたりする。難しいのだ、簡単なことなのに気づくことが。
そして伝える側もどう伝えればいいのか。
だから私は飯田くんの背中を叩くことしかできなかったのだ、私の言葉はきっと響かない。わかる気持ちは重なり合う部分はあるかも知れないけど、飯田くんの視野を広げることができる言葉なんて私は言えないのだ。
『焦凍くんなら、飯田くんの視野を広げられると思うな』
「そうか?」
『うん、そう思う』
2人で話していればエンデヴァーが現れた。
「焦凍!!ディサピアー!パトロールに行くぞ!付いてこい!」
『「はい」』
きっと飯田くんはステインを見つけたら、一人でも向かって行ってしまうだろう。どうかステインが飯田くんの前に現れる前に捕まえたい。
想像しかできないが私が敵に危害を加えられ、それでもしなつめが恨んで仇を打とうと考えたとしたら私はやめて欲しいと願うだろう。
自分のせいで弟に人を恨むという気持ちを持たせてしまったこと、そして仇を弟が怪我でもしたらとても悲しい。多分私は自分が敵に危害を加えられたことを、自分自身を恨むだろう。自分が怪我を負ってヒーロー活動が出来なくなるよりも辛いことだと思う。けれどこれは私の想像でしかないのだ。でも兄・姉の気持ちとしては重なり合う部分があると思うのだ。
私の勝手だけれどインゲニウムさんのためにも、仇なんて討たないで欲しい。
でもそんな願いは届かなかった。
その日はステインも現れず敵さえの動きもなかった。だが次の日のパトロール中、爆音が響き渡りビルを見ると爆発が起こっていた。
「焦凍!事件だついてこい!ヒーローというものを見せてやる!」
エンデヴァーさんは焦凍くんに声をかけたが、無視してケータイを見ていた。私は通知切ってるからわからんが、ケータイは見てちゃダメだぞ??
「ケータイじゃない!俺を見ろ焦凍ォ!!」
『パパを見てよ焦凍ォォオオ!!って!!!』
「言っとらんわ!!」
「めぐマネすんな、それより見ろ」
焦凍くんが見せてきた携帯の画面を見ると、緑谷くんから一斉送信でメールが届いていた。ということはきっと私にも届いているはず。でもなんでいきなり一斉送信で?それも位置情報。送ってきた相手は緑谷くん。これは
『応援…要請…?』
「だろうな」
轟は来た道を戻るように走った。
「どこに行くんだ焦凍ォ!!」
「江高通り4-2-10の細道、そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援頼む。お前なら解決出来んだろ。友だちがピンチかもしれねえ」
『エンデヴァーさん!すいません!私も行ってきます!!応援お願いします!』
そして轟とめぐは走り出した。
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