咲けよ花!

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あの後私達は病院に運ばれた。すぐに処置を受け全員入院となった。
男子達は皆同じ部屋らしいが、私は女なので違う部屋だもちろん。
病室に案内されたあと看護師さんから保護者の方に連絡をしたい、と言われたが両親はいないのでお世話になっている知り合いの方でもいいかと言った。そう言うと少し看護師さんは申し訳なさそうな顔をした。
ああいう表情をされた時、自分自身もどういう顔をすればいまだに分からない。
とりあえず、忙しい方なので連絡を入れてみて病院の方に電話をかけ直して貰いたいとお願いをする、と伝えた。

病室を出て、電話をして大丈夫なところに移動した。そして電話のアプリをタップして"相澤 消太"の連絡先をタップした。
きっと私達が怪我をしていることはもう学校には連絡は行っているだろう。なら、バタバタしているかもしれない。それじゃあメールにしておいた方が良いか、と思い電話を切ってメールにしようとしたけど低い声が聞こえた。






《もしもし》

『あ、イレイザーさんすいません忙しい時に。えっと…』








USJ事件のあと怒られたことを思い出す。前にも言われたことを守れなかった、守れなくてまた私は怪我をした。なんて言えばいいのかわからず、口をもごもごさせるしかできなかった。








《…怪我はどうなんだ?酷いのか?》

『え、えっと左腕と右脚を…でも大丈夫です!』

《そうか…お前はいつも俺が見てないところで怪我するな。警察から電話来た時、また寿命が縮んだぞ》

『うっ』






"俺を早死させる気か?"と言うイレイザーさんにそんなつもりは無いよと答えたが、たしかに心配をさせまくってる分なんとも言えない。









《でも良かった》

『うん、ごめんなさい』

《マイクとオールマイトさんにも連絡しとけよ、心配してんだから》

『うん』

《…帰ったらまた説教だ、今回も命に関わるもんじゃ無かったが何があるかわからないんだからな?わかったか》

『げ…』

《返事は》

『…はーい』

《伸ばすな、じゃあ気をつけてちゃんと帰って来いよ。また病院の方には時間が出来たら電話する。じゃあな》

『うん、またねイレイザーさん』









イレイザーさんが電話を切り、私も電話を切った。また心配をさせてしまった申しわけなさと、心配をしてくれる人がいる嬉しさで少し口元が緩んだ。そのままマイクさんとオールマイトさんにも電話した。
この2人は会話にならないレベルで心配されたし、電話越しにオールマイトさんの血を吐く音が聞こえた。ばっちい。

その日は病室に戻り、すぐ眠りについてしまった。






***




一夜明けて私は男子3人がいる部屋に訪れていた。皆どうしているのか、と気になったのだ。使われていないベッドに腰を下ろすのも申し訳なかったので、ここに座れと言ってくれた轟のベッドに腰掛けさせて貰った。







「冷静に考えると…凄いことしちゃったね」

「そうだな」

『うん』






あの時は目の前のことでいっぱいいっぱいだったけれど、少し落ち着いて考えてみると恐怖だ。







「あんな最後見せられたら生きているのが奇跡だって…思っちゃうね。僕の脚 これ多分…殺そうと思えば殺せてたと思うんだ」

『私もだよ、でも殺さなかったってことは』

「ああ 俺らはあからさまに生かされた。あんだけ殺意を向けられて尚 立ち向かってお前はすげえよ。救けに来たつもりが逆に救けられたわりィな」





その轟の言葉に少し飯田は顔を曇らせた。







「いや…違うさ俺は───…」






何か飯田が言おうとしたが、ドアが開いた。そこには昨日グラントリノの呼ばれた人と、飯田がマニュアルさんと呼んだ。





「おおォ 起きてるな怪我人共!ちょうど小娘もおったか!」





めぐは立ち上がり頭を下げた。




「すごい…グチグチ言いたい…がその前に来客だぜ」




そう言って入って来た人は、顔が犬で黒いスーツをきた人だった。きっと人、だよね?







「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」

「面構!!署…署長!?」

「掛けたままで結構だワン」









めぐは立っていたので頭を下げた。掛けたままで、と言われたが署長が来たので立っていようと思ったが脚が痛んだのでお言葉に甘えて座らせてもらうことにした。









「君たちがヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね」

『(ワン…)』

「ヒーロー殺しだが…火傷に骨折となかなかの重傷で現在も治療中だワン。超常黎明期…警察は統率と規格を重要視し”個性”を”武”に用いない事とした。そしてヒーローはその"穴"を埋める形で台頭してきた職だワン」







皆真面目に話を聞く、この部屋だけが異常な静けさだ。廊下を歩く人達の足音が聞こえる。







「個人の武力行使…容易に人を殺められる力 本来なら糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは 先人たちがモラルやルールをしっかり遵守してきたからなんだワン。
資格未取得者が保護管理の指示なく”個性”で危害を加えたこと、たとえ相手がヒーロー殺しであろうともこれは立派な規則違反だワン」












その言葉に男子3人が唾を飲んだ。
でもそれに関しては、私は分かっていたことでもあった。ヒーローでもない、資格さえも持っていない私達が”個性”を使い犯罪者と言えどエンデヴァーさんの許可なく”個性”を使用して交戦したのだ。
友達や近くにいる人がピンチだったとしても。
私達はただのヒーロー科の学校に通う高校生なのだ。





「君たち4名及びプロヒーロー、エンデヴァー、マニュアル、グラントリノ。この7名には厳正な処分が下されなければならない」

『はい』

「待ってくださいよ」







署長さんの言葉に返事をしたあと、焦凍くんが前に出た。焦凍くんは皆が動いてなかったら今頃ネイティヴさんと飯田くんが殺されていたと話した。



「規則守って見殺しにするべきだったって!?」

「ちょちょちょ」

「結果オーライであれば規則などウヤムヤで良いと?」

「──…人をっ…救けるのがヒーローの仕事だろ」

「だから…君は"卵"だ、まったく…良い教育をしているワンね。雄英も…エンデヴァーも」

「この犬───…」

『焦凍くん落ち着いて』






私や飯田くん、グラントリノさんも焦凍くんを止める。すると署長さんは咳払いをし、話し出した。これは警察としての意見だと。
処分は公表すれば、の話らしい。公表すれば世論は私たちを褒め称えるだろうが処罰は免れない、一方ではエンデヴァーさんを功労者として発表すること。それは私たちの英断と功績も知られることはないが、幸い目撃者が限られているのでこの違反はここで握りつぶせると言った。







「どっちがいい!?一人の人間としては…前途ある若者の"偉大なる過ち"にケチをつけさせたくないんだワン!?」








それなら、私達は






『よろしくお願いします』





頭を下げるしかない。
私が頭を下げると皆も下げていた。





「大人のズルで君たちが受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが…せめて、共に平和を守る人間として…ありがとう!」








そう言い署長さんも頭を下げた。






***




《ケロ、そういう事だったのね》

『うん、ごめんね。昨日のうちにメールの1つでも入れておけば良かったね』





梅雨ちゃんから電話があり、昨日緑谷くんが一斉送信した位置情報のメールの意味と今の私たちの状況を伝えた。






《いいのよ、めぐちゃんの声も聞けたのだから。怪我は心配だけれど大丈夫なら少し安心したわ》

『ありがとう梅雨ちゃん!あ、もうそろそろ休憩終わるんじゃない?』

《そうね、また学校で会いましょう》

『うん!梅雨ちゃんも頑張ってね!また学校でね!』

《ええ、安静にしてね。緑谷ちゃん達にもつたえて》

『うん!伝えとくね!!』









電話が切れたことを確認して、ポケットに携帯を入れる。久しぶりに聞いた梅雨ちゃんの声になんだか安心した。ここ数日、もちろんクラスメイトが居るのは安心できるけれど女友達と話すと、いい意味で力を抜くことが出来る。もしかしたら少し梅雨ちゃん不足で寂しかったのかもしれない。
病室に戻ろうとしたら緑谷くんがいた。ここにいるってことは、緑谷くんも誰かと電話してたのかな。





『緑谷くん、電話してたの?』

「へ!あ、久我さん!そう麗日さんと」

『そうなんだ!私も梅雨ちゃんとしてたんだ。あ、梅雨ちゃんから"緑谷ちゃんも安静にね"って!』

「あ!麗日さんもめぐさんに電話したかったみたいだけど、呼ばれてたから…」

『そっか!お茶子ちゃんにもメール入れておこう』






そのまま緑谷くんと話しながら、またこのまま男子達の部屋に行くことになった。梅雨ちゃんからの伝言を伝えたりしたら、私の診察の時間になるだろう。
そう思い軽く、男子の部屋に寄った。





『お邪魔します〜』

「はーい、あ 飯田くん、今麗日さんがね…」

「緑谷」





緑谷くんが飯田くんに話しかけようとしたら、焦凍くんが緑谷くんの名前を呼んだ。
少し飯田くんの表情が硬い。




「飯田、今診察終わったとこなんだが」

『「……?」』





飯田くんは左腕を少し前に出した。






「左手 後遺症が残るそうだ」





その言葉に何も言えなかった。
飯田くんの左腕は特にダメージが大きかったそうで、手指の動かし辛さと多少の痺れくらいなものらしいと話した。
手術で神経移植をすれば治る可能性もあるらしいが、どんなものでも少し違和感を覚えたりするのなら後遺症には代わりないのだ。








「奴は憎いが…奴の言葉は事実だった。だから俺が本当のヒーローになれるまでこの左手は残そうと思う」







飯田くんは飲み込み、駅で別れた時とはまったく違う表情をしていたことに嬉しくなった。
そんな飯田くんに緑谷くんはなにか言おうとしたが、辞めたようだった。
そして緑谷くんも右腕を見つめていた





「一緒に強く…なろうね」




なんだか2人がカッコよくて心拍数が上がる感じがする。




『飯田くんも緑谷くんもなれるよ!!私も仲間に入りたい!!』




怪我した方の右腕を出してみた、そう言えば皆手怪我してない??
焦凍くんの方を見て見たら何故か自分の手を眉間に皺を寄せた顔で見ていた。





「なんか…わりィ…」

『へ?』

「何が…」




いきなりの焦凍くんの謝罪に私たち3人の頭上には?マークだ。




「俺が関わると…手がダメになるみてぇな…感じに…なってる…呪いか?」

『「「!」」』




焦凍くんの天然発言に3人で爆笑する。






「あっはははは!何を言ってるんだ!」

『いや、もしかして私かもよ?私が関わったからかも…』

「久我さんまで何言ってるの!」

「めぐは違ぇ。緑谷は体育祭で俺と戦ってからだから、俺が原因だ。それにめぐは俺を庇ったんだから…」

『何言ってるの、ね 緑谷くん』

「うん、轟くんも冗談言ったりするんだね」

「いや 冗談じゃねぇハンドクラッシャー的存在に…」

『「「ハンドクラッシャ─────!!!」」』










この後爆笑しながら、ノリでこの4人のLINEグループを作った。グループ名は"ハンドクラッシャーとその仲間たち"だ。










───────────────────
(「おい、不吉過ぎるだろ」)
(「久我さんwww」)
(『ふ…っふふ…ふへへっふぐっ』)
(「大丈夫か!?息できているかい!?」)




この後看護師さんに怒られた。



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