咲けよ花!

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制服も夏服に変わり、期末テストまで残り1週間となった教室内では────




「体育祭やら職場体験やらでまったく勉強してねーーー!!」

「たしかに」



皆焦っていた。
特に中間テストで最下位だったらしい上鳴は叫んでおり、芦戸は諦めモードなのか笑っていた。
それを見ながら余裕そうに足を組んでいるのは峰田だ、中間テストでは9位だったらしい。



「アシドさん上鳴くん!が…頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」

「うむ!」

「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねぇだろ」




緑谷は応援し、飯田も緑谷の言葉に同意した。だが轟の言葉で、その応援の言葉の意味もなくなる。だが上から4位、2位、6位の3人に言われても上鳴はただ絶望でしかなかった。
だが八百万の鶴の一言で先が見えてきた。みんなで勉強会するぞ!っとテンションを上げていると視界に入っためぐが会話に入って来てないことに気づいた。






「久我ー…って寝てる…?」





なにやら教科書を机に広げているが、コクコクと船を漕いでいる。その頭がグワンッと前に倒れ机にぶつけそうになったが、その前にハッと目を覚ました。



「大丈夫かー?眠そうだな?」

『上鳴くん…うん、最近少しでも長く目を閉じると…こう…こんな…ふ…うに…』





なにか説明をしてくれていたが、眠気に負けたのかむにゃむにゃ言ってまた再び船を漕ぎだした。





「大丈夫か?」

『ハッ…うん、だいじょーぶ』

「夜眠れてねぇのか?」





上鳴とめぐの会話に轟も入ってきて、八百万も後ろを向きめぐを心配そうに見ていた。






『それがね、期末テストで演習試験もあるからそのね、練習を取り入れたら昨日ついつい夜勉強する前にテーブルで寝ちゃって気づいたら2時でね、慌ててその後勉教したの』






そしたら今日眠くって、と恥ずかしそうに頭をかいた。




「お忙しいのはわかりますが、そんな生活じゃ体壊しちゃいますわ」

『だねー、気をつけなきゃだ…』

「めぐ、中間順位良かっただろ?」

「マジで!?久我何位だよ?つーか、1つ聞いていい?いつから轟、名前呼びしてんの?」

『んっとねー、4位だったはず』

「だろ?そんな無理して勉強しなくても大丈夫じゃねぇか?」

「4位!?すげ!!てか、俺の質問無視!?」

『でも勉強って言っても出された宿題しかできてないんだよ』

「待って久我まで無視すんな!」









***





この前は色々とイレイザーさんに駄々をこねてしまったが、皆ヒーローになるため頑張っているのに手を抜こうなんて考えをした自分が浅はかだった。皆に置いていかれないように、そしてきちんと学校も家のことも両立させるために勉強、テストはきちんとやらなければ。
そう思い今回の期末テストでは少しでも万力鎖を使えるように、その練習を始めた。
学校が終わり、なつめを迎えに行って、ご飯やお風呂家のことをして、その間にその練習と勉強は思っていた以上にきつかった。10代の若いこの体も驚きだ。



昼休み───
普段は梅雨ちゃん達と一緒に食堂に行くことが多いが、自分はお弁当なので教室で食べその間の空いた時間に少しの勉強と仮眠をした。きっと食堂は人が多いのだろう、クラスにはまだ誰も帰ってきておらず自分も目を覚ますためにコーヒーでも飲もうと教室を出た。
その間もぽーっとしていたのか「大丈夫か?」と声をかけられた。





『えっと、B組の拳藤一佳ちゃん…だよね?』

「そうそう当たってるよ」





拳藤さんの手には何故か引きずられている確か…物真くんがいてそれに驚いて目が覚めた。え、なんで引きづられてるの?
拳藤さんは私の視線に気づいたのか「ああ」という顔をして、近くにいたB組の生徒に運んでてと渡していた。え、強い。すごく強いね拳藤さん






「どこか行くの?」

『うん、自販機に』

「私も一緒に行っていい?」




今まで拳藤とはきちんと話したことも無かったが、どうして自分と一緒に?と思ったが、これも仲良くなるきっかけになるかもと思いめぐは頷いた。
改めて自己紹介をしながら自販機に向かい、めぐは小銭を入れてブラックコーヒーを買った。学校の自販機は安いのでたまにだが利用する。
拳藤も続いて同じブラックコーヒーを買った。





「久我さんがブラック飲むって意外だった」

『そう?家ではよく飲んでるよ』

「そうなんだ、てっきり眠気覚ましで苦手だけど買ったのかと思った」




そういい拳藤はニッと笑った。食堂から教室に戻っていると、廊下に少しフラフラしながら歩くめぐを見つけ声をかけたのだ。もし保健室に行くなら手を貸そうと思っていたが、どうやら自販機が目当てだったらしい。けれど、少し心配になったので付いてきたのだ。





『ね、眠気覚ましもあるけどちゃんと飲めるよ!ブラック!!』

「わかった、わかった」




自分は無理してない!という意味を込めてかめぐはちゃんと飲めると証明してきた。少しムキになっているめぐに拳藤は笑った。めぐのことは体育祭で唯一女子の中でいいところまで行ったので、とても記憶に残っている。A組もB組も女子より断然男子の方が多い。訓練もあるが、元々の体の作り的にも男子との差を感じることも確かにある。そんな中で体育祭で久我は1度も諦めず最後まで戦い3位だった。そんな彼女に自分は憧れている。
だけどクラスも違うし、彼女はいつもどこか忙しそうで放課後に残っているところも見たことがない。最初は本当に体調が悪いのかと気になってたのがだが、今は久我と今まで違うクラスってだけで色々と話せなかったことを聞きたい。





「少し一緒にのんびりしよ」




そう言い、ブラックコーヒーを片手に2人は近くにあったベンチに座った。
自分には話しにくいかもしれない、けれど心配もしているのでめぐに寝不足の原因を聞いた。するとめぐは嫌がる素振りも見せず、家の事情までを話してくれた。両親は亡くなり弟がおり、学校のことと家のことを両立させるために頑張って入るが期末テストが近いのでどうしても睡眠時間を削ってしまう、と。





「なるほど、でも1つ情報。先輩に聞いたんだけど演習試験はロボット相手みたいだよ」

『あの入試の時にいたやつかな?』

「多分そいつら!先輩に聞いたからちょっとズルだけど、信憑性は高いと思うよ」

『そっかー、それだけでも少し心に余裕できるよ』




めぐは胸に手を当てて、息を吐いていた。



「まあ、私らクラス違うしさ何も力になれないかも知れないけどたまに一緒にこうやってブラックコーヒー片手にさ、お喋りでもしようよ」

『!女子会だ!嬉しいな、拳藤さんってほら物真くんの面倒みてるでしょ?なんかね、近親感湧いてる』

「面倒って…うん、見てんのかな」

『見てる見てる』

「でもほら久我さんもよく、轟の面倒みてない?」

『あー…それは、焦凍くんがなんだろ末っ子気質だからほっとけない…?』

「面倒見てる見てる、てかさ私のこと名前でいいよ、一佳って」

『それなら私も名前で呼んでよ』

「わかった、じゃあめぐそろそろ戻る?」

『戻ろっかー』





自販機の横にあったゴミ箱に空き缶を捨て、一緒に教室に戻っていく。コーヒーのおかげが、少し余裕を感じられたからか午後の授業で睡魔は襲ってこなかった。

授業が終わり昇降口で上履きからローファーに履きかえていると、名前を呼ばれ振り返った。そこには蛙吹と麗日、緑谷と轟が走ってきておりそれを飯田が早歩きしながら「廊下は走らない!」と注意していた。





『どーしたの?』

「あのね、めぐちゃん皆と話し合っていいたのだけど」

「今度の日曜日勉強会せぇへん!?」





麗日がグワッと前に出てきて言った。後ろの3人も頷いている。




「日曜日忙しいのは知っているんだけど、少しの気分転換と」

「2位、4位、6位の人達がおるからわからんところあったらすぐ聞けるし!」






麗日が飯田、緑谷、轟を指さす。確かに前世からやってきた五教科は今のところどうにかなっているけれど、今世で習ったことに関しては分からないところがある。それをいちいち調べ直しても時間もとるし、やっぱり理解出来なかったりするのだ。
けれど日曜日に自分をが家を開けてしまうと、誰かになつめのことを預けなきゃならなくなる。いや、でもこれだったら…







『皆に提案があるのですが!』

「なあに?」

『勉強会を私の家でやりませんか!』






私の家ということは弟もいるけどそれでもいいなら、家に来ないかと提案した。
その提案に麗日が主に飛びついた。





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