咲けよ花!
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死柄木はご機嫌だった。だって今まで胸につっかえていたものが無くなったのだから。
なんでヒーロー殺しがムカつくのか、
緑谷出久を鬱陶しく感じるのか、
それがわかったのだ。緑谷出久と話をして良かった。
それは全部オールマイトだったのだ。
全部、全部、全部、全部、全部、全部。
死柄木は口角を上げた。
その時乾燥した唇が割れたが気にもならなかった。
死柄木は録画されている雄英体育祭の映像を見る。
画面に写っている雄英の生徒の1人、その女はコロコロと目の色を、感情を、違ったものを自分に見せる。
初めてあった時の死の恐怖も感じないような、自分に怯むことも無く見る目。
その後に見た、ボロボロになっていく教師を心配する目。
体育祭で上に上がろうと、勝とうとする目。
保須で見たヒーロー殺しの殺気を当てられ怯える目。
そして今日見た、多分あいつの弟だろう。そいつと話す時の優しい目。
あの表情を見た瞬間、自分の中の羨望という気持ちが全て湧き上がって来たのを感じた。
羨望という感情に体すべてが乗っ取られ、うっかりあの子供を殺しそうになった。
その時自分と子供の間にアイツの手が入ってきた。
死柄木は右手を触り、深く息を吐いた。
さて、これからどうしようか。
もうこれから先のことについては何も悩むことはない。今から悩むのは久我めぐをどうやって自分のモノにするか、だ。
《楽しそうだね、死柄木》
先生の声が聞こえた。それに死柄木は笑いながら頷いた。何度も。何度も。
「欲しいものがあるんだ先生──俺のモノにしたい。欲しいんだ先生、どうしたら俺のモノになるかなぁ?」
死柄木は笑う。欲しい、欲しいと笑う死柄木はとても楽しそうなのだ。