咲けよ花!

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「へーじゃあ林間合宿先は行ってみてからのお楽しみって感じなんだ」

『そうそう』

「確かに死柄木と接触したならそれが一番いいかもね。でもいいな、林間合宿か」





心操は壁に寄りかかる。今までなかなかすれ違って直接顔を合わすことはできなかったが、ちょくちょく心操とは連絡を取っていた。職場体験の話とか、今ヒーロー科は授業でどんなことをしているとかを。そして夏休み前にたまたま廊下で会えた心操と話をしていた。主に期末テストのことと、この前のデパートで緑谷と死柄木が接触した話だ。

めぐは横に立っている心操を下から上までみる。あの体育祭の時と比べて、体付きが変わっている。








「…そんなに見られると困るんだけど、変態?」

『いやー筋肉付きましたね、人使さん』

「変態否定しないのかよ…まあね、体作りしてるから」

『ちょっと失礼…ほ、お腹カチカチやないですかお兄さん』









ペチペチと制服の上からお腹を叩けば硬かった。めぐは自分のお腹と比べる。
腕も前より筋肉がついているのに、めぐは夢中になって触る。






『すごい…かっこいい…』

「今なら久我を放り投げれる気がする」

『なんで投げるのよ』

「いや、体育祭で爆豪に放り投げれてたのが結構印象強くてさ」





体育祭で爆豪vs久我の試合で、爆豪に片手で腕を掴まれ、もう片方の手は”個性”を使い、めぐはその威力で爆豪に放り投げれたのだ。あの時は咄嗟に”個性”を使って場外を免れたが。




『あれはね爆豪くんの”個性”もあったから放り投げられただけでね。そんなに私細くないから』

「だいぶ簡単に折れそうだけど…てか、いいの?」

『うん?』






心操が指さした方を見ると轟がいた。どこか少し不機嫌な気がするのは気の所為なのか…どうなのか。
めぐと轟の目が会えば轟がこちらにやってきた。







『どうしたの?焦凍くん』

「昼休み終わるけど、次移動教室だぞ」

『そうだっけ?!うわ、ごめん人使くん!また連絡するから!』






何も教科書もノートも準備してないめぐは、慌てて教室に戻ろうとするのを心操は腕を掴んで引き止めた。






『おっ』

「今度さ、組手とかしてみたいんだけど練習あいてになってくれない?」

『いいね!それ賛成!じゃあ、その事についてもまた連絡するね!』

「うん」





手を振りながら教室に戻っていくめぐと、先程よりもっと機嫌が悪い表情になった轟を見ながら心操は口角を上げた。









『あれ?焦凍くん、まだ昼休み残り15分あるよ?』

「…みまちがえた」

『焦凍くんもそんなことあるんだねぇ、どうする?ゆっくり一緒に教室行く?』

「行く」






…………







終業式の日まで詰め詰めに授業があり、夏休みが始まって林間合宿当日となった。
今日は天気がよく、太陽がサンサンだ。






『それじゃあオールマイトさん、マイクさん、なつめのことお願いします』

「勿論だよ、めぐも相澤くんも気をつけてね」

『はい!』

「任せとけって!!今日は俺と一緒に保育園に行こうぜなつめ!」

「うるせぇ、マイク」

『なつめも、お友達と仲良くね?』





なつめがぎゅうっと制服のスカートを握ってきたので、目線を合わせるようにしゃがんた。






「お姉ちゃん、ちゃんと帰ってきてね?」

『もちろん!ちゃんと帰ってくるよ!』







なつめを抱きしめて頬をスリスリした。抱き締め返してくれるなつめは少し寂しいのかも知れない。今ここで"ごめんね"と言ってしまったら、これが悪いことになってしまうのでその言葉は言わないようにしている。





「めぐ、そろそろ行くぞ」

『それじゃあ、いってきます!』

「「いってらっしゃい!」」




めぐとイレイザーが出ていった後、なつめはベランダに出て2人の姿を眺めている。




「なつめ、どうしたの?」




オールマイトが声をかけるが「なんでもない…」と返しただけだった。






***






「え?A組補習いるの?つまり赤点取った人がいるってこと!?ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組より優秀なハズなのにぃ!?あれれれれ!?」



グラウンドに集まった途端、A組に絡んできた物間くんに若干引きつつも一佳が静かにさせ「ごめんな」と謝ってきた。苦労してるのね。




「物間怖」

「体育祭じゃなんやかんやあったけど まァよろしくねA組」

「ん」

『こちらこそよろしくね』




なかなか関われないB組の子達の関われる機会だし、女子は少ないのだからぜひ仲良くしたい。そんな会話をしているとバスが到着し、飯田くんが指示を出した。
B組の女子を見ながら大量の涎を垂らしている峰田くんを見て見ぬふりをしつつ、バスに乗りこんだ。
バスは残念ながら2人ずつの席に一番後ろだけ5人が座れる席だ。
どうしても1人余るので私は、右側に梅雨ちゃんとお茶子ちゃん。左側には百ちゃんと響香が座る間の補助席に座った。






「久我…俺たちのとこに来いよぉ」

『いや…怖いからいい…』





五人掛けの席に座っている峰田達に呼ばれたが、峰田くんの顔が怖いので私は補助席に座った。



「めぐさんキツくなったら言ってくださいね?」

「うん!順番で変わるのありやね!」

「なんなら俺が変わってもいいぞ?」




上から百ちゃん、お茶子ちゃん、焦凍くんが声をかけてくれた。




『皆ありがとうね、でもここの方が皆と話しやすそうだし大丈夫だよ』





最初飯田は出席番号順に並ぼう!と言ったが誰も言うことは聞かず、好きなもの同士ということになった。バスも走り出し、皆のテンションが徐々に上がってきており、車内が騒がしくなってくる。





「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」

「席は立つべからず!べからずなんだ皆!!」

「ポッキーちょうだい」

「バッカ夏といえばキャロルの夏の終わりだぜ!」

「終わるのかよ!」

「しりとりのり!」

「りそな銀行!う!」

「ねぇ ポッキーをちょうだいよ」

「ウン十万円!」





皆元気だなぁっと周りの声を聞いていたが、相澤が後ろを振り返りなにか言おうとしていたのに気づき、めぐはアイコンタクトを取るがなにか諦めたような顔をして"気にするな"と口パクし相澤は前を向いた。






『?』

「めぐちゃんポッキー食べない?」

「うち飴あるよ!飴!」

『ありがとう!私もチョコ…梅雨ちゃんと被っちゃったけど…』

「いや!チョコ貴重やでめぐちゃん!ありがとう!!」








お茶子ちゃんと梅雨ちゃんにお菓子をもらったので、お返しにチョコを渡し百ちゃんと響香にもお裾分けした。







「チョコちょうだい」

『青山くんどうぞ〜焦凍くんもどうですか?』

「いや、いい」

『甘いの苦手?緑谷くんチョコ食べれる?飯田くんも良かったら貰ってくださーい』

「いや食べれるけど」





緑谷くんにチョコを2つ渡して、飯田くんにもお裾分けした。それから前の方にいる透ちゃんと三奈ちゃん、それに自分で1つ食べたら残り1個になった。








『焦凍くん、口開けて?』

「あ?」







焦凍くんの肩を叩けば素直に口を開けて私の方を向いたので、ラスト1個のチョコを焦凍くんの口の中に入れた。










『はい、チョコ完売でーす』

「なんで入れたんだ」

『ただ単に興味本位だよ、ね 爆豪くん』

「なんで俺に話振るんだよ、馬鹿か」

『なんで話を振っただけで馬鹿呼ばわりされたのか…解せぬ』








あれから周りの皆とお喋りしていたが、いつの間にか眠ってしまっていたらしくお茶子ちゃん達に起こされた。
どうやら休憩所らしく、皆降りれと相澤先生が言ったらしい。
バスから降り、固まった体を解すように背を伸ばした。
ところでここには何も無いけれど、本当に休憩所なんでしょうか。




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