咲けよ花!

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林間合宿先へ向かう途中に休憩だと言われ、降りた場所はパーキングエリアでも無く、トイレさえもないただ広い場所だった。


「ねえアレ?B組は?」


同じ合宿先へ向かうB組のバスも無く、B組の子達の姿も無かった。





「何の目的もなくでは意味が無いからな」

『え?』





相澤の言葉に聞き返したが返答はなく、現れた女性に声を掛けられ、相澤は頭を下げた。




「煌く愛でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」




セリフにポーズ、そしてフリフリの衣装を見て日曜日の朝にあるアニメを少しめぐは思い出した。そして横を見るとなつめと同じ歳ぐらいの男の子が居るのに気づき、めぐは手を振ったが顔をそらされた。






「今回お世話になるプロヒーロー"プッシーキャッツ"の皆さんだ」





そう相澤が紹介したあと、緑谷のオタク知識が発揮された。どうやらキャリアは今年で12年になるらしいが、緑谷は口を塞がれピクシーボブは「心は18!」と叫んだ。






『うん、年齢のことは言っちゃダメだよね』

「どうした久我?顔がマジだぞ」




隣に居た切島に突っ込まれた。精神的年齢はとっくの昔に16歳を過ぎた見た目は女子高生、頭脳は[自主規制]のめぐはピクシーボブの気持ちが、なんだかわかったような気がした。

めぐが年齢の話に内心ドキドキさせていると、マンダレイが口を開いた。






「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊先はあの山のふもとね」

「「遠っ!!」」







マンダレイが指さした場所に、宿泊施設なるものが見えずただただ山が広がっていた。
疑問に思う者、既に察した者や皆が皆、様々な反応をし始めた。





「え…?じゃ、じゃあ何でこんな半端なとこに……」

「いやいや…」

「バス…戻ろうか…な?早く…」








そんな生徒達の混乱と疑問を無視し、再びマンダレイは口を開いた。







「今はAM9:30、早ければぁ…12時前後かしらん」

「バスに戻れ!!早く!!」






皆に伝えるように叫び、バスに戻ろうとした切島は近くにいためぐの腕を掴んだ。なのでめぐは近くにいた蛙吹と轟の腕も掴んだ。










『もう仕方ないよ、諦めようよ切島くん。』

「なんでそんな冷静なんだよ!!」

『もう相澤先生が担任の時点でこういう運命だったんだよ、それに自由がモットーの雄英…さあ!そんな雄英の校訓は?焦凍くんせーの「プルスウルトラー」』

「なんなんだよお前らは!」

「落ち着いて切島ちゃん、めぐちゃん混乱してるのよ」

『HAHAHA!!』












相澤とクラスの誰よりも長い付き合いのめぐは、想像が鮮明にできる未来に絶望した。それと相澤が真面目かつ真剣に、私達に試練を与えてくることも。今回のような少しふざけたような試練でも、相澤はふざけている訳でもないことが分かるので心の中で泣いた。











「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」








切島に引きづられながら若干諦めモードのめぐは、地面が響いていることに気づき下を見ると地面の形状が変わる。






「わるいね諸君」







雪崩のような土に変わって行き、生徒達をのみこんで柵の向こう側に土諸共落下していく。










「合宿はもう始まってる」















「私有地につき”個性”の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この"魔獣の森"を抜けて!」










土がクッションとなり体に痛みは走らなかった。めぐは制服のポケットを探り、お守りがあることを確認して息を吐いた。
周りを見渡すと、口の中に土が入った者は多数いたが怪我をしている人は1人もいないようだった。そんな中、峰田が1人先に森の中に入って行ったが峰田の目の前によく分からない生物がいた。






「「マジュウだーーーーー!?」」

『え、まじゅう?』

「静まりなさい獣よ 下がるのです」

「口田!!」








口田が”個性”を使い魔獣の動きを止めようとしたが、口田の声には反応を見せず襲いかかろうとしてきた。






『口田くん!』






口田の元まで"飛び"、口田に触れて距離を取るために再び"飛んだ"。その瞬間、緑谷・爆豪・轟・飯田が飛び出し魔獣を破壊した。どうやら魔獣は土でできたものだったので口田の”個性”を使っても動きを封じられなかったらしい。
なるほどだから"魔獣の森"なのか、と納得した。先を見るとまた次の魔獣が現れた。








***








めぐは主にサポートに回った。魔獣を破壊するためには、魔獣に触れなければいけないのでそれでは効率が悪いし、今ここで怪我でも歩けなくなったら周りに迷惑をかけてしまうので攻撃力の高い人達に任せた。
左手首に付けてある腕時計を見ると、とっくの昔に12時なんて過ぎており今の時間は16:12分だ。周りを見ると疲労困憊、そして育ち盛りの子達には1番キツいであろうお昼抜きが1番効いているハズで皆お腹を空かせていた。
だがこの状態でも、今は誰一人文句も言わずで喧嘩も始まらないからそれについて良かったと思った。まあ、お腹が好き過ぎてそんな元気もないのかも知れないが。少し痛む頭に手を添えながら、前を見た。






『あれ…?』






木々の隙間から白い建物が見えた。こんな森の中で白い建物が自然にあるわけがない。







「どうしたんめぐちゃん…」

『あの白い建物…もしかして宿泊施設かな?』

「え!ほんま!?」





肉眼ではまだまだ遠いが、確かに建物がある。その真相を確かめるために、お茶子ちゃんは私に触れて浮かばせた。
浮かび上がっていく感覚にちょっと興奮と、緊張が混じりあわせながら木の上に行くと白い大きな建物が見えた。きっとあれが宿泊施設で間違いないだろう。






「ケロッ」

『ありがとう梅雨ちゃん!お茶子ちゃん大丈夫!?』

「だ、大丈夫…っ!うぷぅ」





梅雨ちゃんの舌が私の体に巻き付き、地面に下ろしてもらいお茶子ちゃんの”個性”も解除された。お茶子ちゃんは指を立てるが、全然表情は大丈夫ではなさそうだ。







『あれが宿泊施設で間違いない!はず!』

「まじか!でもまだ距離あるくね!?」









上鳴くんの言う通り宿泊施設は見えるのだがまだまだ遠い、宿泊施設が見えてきたことに喜びもあるがまだまだある距離にテンションが下がっていくのもわかる。
めぐは考えた、宿泊施設が見えているので"飛べる"。あとは皆と一緒に、一気に"飛ぶ"ことは今までやったことが無い。だけど






『ちょっと皆に提案が…』






めぐは手を挙げて言った。
はじめての事なので成功するかもわからない、そう最初に伝えたが皆は目をキラキラさせて、あるいはちょっと涙目の子もいて「「お願いします!」」と言ってくれた。










『じゃあ一気に飛ぶから皆周りの子に触れるか手繋いでね、ほら爆豪くんも』

「ああ!?」





周りの子達は素直にいうことを聞いてくれ、で繋いでくれるが一向に爆豪だけいうことを聞いてくれないので右手で服を掴んだ。そして左手で焦凍くんと手を繋ぐ。





「離せやテレポート女!」

『皆手繋いだかな?準備はいい?』

「「はーい!」」






施設を視界に入れ集中する。なのに隣にいる爆豪くんが「聞いてんのか!」やら「クソが!!」と言いながら暴れ回る。





『10秒で良いから大人しくしなさい!集中出来ないでしょ!?』

「…チッ」

「「(爆豪がいうこと聞いた!?)」」






その事実に驚きながらもめぐの『"飛ぶよ!"』の言葉が聞こえた次には先程まで見ていた森の中の景色ではなく、白い建物とその前には相澤と先程会ったプッシーキャッツが居た。はじめてのテレポート体験と、宿泊施設にたどり着いたことで、心の中ではテンションがあがるが体は言うこと聞かずでヘロヘロだった。






「何が"三時間"ですか…」

「腹へった…死ぬ…」

『うぐぅ…』

「久我さん!?大丈夫!?」






どっと疲労感と頭痛に襲われ、地面に転がった。初めてやって成功は嬉しいけど、体の不調は喜べないな。緑谷くんの言葉に手を振って返すことができない状態のまま転がっていたらどんどん話が進んでいく。




「ねこねこねこ…でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった、いいよ君ら…特にそこ4人。躊躇の無さは経験値によるものかしらん?」







そう言うと「3年後が楽しみ!ツバつけとこー!」と、本当に4人にツバを付け出した。「"マンダレイ"…あの人あんな人でしたっけ」と相澤が聞き、「彼女焦ってるの適齢期的なあれで」と答えていた。うんうん、大人は色々大変だと同意した。
すると緑谷くんが、プッシーキャッツの皆さんと一緒にいる小さい男の子について聞き始めたので私もその男の子を見つめる。するとマンダレイさんの従甥らしい。




「洸汰!ホラ挨拶しな、一週間一緒に過ごすんだから…」

「あ えと僕 雄英高校ヒーロー科の緑谷 よろしくね」





緑谷くんが洸汰くんのそばに行き自己紹介をして、手を出したがその手に洸汰くんは触れず緑谷くんの急所を殴った。




「きゅう」

「緑谷くん!おのれ従甥!!何故緑谷くんの陰嚢を!!」




飯田くんが駆け寄り、去っていく洸汰くんに声を掛けたが「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」と言って、行ってしまった。





「マセガキ」

「お前に似てねぇか?」

『爆豪くんの幼少期ってすごい想像つくよね』

「あ?似てねぇよ つーかてめェ喋ってんじゃねぇぞ舐めプ野郎!お前もいつまで地面に転がってんだ!」

「悪い」

『いやもう、地面とお友達だわ私










そう話していると相澤先生が注意し、バスから荷物を降ろすように指示した。
皆がバスに向かう中、私は洸汰くんのあの表情が忘れらずさっきまで寝転んでいた地面に座り込んで洸汰くんが去っていた場所を見つめた。子供らしからぬあの表情、周りの人たちを見る目が敵を見るような目で、あんな小さい子がする理由はなにがあるんだろうか。






「久我」

『!は、はい!』

「…荷物降ろしに行け、時間は有限」

『御意!!』




ビシッと敬礼して、慌てて荷物を取りに行った。イレイザーさんが私の表情を見ていることに気づかなかった。





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