ange
□名前
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元いたところから浚われるように連れてこられ、肩が落ちるどころでは済まされないほどの荷を背負わされた。しかし、いざ肩の荷がなくなってしまえば誰もに見送られ、そして二度と戻ることのできない幻の地。
「へえ。不思議なところからやってきたんですね」
「ああ、不思議なところだったな…」
隣で屈託なく笑う女。
最初は旅の途中に宿屋で出会った。
自分が働いた結果なんてものを見るために一生をかけての旅…なんて当てもなく宇宙を巡るうちに、自称冒険者の彼女は意外な場所であればあるほどよく出没した。
現に
「ここも不思議な場所だな」
「そうですねー」
標高数千メートルの霊山。その頂上に位置する、樹齢もわからないような大木の最上部付近の割としっかりした枝の上。
「いいんですか?」
「何が、だ?」
「一応霊木らしいですよ。この木。登っちゃったりしてバチが当たりませんかね?」
「…その割に、降りる気はさらさら無さそうだが」
彼女は笑顔のままだ。日に焼けた健康そうな頬から視線を下ろして、自分の両手を見つめてみる。自炊したり、怪我をしたり、己が何かを成す度に固い皮を巡らせていった。節がはっきりして彼女の頬同様に日焼けした指のラインをなぞる。