ange
□fish
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fish
午後の穏やかな日の下、川面のせせらぎに耳を傾けながら、名無しさんとルヴァは釣りを楽しんでいた。
楽しんでいたといっても
「おや、また釣れました」
糸を持ち上げてにっこりと笑うルヴァとは対照的に、名無しさんはじとりとした目つきで隣に座る男を見ていた。
彼女の手元の釣竿は、一向に引かれる気配はない。
「…何匹目ですか?ソレ」
「えーと…」
ぴちり、と小さく身を震わせる魚の口から糸を外し、元の流れに放し終え、餌を付け替えて、糸を垂らし、ルヴァは首をかしげた。
「はて、何匹目でしょう…?」
「7匹目です」
はあ、と息をつく名無しさん。
「なんで、ルヴァ様ばかり釣れるのかな…」
「あー、慣れですかねえ」と笑うルヴァの釣竿がまたひかれている。
「ああ、もう…」
名無しさんも意地になって足を組みなおすと、釣竿を強く握り締めた。
「おや、二匹も釣れました」というのんびりした声は聞こえない振りをして、彼女は釣りに没頭することに決めた。
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