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□言喪
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◆虚夢の元就サイドストーリーです。
空にいくつもの紫煙が昇る。
天幕から出ると累々と連なる屍の上でまだ命ある者たちが刃を交わしていた。
吹く風に紛れて口に入った砂利を吐き捨てた。
戦況は不利だった。
自軍の旗は少なくなってきており、傍目にも敗色が強いのがわかる。
だが、思いのほか心は落ち着いていた。
ひとまずどう退路を切り開くか。
それをこれから考えようとしていたときだった。
視界の隅に鮮やかな色の着物が見えた。
我は駆けた。
確認するまでもない。先に安芸へ返したはずの恋仲の女だった。
どうしてここに残っているのかを考えるよりも、女に向かう凶刃を退けることを優先した。
体へ重い衝撃が走ったが、構わず兵の首を飛ばした。
温かい体が腕の中で震えている。
「元就さ、ま?」
呆然とした女の声が聞こえた。
「聞け」
誰がとうみても胸を貫いた我の傷は致命的なものだった。
激しい痛みとこみ上げる息苦しさに負けじと口を開く。
「この戦は、負けぞ」
我がこの命を投げ出し、女を救ったときから分かりきったことだった。
口の端から堪えきれず血を吐いたが我はまだ言いたいことがあった。
『 』
我の意識はそこで途絶えた。
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