Novel

□Charm
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 未明、ラボに戻ったコワルスキーは我が物顔でサイドボードへ腰を預けている異形の姿に見惚れ二の句が告げなくなった。濡羽色の毛並みと対照的な真白の肌、氷山のように鋭く冷たい薄縹の瞳、背中から覗く禍々しい羽翼、頭部に生えている捻れた双角、肉感的な臀部から伸びる細身の尻尾。獲物と定めた対象を決して戻ることが叶わない悦楽に引き摺り込み、自身が飽きれば躊躇なく砂へと砕く残酷で冷血な美しい魔族、淫魔。書物の中で脈々と語り継がれてきた魔物は存在を誇示するかのように黒い影を刻んでいた。

「よお、元気そうだな」

 親愛の情に声を弾ませ淫魔はコワルスキーの眼前へ移動する。そして無遠慮に彼の身体へ触れると、するすると翼を下肢へ伸ばし始めた。唐突な行動に目を見張りコワルスキーは狼狽を隠せなかったがそれでも奔放過ぎる淫魔を何とか諫めるべく肩を押し返す。

「ちょっ、ちょっと、待っ……! 待ってください! 貴方がどうしてここに……っ!?」
「小腹がすいた」
「だ、だからって、急にそんな……!」

 微塵も悪怯れる様子なく淫魔は下腹部を撫で回し続け、自制を掲げるコワルスキーの意志とは裏腹に陰茎は血を滾らせた。我が意を得た淫魔の口元が笑みを形作り、根元から先端へと肉茎の輪郭を翼でなぞる。控え目な手付きにも関わらず痺れるような快感が背を走りコワルスキーは低く呻く。

「ふふ、こっちも相変わらず元気そうだな」

 耳へ届いた愉しそうな声音に火が点いたのではないかと錯覚する程コワルスキーの頬が熱くなる。淫魔は静々とその場に跪き粘性の花弁が獲物を誘引するような仕草で嘴を開く。そうして、ぱっくりと亀頭を呑み込んだ。

「ぁ、たい……っひ、ぃ! あっ!」

 赤らんだ亀頭を飴玉のように舌で転がし唾液を塗していく淫魔の口腔は蕩かさんばかりに熱い。跳ね上がる陰茎を物ともせず鈴口に舌肉を吸い付かせ溢れた先走りを啜る。肉悦の炸裂が間近に迫り、幾らなんでも早過ぎるとコワルスキーは汗を滲ませた。


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