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□飽きるまで続く茶番劇
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なんだろう
なんなんだろう、この状況。

ただ寝てただけなのに、なぁんで横になった体制で轟君に後から抱き締められる形になっているんだろう。

尚且つなぁんで、目の前に肘を床につけ横になってこちらをずっと睨み続けている爆豪君がいるのだろう。

「…死ね」

「なんで!?」

なんとも理不尽じゃないか。
私はただ、休日の昼寝を楽しんでいただけだ。そこに乱入してきたのは君達の方じゃないか。どう考えても、死ねと罵倒される筋合いなんてない。

「……なぁんでてめぇはこいつを退かさねぇんだよ」

「や、起こしちゃ悪いし……」

「絵面的にやべぇってのが分かってんのかてめぇはよぉ…付き合ってもねぇ男女がそんな形してるって普通じゃねぇだろうが……どこぞの甘ったるい小説だか少女漫画でもあるめぇしよぉ…」

「どうやったら起こさず退かせれるかな…」

「普通に起こせや」

この状況の元凶である轟君は全く起きる気配も無い。
というか、まず何故私の部屋にわざわざ足を運んだのだろうか…
彼が来た時に驚いたので、理由はちゃんと聞いたが「悪ぃ…眠いんだ。この部屋が個人的に1番落ち着くから、睡眠の空間としては最適なんだ」と言っていた。
クラス屈指のイケメンボーイの轟君があまりにも眠たそうな目をしていて、なんというか、うん。言葉を選ばずに言うと可愛さにやられて どうぞ と部屋の中に彼を入れたのだ。

こちらの部屋の方が落ち着くというから、この部屋で寝るだけだと思っていいたのだけれど、何でか自然に私も横にならされて、自然に後から抱き枕のごとく抱き締められた。
なんだこれ手慣れていらっしゃる……

そんでもって、更に追い討ちをかけるように何でか爆豪君までもが私の部屋をほうもんしてきて、まぁ……言うまでもなく今の私の状況を見て固まったのだ。
違うんだ、誤解なんだと口に出す前に バァンッッ!と勢いよくドアが閉められ、すっごい形相で(顔すげぇ…)こちらを睨みながら
「校内では恋愛禁止じゃボケ!」
と意味の分からない事を言って今の状況に至るわけだ。(本格的に爆豪君も壊れてきていらっしゃる)

「仕方ねぇ、俺がこいつを引き剥がしてやる。オラ!腕離せや半分野郎!」

グイグイとなんとも強引に轟君の腕を引っ張る爆豪君。
結構な力でやってる筈なのに、何故か轟君の腕は離すことなく寧ろ……

「いでででで!ーっっなんかっ!なんかさっきより抱きつく力強くなってるんですけど!」

「あ"ぁ"!?」

「………」

「………おい、半分野郎。てめぇ起きてんだろ」

「……起きてねぇ」

「起きてんじゃねぇか!」

うわぁ!轟君、頭良いのに馬鹿だ!

爆豪君に問い詰められて、ようやく起きていた事を認めた轟君。
まじで何したいのこの人。

「てっめぇ何で本人に許可無しで名無しさんに抱き着いていやがった!」

「?抱きつきたかったからだ」

「お前頭湧いとんのか?名無しさんが困惑してたの見てねぇのかよ!」

「……嫌だったのか?」

あーなんだこれ、なんか捨てられた子犬みたいななんとも言えないキュンてくる雰囲気を漂わせてこちらをジッと見つめる轟君。
これ仮に嫌だったとしても嫌だったって言えないやつだ。嫌じゃなかったけど!

「あー……まぁちょっとビックリしたけど、別に嫌じゃなかったよ」

「そうか、なら良かった。悪かったなイキナリで」

「なに嫌じゃなかったよとか言ってんだてめぇはよ!何だこの雰囲気!甘ったりぃ!!!!」

「なぁ爆豪、やっぱりこう、イキナリ部屋に押しかけて抱きつくってのは良くねぇのか?」

「ったりめぇだわ!!付き合ってんならまだしも、カップルでもなんでもねぇくせにイキナリ抱き着きにかかってんじゃねぇよ!気持ち悪ぃわ!」


「……付き合えばいいのか…」と顎に手を置いて考え事をした轟君。
ふと何か思いついたような表情をしたかと思えば、今度はおとぎ話に出てくる王子様の如く膝を床につけ、私の手を取った。

「付き合ってくれ、名無しさん」

「……へ?」
「……は?」

「好きだ」

「待てや、ちょっと待てや。半分野郎、てめぇ体目的で告白してんのか?」

「違う、名無しさんの事は前から好きだった。好きじゃなかったらわざわざ何回も部屋を訪問しねぇだろ」

「っっざっけっ………!んなら俺だって好きだわ!俺だって好きじゃなかったらわざわざ部屋の訪問なんてしねぇわ!」

まさか、凄く唐突に話の流れで二人からの告白を受けるとは思わなかった。
あれこれ夢じゃない?夢だったりしない?

ぽかんと、状況に追いつけていない私を他所に、轟君と爆豪君の口論はどんどんヒートアップしていった。
どうやら、どっちが先に私を落とすか。という結果になったらしく、

「っし、ぜっっってぇ落とすかんな。覚悟しとけや」

「安心しろ名無しさん、名無しさんは俺が守る」

なんて、ベタな台詞を言い放たれた。


どうしてこうなった
(何だこの展開)

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