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□白いページは白いまま
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ここ最近、やけに胸が痛ぇ。
胸が痛ぇっつっても、身体的にというよりかは精神的にの方が近い。



「でさ そしたらデク君、凄く面白い顔してたんだよ」


ニコニコしながら俺に世間話をする名無しさんは、いつからか俺の想い人となっていて、同時に叶わない恋をしてるんだと自覚した。

名無しさんは………緑谷が好きだ。

いや 実際に彼女の口から聞いたわけではないが、口を開けば緑谷の話題ばかりで それでいてふとした時に彼女は緑谷の事を遠目で見ていたりする。(かく言う俺も、惚れた弱みなのか名無しさんの事を見てしまうわけだが…)


「そうか」

なんてことない装いで相槌を打って、俺はあまり聞きたくない彼女からの緑谷の話を聞く。

会話の内容が緑谷の事と言えど、例え叶わぬ恋だとしても、彼女とのこういった時間は自分にとって大切なんだ。


何故折れねぇのかって。不思議に思われるかもしれないが、理由は名無しさんもまた俺と同じ状況にいるって事を知っているからだと思う。


緑谷は麗日が好きで、麗日は緑谷が好き。


正式に付き合ってるわけでもない2人だが これはクラスの全員が自然に感じ取れる程、分かりやすく、緑谷達の反応からしても明らかだった。

それも、名無しさんは十分に分かっている筈だ。

だが、彼女も俺と同じように 緑谷との少しのひと時を大切にしたいんだろう。
それはある意味、苦しいだけかもしれねぇのに。(俺も言えた口ではないがな)


クラスで名無しさんが緑谷の事を好きだってのを知っているのは、多分俺だけだ。
名無しさんは俺にしか、緑谷の事についてああいう風に話していない。

それは何故なのか明確には分からないが、いつか名無しさんから直球に緑谷の事が好きだなんて話をされたら、ちゃんと対応出来るのだろうか…



「……名無しさん…」

「ん?」

「…………いや、何でもねぇ」


名無しさんが緑谷に気持ちを伝えたいように、俺も名無しさんに気持ちを伝えたい。

「変な轟君ー」


へにゃりと笑う彼女に、"いっそのこと、俺にしろよ"なんて伝えられたらどんなにいいか。


白いページは白いまま
(お互いが、苦しいままだ)

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