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□失われるならいっそこの手で
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※かっちゃんがかなり暴力的


「………他に好きなやつがいるから、だったか?」

「っー………」



痛みに顔を歪める名無しさんは なんてぇか、こう、キた。

人が苦しんでる様を見て、興奮を覚えてしまっている俺は多分末期だわな。
前にヴィラン連合に誘拐された事があったが 、連中はきっと俺にヴィランの素質があると見込んでの事で攫ったんだろうが、最早否定出来ねぇ。

まぁ、仮にこれが名無しさんじゃなく別のヤツだとしよう。
その状況ならば興奮を覚える事はないだろうし、何しろ胸くそ悪ぃだろうな。


じゃあ何で、名無しさんにだけこんな感情になってんのかって。


答えは案外簡単に出ていた。


「誰だ?デクか?半分野郎か?」

「爆豪君、痛い、」

「ちゃんと質問に答えろや、それとも何だ?もっと痛ぇ思いしたいんか?あ"ぁ"ん!?」

「……言いたく、ない」


随分と反抗的な態度をとりやがる名無しさんの頬に、そっと手を添えてやれば面白い程にカタカタと震えた。

そんな姿にさえも愛おしさを感じてしまうってんだから、本当にどうかしちまってんだと自覚する。


俺は、コイツが好きだ。


性にあわねぇが、恋愛対象として。


それで意を決して告白したが、まぁアレだ。

"他に好きな人がいるから気持ちには答えられない"なんだとさ。

そんな言葉を口にしちまうからよ、俺は何かが切れてこうなっちまってんだ。
ある意味、俺も被害者だよな?


「……一丁前に強がってんじゃねぇよ、クソが」

「っ……!」


声を出すスキも与えず、名無しさんの口を塞いだ。

最初こそ普通のキスだったが、徐々に舌を入れてやれば余計に名無しさんは暴れた。

まぁ、名無しさんの顔に手を近づけ爆破の合図であるチカチカとしている光を見せてやれば一瞬で大人しくなったがな。(チョれぇ)


「っは、………悪くなかっただろ?」

「っー……最っ低…」


涙が溢れて、顔がくしゃくしゃになる程泣いている名無しさん。

あぁ、すっげぇその表情そそる。

「……大人しくしてろよ」

もうタガが外れて、名無しさんの服に手をかけようとしたら案の定名無しさんは全力で抵抗した。


「ざっけーっ!……やだ、誰、か!助けっー…」

「うるせぇ、黙れ」

大声で叫ぼうとするもんだから、名無しさんの口を手で塞ぐ。

馬鹿かよ。今この部屋の近くには外でイベント事があったお陰で全員外に出やがったから誰もいねぇし、物音の事で何か聞かれたとしても事前に"名無しさんとちょっとした戦い方のコツを教えてる"と言ってあるから言い訳がつく。
まぁこのバカも、俺からそう話したらひょいひょいと簡単についてきたんだから今のこの状況は自業自得だろ。

「っー…っいいか、次またちょっとでも叫ぼうとしてみろ。さっきみたいに爆破してやってもいいんだぞ」

威嚇としての脅しをまたしてやれば、これまた綺麗に顔を歪ませる名無しさん。

だがその瞬間、鍵を閉めていた筈のドアが吹っ飛んだ。

「…………お前、何してんだ」

「……っは、王子様の登場かよ。クセェわ」

吹っ飛んだドアの奥に立っていたのは半分野郎だった。
野郎を見た途端、名無しさんは消え入りそうな声で"轟君…"と、そう言った。

あぁ、なんだ。そういうことかよ。

「っっー……名無しさんに、何してんだっ!!」

デケェ声出しながら、氷の矛先をコチラに向けた半分野郎。
何の躊躇もなく、体育祭の時みてぇに攻撃してきやがった。

「は、そういう事なら都合良いわ。てめぇをぶっ潰しゃ色んな意味で敵も減るし一石二鳥じゃねぇか」

「……容赦しないぞ」

なんとしてでも、こいつは潰す。
名無しさんが好きだって奴が半分野郎ってんなら、俺は全力でこいつを潰す。

「こっちの台詞だボケ、後悔させてやるよ」


失われるならいっそこの手で
(力づくで奪やぁ、手に入らねぇことはねぇだろ?)

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