短編夢

□青春
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※某有名CMを観て思い付いた学パロ
※連載夢主



『青春』



私は今、屋上へと続く階段を救急箱を持って軽快に上がっている。少し重みのある扉を開ければ、お目当ての人物が胡座をかいて座っているのが目に入り、私はにっこりと笑い掛けた。


「カタクリ」

呼び掛ければ彼はゆっくりと振り返り浮かない顔をして見せた。

彼は下級生とケンカをして負けたのだ。

口元を隠すように巻かれたファーをずらし、怪我の具合を見た私は救急箱から必要な物を取り出す。



「幻滅したか?」

「する訳ないでしょ」


年下に負けたことを恥ずかしく思っているらしくカタクリは眉根を下げて俯いていた。こんな落ち込んでいる彼を見て、私は弱っている彼に対してキュンとしてしまった。



「勝っても負けても、嫌いになんてならないわ」

頬と口元の傷を消毒し、絆創膏を貼って処置を終える。
救急箱から取り出した物を片付け、箱の蓋をカチッと止めてカタクリに向き直った。


「もうケンカしちゃダメよ。内申に響いちゃうし、一緒に卒業出来なくなったら嫌よ」

胡座をかいて座る彼に身を寄せて、ぎゅうっと抱き締めた。すると、カタクリも私の背に手を回して抱き締め返してくる。



「ところで、カタクリ」

「なんだ?」



「どこの誰に負けたのかしら?」


彼の両頬を手でがっちりと挟んで固定し、顔を近付ける。



「教えて?」

「(・・・笑顔の圧力が半端ねぇ)」






──・・・




生徒たちでザワザワとする廊下を突き進む私は、目的の教室を目指す。
開け放たれた扉から教室内で騒ぐ声が聞こえてくる中、その教室で目的の人物のトレードマークである麦わら帽子を見つけ私はそちらへ脚を進める。

上級生である私が教室内に足を踏み入れると、室内は少しずつ静まり返っていった。



「ねえ?」

「?」

麦わら帽子を被った男子生徒の肩をトンと叩くと、彼はきょとんとした顔で私の方を振り向いた。彼の顔にはカタクリ同様に頬や口元に絆創膏が貼ってありケンカ相手であることが確認出来る。



そして、



バチンッ!!




「痛ぇぇぇっ!!!」



彼の額に渾身のデコピンをぶちかましてやった。

額を手で押さえてギャーギャー喚く様を見下ろし、私は笑う。




「私のカタクリに怪我させたのだから当然の報いよ」




クズめ。






(シェリル、やり過ぎだ)
(そうかしら?あ、今日もドーナツ食べに行きましょうよ♪)




(痛ぇ・・・俺なんか悪いことしたか!?)
(馬鹿!先輩のドーナツに手を出すからだよ)
(よりにもよってシェリル先輩に目を付けられるなんて)
(頑張って生き残れよ、ルフィ)


(お前らだってドーナツが置いてあったら食うだろ?)


(((食わねーよ)))





(2019.9.16)
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