短編夢
□恋バナ
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※『青春』の続き
※名前変換無し
『恋バナ』
「おい」
教室で最新スイーツの掲載された専門誌を読んでいると私に美しい声が掛かった。高貴さと威厳を孕む艶のある声を発したのは隣のクラスの女子生徒、ボア・ハンコック。
傲慢で我儘な性格から通称、“女帝”と呼ばれている彼女は椅子に座る私をキツイ目付きで見下ろしている。
「私に何かご用かしら?」
「用があるから妾は声を掛けているのじゃ」
美しい顔立ちに、スラッとした手足、サラサラとした美しい黒髪、そして目の前にある豊満な胸に私はときめいている。
「(やだ、可愛い♪)」
「そなたは先日、下級生の男子生徒を殴ったそうだな?」
「殴ってなどいないわ。デコピンをしただけよ」
「デコピンだと?」
美しい顔が険しく変化した。
「麦わら君が私の恋人の楽しみにしていたドーナツを食べてしまったの。しかも、私の彼は怪我を負わされた。許せる訳ないじゃない」
「たかがドーナツで喧嘩に発展するとは、そなたの男は器が小さい奴よの」
イラッ。
「私の恋人を馬鹿にするのは止めて下さる?あれは私が彼の為に作った手作りドーナツよ」
「て、手作りっ!?」
女帝ハンコックの表情が突然、酷くショックを受けたようなものに変化した。彼女は突然、しゃがみ込みぶつぶつと呟き始めてしまう。
「ルフィ・・・この様な女の手作りドーナツを“メチャクチャ美味かった”などと・・・。妾でさえまだ手料理を振る舞ったことがないというのに・・・なんということか」
この子、大丈夫?
「ひょっとして貴女、麦わら君のこと好きなの?」
「っ!!?」
バッと、顔を上げた彼女の顔は赤くなっていた。どうやら、図星らしい。
「わ、妾は別にルフィのことなど・・・」
赤い頬を隠すように手を添える彼女の表情はまさに“恋する乙女”だ。
「そうよね。あんなの貴女とじゃ釣り合わないものね」
「“あんなの”だと!?すぐに訂正せよ!ルフィは、妾が他校の男子生徒に絡まれていたのを救ってくれた勇敢な男!恩人なのじゃ!」
「へー。それで好きになっちゃったのね」
「恩人だと言っている!」
赤い顔をしたままムキになる彼女が可愛くて、つい意地悪をしたくなる。
「麦わらくんに告白しないの?」
「こ、告白など何故妾がせねばならぬ!?」
「ふふ♪貴女は告白“されたい”のね」
自分からではなく、彼の方から言わせたいらしい。さすが、女帝。
「でも、麦わらくん恋愛に興味なさそうよね。今は友達と遊んでる方が楽しそう」
「・・・・・・」
「告白されたいなら、頑張ってアピールしないと」
「(アピール・・・)」
「頑張ってね」
彼女の恋は前途多難そうだわ。
「カタクリ。ハンコックちゃん可愛いよね」
「何処がだ?とんでもなく性格悪いじゃねぇか」
「実はとてもピュアなのよ♪巨乳だし♪」
「巨乳は関係無いだろ」
(2019.9.16)