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□第14話
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◇◆第14話◆◇





「コムギ島に行きたい??」

「うん、行きたい♪」

ニコニコと笑顔で紅茶を飲む父様ははっきり答えた。父様の膝の上にはプリンがちょこんと座っており、私があげたクッキーを行儀良く食べている。
最初は初めて会う父様にプリンも警戒していたが、

「くりくりとした可愛い目をしているね」

と、彼女の気にしている第3の目を褒めた故に懐いたのだった。




「私は良いけど。ママが何て言うか・・・」

父様は城内で暮らしているし、医者として置いているのはママの命令なため勝手に此処を離れてはならない。ママに判断して貰わないと、と言えば父様は許可を貰いに行くと行って去って行った。



「行っちゃったね、おじ様」

「寂しい?」

「うん」

まだ会って数日だと言うのに随分と懐いている様子。本当の父親を知らない彼女にとって甘えさせてくれる父様の存在はとても安心するのだろう。



「おじ様、あとで絵本読んでくれるの!」

「そう、良かったわね」



仕事してよ。と、心の底で思いながら、プリンの頭を優しく撫でてあげた。
しかし、戦争も急病人も無いため、城での父様は医療の勉強に勤しんでいた。時間がある時は倉庫に籠もって棚にびっしりと保管してある膨大な資料や医学書を読んだり、図書室から大量の歴史に関する資料を読み更けっている。100年以上の歴史を頭に叩き込むなど異常に見えるけれども、父様の知識欲の高さは物凄い。捨てずに置いてある新聞は隅から隅まで目を通しているし、読む速度がとても速い。それでいて、全て憶えていることが私からしても恐ろしく思う。




「シェリル、許可貰ったよ」

「速っ」

ママの判断も速いわ。





「明日?」

「そう、明日。父様と一緒にそっちに戻るから。シュトロイゼンも元気になったし、ママから許可も貰ったから」

「ああ、構わない」

電伝虫の向こう側にいるカタクリが“嫌だ”などと、言わないことは最初から分かっている。言える訳がないし。




「特別に何もしなくていいから。私が住む島を見たいだけだから」

「分かった」

電伝虫の通信を切ってから想像した。
“何もしなくていい”と、言っても使用人たちは絶対に何かするに違いない。父様が来ることを伝えずに居た方が良かったような気もするけれど、カタクリに黙っているのも良くないし・・・。



大丈夫かな、明日。




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