短編夢

□初育児
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※カタクリ視点


『初育児』


妻・シェリルとの間に生まれた双子は健診とやらを月に一度受けながら問題なく成長していた。
3ヶ月過ぎると首がすわり縦抱きが出来るようなった。シェリルは1人で2人を抱っこ出来ると喜んだ。うつ伏せにすると頭を持ち上げられるようになり、我が子たちの愛らしさにシェリルは悶絶している。

「何なのこの子たちの可愛さは」

プレイマットの上でうつ伏せになる双子をスカートであるのを気にせず同じ体勢となって見つめるシェリルはゆるっゆるの顔となっていた。

「あぅー」
「うーうー」

「はぁぁ、かわいい!!」

ラズとベリーが喃語を発するときゃあきゃあ言いながらマットに顔を埋めて悶え始める。うつ伏せ姿も喃語も可愛らしいのは分かるのだが興奮し過ぎだ。見ろ、双子も目を大きくして驚いている。

「カタクリ、見てよ!天使よ天使!」

「分かったから落ち着け。ラズもベリーもビックリしてるだろ」

「ああ、ごめんね」

デレデレと双子の頭を撫でたシェリルは2人の額にキスをした。

***

夜。

「今からお風呂入るから2人を宜しく。大丈夫。お腹いっぱいだからご機嫌よ」
と、任された俺はベビーベッドで横になっている双子に色違いのガラガラを持たせた。小さな手を僅かに動かしただけで鳴るため2人のは目を大きくしてガラガラに集中し始める。

「あー」

「ガラガラが気に入ってるのか」

喋れないことは承知していてもラズの声につい話し掛けてしまう。機嫌が良いのかベリーも「うー」と喃語を発してガラガラに夢中となっており、その姿に口元が緩んでいく。

「お前たち、可愛いな」

シェリルが悶絶するのも分かる。
俺は床に敷かれたプレイマットを見、双子のうつ伏せが見たくなった。ベッドからラズを下ろし出来る限り優しく腹這いの格好をさせてからベリーも同じようにして腹這いにさせ眺める。床に胡座をかいて座り、少しだけ身を屈めて2人を見れば一生懸命首を持ち上げていた。ふっくらとした頬の肉が下がって寝転んでいる時とはまた違った表情が愛らしく見え、無意識に口角が上がる。

「あー、あー」

「あぅー」

幼い弟妹も可愛いが、この双子は断トツに可愛い。俺に似なくて本当に良かったと思う。

「ぅあー」

喃語を発したベリーの口から唾液が流れ出たためテーブルに畳んであったガーゼでさっと拭き取る。ラズの口も拭いてやろう、と視線を移したとき俺は一瞬思考が固まった。ラズの口から白い液体が吐き出され、マット上に小さな水溜りが出来ている。

ラズが吐いた白いコレは母乳か・・・
吐いた、てことはヤバイのか?

「・・・っ!」

こうしてはいられないとラズとベリーを抱え、シェリルがいる浴室の扉をバンと開ける。乳白色の湯に浸かりながら何事かという顔をしているシェリル。

「ラズが吐いた!」

我が子の小さな体に異常が起きているのではないかと焦り、つい大きな声を出してしまう。が、シェリルは割と落ち着いた様子で湯船から上がりバスタオルを体に巻き付けて近寄って来た。

「そんなに焦らなくても大丈夫よ」

「大丈夫、て吐いたんだぞ」

「そんなに心配しなくても、赤ちゃんは吐き戻すこと多いから」

「だが、」

「あうー」

声を発したラズを見れば至って普通で、具合が悪そうには全く思えなかった。

「この子、さっきいっぱい飲んでたから」

「俺はてっきり体調が悪くなったのかと」

「あら。私だって最初は貴方みたいに取り乱したわよ。吐く=病気じゃないか、て」

取り、乱す・・・。
先程までの自分を思い返すと恥ずかしさが込み上げてくる。

「何だか嬉しい」

「何処が」

「カタクリがこの子たちのこと心配してくれて」

「当然だろう。俺の子だぞ」

「ふふっ、そうね」

クスクスと笑うシェリルに気恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。

「さっきの誰にも言うなよ」

「分かってる。あ、今ベリーが笑ったわ」

「本当か」

俺が2人を覗き込むように見るとラズが一瞬ニコッと笑い、シェリルが堪らないと言わんばかりに顔を緩めた。
始まったばかりの子育てにてんてこ舞いになりながらも子どもの成長を見れるのは悪くないと思う。

「あ、カタクリ」

「・・・オムツか」



(2022.1.11)
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