短編夢
□6月の花嫁
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数日後、私はハクリキタウンへ一人で出掛けた。すれ違う人々と挨拶を交わしながら一軒の店の前へと辿り着く。何度も訪れたことのある店ではあるけれど用件が用件だけに少々入り辛い。しかし、頼めるのはこの店しかないので店内の扉を開けた。
「こんにちは」
挨拶をすれば、すぐに店員さんがやって来た。女性店員は私を見るなり驚いた表情をしていたけれど、すぐに笑顔を浮かべて傍まで歩み寄ってくる。
「いらっしゃいませ、シェリル様!態々お越し頂き誠に有難うございます!本日は如何様でしょう?」
慣れたように丁寧な言葉が出て来る辺りに感心してしまう。
「あの、今回の件は内密にして貰いたいの」
「内密に、ですか?」
「そう。あまり人に知られたくないのよ。お願い!」
「承知致しました。ちなみにシェリル様、今回は」
「今回はね・・・」
この日から、私のちょっとした計画が始動した。
勿論、協力してくれる店に対し私も最大限お手伝いをするつもりである。
・・・夫であるカタクリには内緒で。
けれども、ある事に関してだけは彼に協力を仰がねばならない。
それは・・・。
「お金を下さい!」
夜、彼が部屋で寛いでいる時間を狙って私はお願いに訪れた。風呂上がりの彼は頭をタオルで拭く手を止めて目を丸くしている。
「急にどうした?」
普段からお金に関して頼むことは滅多にしないので彼を驚かせてしまった。
結婚してから私は財布を持ったことがない。私が買うもの全てをカタクリが払うから。
「欲しい物があるなら言え。買ってやる」
・・・さ、さすが将星様、大臣様。
そう言ってくれるのは凄く嬉しいのだけれど、今回はそうではない。
「欲しい物ではなくて、ある計画に必要なのよ」
「計画?」
「えっと・・・」
「お前、何をしようとしている?」
言わないとお金の件が無しになりそうだったので私はカタクリに全てを話した。
「そういうことか」
「うん。だから、どうしてもお金が必要で・・・」
「分かった。金のことは任せろ」
「いいの?」
頷くカタクリに私は顔が緩んだ。
「ありがとう、カタクリ!!」
ベッドに腰掛ける彼に抱き着き、彼の頬にキスをして離れた。カタクリは若干呆気にとられていたが、すぐに私に手招きしてくる。
お金の件が安心できた私は何だろう?と思いながらも呼ばれるがまま彼に近付く。そして、あっという間に抱き締められた私は少し強引にキスされた。
「??」
「キスするならこっちにだろ」
と、言ってまた唇にキスをされた。
こうしてカタクリの協力を得、私の計画は順調に進行していくのでした。
*