短編夢

□休日
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※『恋バナ』の続き
※カタクリ視点



『休日』



土曜日の朝。学校が休みのため今日は彼女であるシェリルと久しぶりに出かける予定を立てた。

以前からシェリルが行きたいと言っていたカフェへと行く。



「おはよう、カタクリ」

家の近くまでシェリルを迎えに行き、手を繋いで目的の場所へと向かう。隣を歩く今日のシェリルは制服ではなく、私服。髪型も化粧も学校にいる時と異なってこれもまた魅力的に見える。



「やっぱり季節限定のモンブランにしようかしら」

「昨日は紫芋のタルトて言ってなかったか」

「HPの写真見たら凄く美味しそうだったの」

ニコニコと楽しそうに話すシェリルがまた可愛く見える。




─カフェ─

白と茶色を基調とした落ち着いた雰囲気のカフェは先月オープンしたばかりでとても人気があるらしく店の外に列が出来ていた。自分たちもその列に並ぶことにし、シェリルはガラス越しに店の中を眺め始める。



「ねえ、カタクリ。あれ」

シェリルが指す方を見ると、店内に見知った人物がいることに気付く。



「・・・シフォンとプリン」

「二人共、私服可愛いわね♪」


シェリルは笑っているが、俺としては休日まで身内に会いたくはない。久しぶりにシェリルと出かけているというのに。邪魔されたくない。



「あ、ハンコックちゃん」

「・・・・・・」

振り返れば俺たちの3組後ろに女帝ハンコック+妹二人が並んでいた。
向こうも此方に気付いているらしく、キツイ目付きで俺たちを見ている。



「私服姿もセクシーね」

ニコニコと笑うシェリル。
俺は頭が重くなってきた。
休日に何故こうも知り合いに出会してしまうのか。





「あーーっ!シェリルお姉様ぁ!!」


いきなり声がしたと思えば麦わらとよく一緒にいる黒足が足を止めて私服姿のシェリルをジロジロと見ている。

眼をハートにするんじゃねえ。
眼球抉り出すぞ。


黒足は俺と目が合った途端に苦い顔をしてすぐに目を反らした。

よく見ると黒足はクラスメイトとみられる男女四人と一緒にいた。




「今日は色んな人に会うわね」

「そうだな」



せっかくの休日が・・・。





「ねえ、カタクリ」

「ん?」

「此処テイクアウト出来るみたいだから家で食べない?」

そっと耳打ちしたシェリルは小さく笑って自分の腕を俺の腕に絡めてきた。



「今日、家に誰も居ないから」


・・・誰も、居ない。


「そうなのか?」

「うん。此処だと人の視線が気になってゆっくり出来ないでしょ。家なら二人きりでゆっくり出来るわ」

シェリルが頷いて見せた時、口元に巻いていたファーの下で思わず口角を上げてしまう。



この誘いを断る理由がない。



そして、シェリルが食べたがっていたモンブランと気になっていた紫芋のタルトをテイクアウトして店を後にした俺たちはシェリルの家へと向かった。

シェリルの家へ行くのは久しぶりだ。



「半分ずつにしましょ」

「全部食っていいぞ」

「え?でも、」

「俺はお前が食いたい」

「!!?」




熟れた林檎のように頬を赤らめたシェリルは俺の肩をバシッと叩いてから、小さな声で「馬鹿」と言った。
ムスッとしていても耳まで赤くしているシェリルが心の底から可愛く思う。抱き潰してやりたい。

家に誘われ、誰も居ないと言われたら・・・そうなるだろう。





(カタクリの変態)
(何とでいえ)




(2019.9.30)
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