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□第3話
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◇◆第3話◆◇
(※カタクリ視点)



目の前に置かれた普段より豪勢なドーナツを俺は凝視した。今日は記念日でも何でも無い日のはずだ。


「今日は何だ?」

このドーナツを運んできた、妻・シェリルに問う。


「え?今日は何もないけど」

「じゃあ、何でこんなにドーナツが豪勢なんだ?」

「んー、気分」

シェリルの気分で俺のドーナツのグレードが変化するのか。


「良い事でもあったのか?」

「ええ。今日、プリンがお泊まりするから」

「・・・」

「ダメだった?」

「いや、ダメじゃないが」

チラッと執務室の扉の方を見れば、扉の隙間からブリュレとプリンが覗き見ていることがすぐに分かった。おそらくシェリルが泊まることを誘ったのか、プリンがシェリルから離れるのが寂しがったのかどちらかだろう。


「良いのね」

「ああ」

「ふふ♪ありがと」

ドーナツとティーセットを残し、上機嫌で執務室を出て行くシェリルの足取りは軽く、速かった。書類が一区切り着き、扉に鍵を掛けてから能力で社を作って“おやつの時間”とする。一人となった空間で首に巻くファーを外して寝転がりドーナツを一つ手に取った。そして、そのドーナツを自身の大きな口へ運ぶ。


「美味ぇ」

人目を気にせず、寝転んで食べるドーナツは最高だ。

それに、シェリルの作るドーナツはメチャクチャ美味い。トッピングされた生クリームもチョコレートもふわふわの生地の中に詰まったカスタードクリームも全てが格別だ。
毎日食べても全く飽きない。といっても、ドーナツが毎日出てくるとは限らなかった。シェリルはたまに新作の菓子の試作品を運んできたりする。それもまた絶品なため良いのだが、やはり俺の中ではドーナツが一番だった。

ドーナツを堪能し、シェリルがブレンドした紅茶を口に流し込む。


「ああ、うまし」


俺にとっての至福の時間だ。



「泊まりか」

社の白い天井を見つめながら思った。
この屋敷にプリンが泊まるのは初めてではない。もう、何度も泊まりに来ている。
シェリルはプリンをとても可愛がっていた。まあ、元よりシェリルが女好きであることは家族中が知っていることではあるが、本当にプリンのことを自分の娘のように接している。それに、シェリルはプリンの額にある第三の目を全く気にしていなかった。
逆に、


「やだ!可愛い目が三つも付いてる!!」

と、大興奮していた。
さすが吸血鬼と思いつつ、シェリルの懐の深さに驚かされたものだ。
様々な人種が集まるこの万国でシェリルのような存在はとても希少だった。シェリル自身が過去に迫害を受けてきたからか、俺たち家族や万国に住まう者たちに差別は決してしない。ただし、男に対しては多少冷たいところはあるが。


おやつの時間を済ませ、残りの書類を終わらせるべく頭を切り替えてペンを手に取った。


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