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□第9話
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◇◆第9話◆◇
※流血表現有り




「とーさまは、かーさまのどこがスキ?」


小さい頃、街を歩くカップルを見ながら私の手を引いて隣を歩く父様に尋ねたことがある。ませた質問をする子どもの私に父様はクスクスと笑った。



「そうだなぁ。優しくて料理が上手なところかな」

「それから?」

「笑顔が可愛いところと少しおっちょこちょいなところ」

「それから?」

「え?まだ言わなきゃダメかい?」

「うん!」

父様を困らせたかった訳ではなく、単純に二人のことが大好きだった私は聞きたくて堪らなかった。


「僕と違うところかな」

「なにが??」

「同じ吸血鬼でも、母さんは父さんと違う考えを持って生きてきたんだ。そういうところに惹かれたんだよ」

「??」

「シェリルにはまだ難しいね」

この時の私には理解が乏しく、父様の言ってることが分からなかった。けれども、私から見る二人はいつも仲良しでお互いを想い合っている夫婦で、何もかもが理想的な家族の形だった。




ーーー・・・



「っ!!」

「戦いの最中に考え事かしら?」

背後に迫る爪を寸のところで避けた私は、木の枝を使って身体の向きを変え、爪で切り掛かろうとしたが風を操る彼女に避けられる未来が見えたため諦めて上へと飛び上がった。
この人と戦うのは正直、辛い。戦闘能力高い上に、風まで操る力を持っている。今思えば、どうして父様はこの力を私に教えてくれなかったのか疑問でしかない。


「??」

城の屋上に光が幾つか見えた。目を凝らせば、それが松明の灯りだということがはっきりと分かる。

屋上で何してるのかしら?
いや、屋上に何かあるから何人も居るのだろう。私から少し下の位置で留まっているあの女性は、眉を少し顰ませて私と同じ方向を見ていた。

もしかして、あの大きな木箱?


「貴女、あそこに何か置いてるでしょ?」

「・・・・・・」

金色の瞳が私の方をギロリと睨んだ。そして、彼女は私をその場に残し飛んで行った。


「もしもし、カタクリ屋上にいるでしょ」

「ああ、いる」

未来が見える者同士だと話が早いわ。


「彼女、そっちに行ったわ。そこにある木箱に何かあるらしい」

「木箱はさっき見つけた」

「本当に?中は何だったの?」

「中を確認したいが、箱が開かない」

「え?」

「ジーク曰く、術には生きた心臓を入れる人形がいるらしい。もしかしたら、箱の中身はそれかもしれねぇ」

「じゃあ、その人形を壊せば・・・」

「あの女を止められる」


一縷の希望が見えてきた。しかし、電伝虫越しにカタクリ以外の男たちの声やドンドンという箱を破壊しようとしている音が聞こえてくる。
「すぐにそっち行く」と告げ、電伝虫の通信を切り、私は屋上を目指し闇夜を飛んだ。




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