歌の夢(短編・中編)
□ジョバイロ
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愛佳が気付かせてくれた恋が愛佳無しで育っていく。
いつからだろう?
愛佳の隣にいる自分を上手く思い描けなくなったのは…。
「理佐?」
いつも通り身体を重ね、事が終わり、壁を向いて愛佳に背を向ける。
いつも優しく名前を呼んでくれるけどきっと気付いていたんだよね。
「理佐…」
ほら、また優しく名前を呼んで私を後ろから包み込む。
独占欲とか私だけを見て欲しいワガママとか認めたくなった。
自分に嘘ついて愛佳なら大丈夫だと思い適当にあしらっていた。
きっとこの気持ちを誤魔化せるなら身体を重ねる相手は誰でも良かった。
でも愛佳の優しさにつけ込んだ。
寂しいからなのか恋愛感情なのかわからないけどね。
いくら身体を重ねても指と指を絡めても結局繋ぎ止めれていたのはお互いの気持ちじゃなく自己中心的な自己愛。
不安しかなく自分勝手で傷付きたくないから。
付き合って上手くいかなくて別れた日には立ち直れないから。
だから曖昧な恋人ゲームをしていたに過ぎない。
それから時間が過ぎ、ある日あなたはグループから抜けた。
その時気付いてしまったけど既に遅くて。
今では罪悪感を抱きながらも今まで通り仲の良い友達として接する。
愛佳と久々に会い、一般人になったあなたは何処と無く重荷を下ろせたような気楽さがある。
あぁ、解放されたんだね
重圧から、ストレスから、私から。
責任感が強くてナイーブなあなたが好きだった。
その日の夜、愛佳や一緒にご飯を食べていたメンバーと別れ、部屋の電気をつけず下着姿のままベッドに入る。
愛佳の温もりが恋しくなって服を脱いで入ったものの、肌が感じたのはシーツの冷たさだけ。
愛佳の笑顔を見たり声を聞くと愛佳に気付かされた恋がどんどん成長していく。
そんな身勝手な私を見て見ぬふりをしてくれたのは月だけだった。
[終わり]