カービィ短編
□悪役
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へいわなくに が ありました
こくみんは みんなやさしくて
だれも だれかをきずつけたり
だれかをかなしませたりしない
そんな すばらしいくにでした
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冒頭の数行を読んでシャドーはその絵本を閉じる。
『へいわのくに』と書かれたその絵本は、ダークの部屋を掃除していたときに見つけた物だ。
かなり年期が入っているが大事にしてあるのかかなり綺麗な状態である。
この絵本の内容はこうだ。
ある日平和な国に悪者がやって来て子供達を片っ端から喰べて行き、家々を破壊し、大人達を病に陥れる。国王が天に助けを求めると、お決まりの正義のヒーローが現れて悪者をやっつけてハッピーエンド。
この悪者は災害をイメージしているらしいが、なら正義のヒーローは神だとでも言うんだろうか。
「なんでダーク様はこんな胸くそ悪い本持ってるんだろ。しかもかなり大事にしてある感じだしなんか腹立つなぁ」
燃やしちゃおうか、とシャドーは思った。でもやめた。
「ワルモノだって、好きでそうしてる訳じゃないかもしれないのに。操られてるって線は考えないのかなぁ?
そもそも、大多数が悪だと決めつけてるだけで本当は良いことかも知れない」
そう、かつての自分達のように。
本当は、本心は、
そんな事がしたい訳じゃない
そうは考えないんだろうなとシャドーは苦笑する。
「仕方ないか
人は何かを悪と決めつけないと、大多数に便乗しないと不安なんだよね」
だからこんな絵本を作るんだ。
ワルモノが完全な悪で、セイギノヒーローが完全な善だと子供に刷り混ませるために。
「ダーク様(小さな子供)がこんな本に洗脳されちゃったらどうしよ
まあそれもそれで面白そうだからいっか」
シャドーは絵本の表紙を軽く拭いて、元あった本棚にそっと戻した。