カービィ短編

□紅茶
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わかってはいた。
熱い湯で作った茶が冷めるように、初めは熱くて楽には飲めやしないが、時間が経てば氷を入れたかのように冷たくなる。
飲みやすくなった茶を飲み干すことは容易いが、微妙に温んだそれは不味い。
それを片隅で美味いと思ってしまうのは何故だろう。


─────────


「紅茶、冷めてますよ」

その言葉で同じ行ばかりを追っていた本から顔を上げる。
酷く寒く感じて熱い紅茶を入れたというのに、ティーカップからは既に湯気の一つもたっていない。

冷めた紅茶に独特の甘い香りは無く、ざらりとした苦みだけが口に充満する。

「砂糖を入れれば多少は増しになるんじゃないですか?」

部下がそう聞くが断った。
この冷えた苦い飲み物は自分だ。そう思えてきて少々腹が立ち、紅茶を煽るように飲み干した。

そりゃそうだ。友人としての熱が一段落してくればこんなもの。
第一、あちらはこちらを好きでも何でもないのだから。

「恋とはどのような常態を指すと思う?」

ティーカップをテーブルに置き、本を棚に戻しに行きながら、徐に部下にそう聞いた。
彼は少し戸惑いながらもこう答えた。

「恋い焦がれるって言葉があるじゃないですか
紅茶みたいに焦げて苦い思いをするのが恋愛だと、俺は思いますけどね」

彼はそのまま続ける。

「紅茶も恋も時間が経てば、焦げて焦がれて黒ずんで行くものですよ
その焦げたもんを放っておいたら、余計に焦げて不味さを極めるだけですよ」

思いを伝えるなら早めですよと言い残し、彼は部屋をあとにした。



・・・・・・


メタナイト、今大丈夫か…?

私も今丁度君に掛けようとしていた所だ

そうか…次に暇が出来たら、あんたに会いに行くつもりだ

…わかった。暇を作っておこう

すまん。どうしても伝えたいことがあるんだ

紅茶が焦げる前に来てくれ

………!ああ、直ぐにでも飛んでいく(あいつら…)
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