きゅんって音が聞こえないA

□36.乙女の身だしなみ
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大興奮だった体育祭が終わると、休む暇もなく次は文化祭がやって来る。


私のクラスはたこ焼き屋をやるみたいで、とりあえず冷凍のたこ焼きを、たこ焼き機でコロコロと転がすだけで作れるお手軽なもの。


なので大した準備はなく「適当に外装とか看板作っておけばいいよね」と怠慢なうちのクラスメートのこと、私は結構好きかもしれない。


となると、暇人たちを中心に準備しなければならないので




「……あれ?ねえ愛ちゃん、檜山くんの姿がどこにも見当たらないんだけど」


「はあっ⁉アイツまた脱走したの⁉」




放課後、教室に残ってせっせと看板作りなどをするのは部活をやっていない私たちみたいな人。


まあ、塾とか習い事がある人もいると思うので特に強制ではないんだけど


ゆるーい感じでワイワイと作業をしていると、たまにこうして逃走を図る悪いヤツも出てきてしまう。




「まあいいわ。どうせ逃げ出すと思ったから、あらかじめみゆ君の下駄箱からクツだけ抜き出しといたの」




そう言って、何食わぬ顔で作業を続ける真面目な愛ちゃんの指差す先には


教室の隅っこにポツンと鎮座されている、檜山くんのクツらしきもの。


「わあ用意周到」って、パチパチと拍手を送っていたら、廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。


その足音は真っ直ぐ私たちの教室まで来ると、予想通りの人物が顔を出し




「おい佐野っ!俺のクツ隠しただろ!」


「冗談はやめてよ。あたしはわざわざ教室まで持ってきてあげただけよ」


「くっそ……この俺を出し抜くなんて」
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