長編 カカシ

□番外編 ヤマトの独り言
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なつの意思は固かった。
割と頑固な性格なのは昔から知っていた。それもあるが、なつは人と争うのを嫌う。任務中の戦ならまぁ仕事だから仕方ないと割り切れる様だが、仲間内では別だ。
暗部に配属される直前まで、彼女はずっと下忍だった。なぜあんなにオールマイティーな子がこんな歳になるまで下忍なのか僕は不思議で仕方なかった。
納得がいかず当時彼女の属していた小隊長に聞けば、任務以外で仲間や他の里の忍を殺す可能性があるなら、一生自分は中忍試験を受けず、下忍でいいと言っていたらしい。スリーマンセルを組んでた他の二人の仲は最悪で、一人は忍を辞め、もう一人は別のメンバーで中忍試験を受けたんだとか。なつは二人の仲を修復出来なかったことと、自分が試験を受けないと言ったせいで、二人の出世を遅らせてしまったことを最後まで気にしていたらしい。
結局なつは、普段の真面目な任務の功績が認められ、火影様直々に任命され中忍として暗部に配属されてきた。
変わった経歴だ。

今回の事だってそうだ。彼女はもみじと不必要な争いをするのを避けたがってる。自分が身を引けば万事解決だと思っているんだ。大人っぽくて綺麗な彼女が、自分よりカカシ先輩とお似合いだなんて…そんなこと、何時誰が決めたんだ。

なつ、自分では気が付いてないかもしれないが、君は素晴らしい人間なんだよ。それこそカカシ先輩のこと、いつも雲の上の人みたいに言うけど、決してそんなことはない。十分に隣を歩いていける存在だ。
皆、君と一緒にいるといつの間にか笑顔になって、幸せな気持ちになるんだから。

港での任務は着々と進んだ。そりゃ天下のはたけカカシにかかればこんな任務は朝飯前だ。

ふと隣に立ってるなつを見ると、出会った頃よりずいぶん伸びた髪が、海の風に靡いて美しい。思わずみとれてしまった。彼女の、幼い顔に時折見せる、哀愁漂う横顔が僕の昔からのお気に入りだ。

でも…今はそんな顔しないでくれ。君にはそろそろ幸せになってほしいんだ。可愛い後輩であり、いざと言う時頼りになる姉の様な存在であり…まぁ、放っておくと危なっかしい妹みたいな存在なんだけど…。

カカシ先輩、後から後悔しても知りませんよ。
まぁ…僕に出来る事は、たまになつを飲みに誘ってあげることくらいなんだけどね。


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