長編 カカシ

□すれ違い
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…どれくらい走っただろう。
喉はカラカラに乾いて、脚はもつれて…。人気のない建物に隠れて私は崩れる様に座り込んだ。
一度溢れだした涙は何度拭いても止まらない。
初めから分かってた事だと必死に自分に言い聞かせる。頭の中でこの日の為にずっとシュミレーションしてきたんだ。付き合っちゃってるなんて羨ましい、なんて冗談言って…って、全然言えてないし。

「はぁ…もっと…強くならなきゃ…。」

目を静かに閉じると、昨日の夜の出来事を思い出す。

ごめん、私は行けない。

真剣に私と生きたいと言ってくれた操に、私はそう答えた。
寂しそうに私を覗き込んだ彼。髪を撫でて、そんなこと言うなよ、と付け加えて。

正直嬉しかった。そんな風に私の事を想ってくれていたなんて。操の帰りを待って、毎日美味しいご飯を食べて、毎晩大好きだよって言われて、同じ布団で寝る。それもありかなって思った。

でも、操に抱き締められながら目を瞑った時、私の中に現れたのはカカシ先輩だった。少し困ったように眉毛をハの字に曲げて笑う、私の大好きな先輩…。口ではもういいなんて言っておきながら、土壇場でやっぱり好きなんだと思い知らされた。
私がどうするべきか解らずに俯いていると、操は気にするなと笑って私の頭を撫でて…。

「…苦しいよ…。」

何が正解なのかわからない。誰に何を言ったら良いのかわからない。それはきっと、すごくシンプルな事の筈なのに…。


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