長編 カカシ

□拒絶
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「あ、今日は星が綺麗だな…。」

空気が澄んでいるのか、自分が辺鄙な場所に住んでいるからなのかは分からないが、今日は特別星が綺麗だ。家で一番お気に入りの縁側に座りそれを一人眺める。

「操も見てるかな…。」

今日一日、私は待機でずっと里に居たのに、操は私の前に現れなかった。昨日の夜は食事の後片付けをテキパキしてくれて、じゃあな、と何事もなかったかの様に宿に帰って行った。きっと私に気を遣わせまいとしているんだろう。私の家から里までは少し遠い。なんだか少し申し訳ない気持ちになって、部屋もいっぱいあるし泊まっていくかと聞くと、一発デコピンを食らわされた。ヤマトさんに殺されるから絶対に嫌だと笑いながら。

あんなに情熱的なプロポーズをしたのに理由を述べることもなく私に断られ、それなのに普通でいてくれる操は本当にいい男だ。

「え、私もしかしてめちゃくちゃ勿体ないことしてるのかな…。」

キレイになったなって言われた時、嬉しかったんだよね。そんな事誰も言ってくれないもん…。

「なつさん。」

「ひゃぁぁああ!?」

突然、縁側の屋根の上から逆さまに顔を出してきた猫面の女。この面、この声は…。

「ゆ、夕顔…!?」

「正解です、お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」

夕顔は私の暗部時代の同僚だ。何故か彼女とはすごくウマがあって、よく一緒に飲みに行っていた。

「ちょ…ちょっとぉ…どういう登場の仕方よ…。びっくりしたぁ…。」

「驚かせてすみません。なつさん、五代目が直々にお呼びです。私は使いで来ました。お休みのところ申し訳ないんですが、今から里に来るようにとの伝言です。」

「えー…。私今から寝ようかと…。」

「…ですよね、すみません。」

そう言って彼女はクスクス笑う。全く…綱手様も人使い荒いんだから。

「夕顔、元気してた?私が暗部を抜けてからあまり会えてないね。」

「なつさんのご活躍の噂はいつも耳に入ってきますよ。私も…何とかやっています。」

「そっか…。それなら良かった。」

夕顔は恋人のハヤテを亡くしてからというもの、少し様子が変だ。それでも前に進もうと頑張ってはいるが、その時のトラウマが足を引っ張って自分でも気が付かない内に心を壊している様に見えた。かと言って私がしてあげられることはあまりないんだけど…。

「夕顔…話聞くくらいならいくらでも出来るから、私で良ければ頼ってね。」

「ありがとうございます。じゃあ…一つなつさんに聞いてほしい事があります。」

「何?」

「カカシ先輩に…ちゃんと好きって言えました?」

「…え…あ…あの、さ…私の事じゃなくってっ…。」

「…どちらかが居なくなってからでは遅いです…私達は忍ですから。その想いがたとえ叶わなくても、自分の気持ちは言葉にしてハッキリ伝えるべきです。ハヤテと私が…ずっとそうしてきた様に。」

夕顔は私を猫面越しに真っ直ぐ見据えて話す。

「なつさんは優しいから…。たまには少しくらい欲張っても良いんじゃないですか?」

「夕顔…。」

「大好きなんです、私。なつさんの事も、カカシ先輩の事も。二人が一緒になったら、私にとってこんなに幸せな事はありません。」

そう言って夕顔は私の手をとってギュッと握った。カカシ先輩と私の間にあったことは何も知らない夕顔ではあったが、彼女もまた、私の浮かない顔を見て心配してくれていたのだと思うと、思わず泣きそうになってしまう。

「夕顔…ありがとう、気持ちはすごく嬉しい。でも…先輩にはもう決まった人がいるみたいだよ。」

そう告げると夕顔は俯いて一言、そうですか、と悲しそうな声で呟いた。美人で、優しくて、自分の事より他人の事心配して…。なんて可愛い後輩だ。

「…私なら大丈夫だから。ありがとう、行ってくるね。また落ち着いたら一緒に飲もう!」

「…はい、なつさん、お気をつけて。」

そう言うと夕顔は瞬時に闇夜に消えた。
カカシ先輩に想いを告げる?もしもそんな事が出来たなら、先輩はどんな表情で私の事を見るのだろうか…。
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