長編 カカシ
□我慢
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今日のなつは昨日とは全く違っていた。
オレがこっぴどく叱ったのが効いたのか、今日の彼女はテキパキと任務をこなした。
任務の報告書に加えて、五代目に解読班に回すように託された暗号解読も自分がやると言い出した。
「なつ、解読班でもないのに暗号解読もできるの?」
「はい、昔、専門にしてる友人に教えて貰いました。完璧ではないですけど。今、その解読班が手一杯みたいで。多分綱手様、直接渡す事を戸惑ったんでしょうね。」
そう言ってなつは困ったように笑った。
「ものすごい量だけど大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。明日休みで特にすることもないですし。シズネさんも一緒にやってくれるって言っていました。カカシ先輩はゆっくり休んで下さい。」
じゃ、失礼します。と言うと、足早にその場を離れようとする。
「ちょ、ちょっと待って!」
自分でも驚いた。意思とは関係なく、オレは彼女の腕を掴み思わず引き留めていた。
「…なんですか?」
「…ごめんね、昨日。資料に目を通さなくて注意したこと。なつが任務に手を抜くような性格じゃないのは分かっていた。なのに、理由も聞かず頭ごなしに叱ってしまって…。」
「あ…。」
「何かあった?体調悪かったとか…。昨日のこと気にして無理してるなら、この仕事はやらなくていい、元々君の仕事じゃないからね。」
「…カカシ先輩、そんなんじゃないですよ。昨日は完全にボーッとしてて…すみませんでした。先輩が怒るのは当然です。ヤマトさんにも怒られちゃって。」
「なつ…」
「まぁ…何かしてないと休日は趣味もないので退屈で。シズネさんと終わったら食事でもいこうかな。」
今度こそ失礼します。そう言うと、オレに一礼してなつは去っていった。
…そう言えば…今日は目が合わなかったな。