長編 カカシ
□美しきライバル
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辺りがすっかり暗くなっても、私はあてもなく彷徨っていた。
…弱いなぁ…。カカシ先輩が誰かと歩いているだけであんなに動揺するなんて…。
キレイな…人だったな。
恋人…かな。
誰にも聞けないや、そんな事…。
「あれ?やっぱりなつだ。」
声をかけられて力なく振り向くと、そこにはヤマトさんと同期のイズモ。
「あ…こんばんは…。」
「こんばんはってお前…。大丈夫か?なんか足元覚束ないけど。」
「…どうしたの?まさかなつ、酔ってる?」
「いえ…ちょっと…塩大福どころじゃなくなってしまいまして…。」
「は?」
ヤマトさんとイズモが不審そうに私を見る。
「…お腹…空いた。」
塩大福が買えなかったことを思い出したのと、馴染みの顔に会えた安心感のせいか、急に空腹が襲ってきた。
「…俺達今から飲みに行くんだけど…一緒に行くか?」
何かを悟ったようにイズモが私を誘う。
「イズモ…。」
ずっと歩いていたのは一人になるのが嫌だったからなのかもしれない。イズモの提案に私は素直に頷く。
「お腹もいっぱいになれば嫌なことも忘れるからさ、ホラ!行くよ!」
ヤマトさんに背中をポンと押されて泣きそうになった。いつもの大きな手だ。チラッと彼の顔を見ると、
今日は僕が奢るよ、と男前に言われた。
今日は木ノ葉の風がやけに生暖かい。
湿気を帯びて心の中まで湿っぽくなりそうな空気の中を、私は二人に守られる様に歩いた。